表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドリームドロップ ~魔法のようなドロップと呼ばれる道具がある異世界に転移してしまった剣の少女が、現地の最強勇者と交流します~  作者: ヒロナガユイハ
断章 わたしの友人が失踪したと思ったらとてもヤバい奴になってしまったんだがどうすればいい?
216/341

わたしの友人が失踪した件について part1


==瑞紀(みずき)=灼天の節・十五週目=律舞高校・弓道場==


 戦場を始めて経験した日から数週間が経過した。そして、あの日以降杏耶莉(あやり)の姿は一度として見ていない。


(またアイツは……)


 これで何度目かというアイツの失踪に、慣れが生じるという事もなく、わたしは内心焦りに焦っていた。

 それはそうだろう。なんせあんな経験をした直後である。当初は動じていなさそうだったアイツではあるが、こっちに帰る時点ではとても沈んな雰囲気を纏っていた。


「――という訳で、弓道部の今年最後の練習になる。 だが今日もいつも通り、心を乱さず律して練習に励むように!」

「「「はいっ!」」」「……」


 焦っても解決しないと宿理(しゅくり)に諭され、表向きは普段通り学業や部活に興じていた。……正確にはそのどちらも普段は不真面目だっりするので、普段通りという表現には語弊があるやもしれないが。


「……どうした期待のエース、六笠(むかさ)瑞紀(みずき)一年生」

「そのフルネーム呼び、止めて欲しいっす、先輩」

「何を言う六笠(むかさ)瑞紀(みずき)。 君とわたしの仲じゃあないか」

「どんな仲っすか……」


 無駄に距離の近い弓道部部長の先輩が、普段と同じくウザ絡みしてくる。


「いや何、近頃元気がない様子だったからな。 何かあったのだろう」

「……別に――」

「確か、一年に登校拒否になってしまった生徒が居た筈だ。 そして、その生徒と君は親しい間柄であったと聞く。 違いないかな?」

「……そっすね」

「うむうむ。 わたしの貧弱な情報網も役に立つではないか」


 人の背中を叩いて喜ぶ先輩に、勿論イラつく。

 それと、杏耶莉(あやり)は失踪ではなく不登校という扱いになっていた。裏で宿理(しゅくり)が手を回して捜索してくれているが、恐らくこの街には居ないだろうという結論に到っている。


「だが、それだけを理由に君の矢が調子が悪いというのは聊か納得がいかないな」

「ちゃんと的の真ん中に命中してるっすよね? それの何が不満なんすか?」


 何かに熱中している方が気がまぎれる。そう思って真剣に取り組んだ成果が出ていた。


「違うだろう?」

「……は?」

「普段の君はあえて中央から外れた位置を狙って弓を射る。 だが、その余裕がなくなって本来の実力が露呈している。 ……のではと考えていた」

「!?」


 事実、この先輩の証言は的中していた。わたしは普段、結果が良くなり過ぎないようにずらして的を狙っている。驕りでもなんでもなく、わたしの弓道への才覚は頭一つ抜けていた。これは弓に限らず銃を撃ちあうゲームでも同容に発揮されている。

 そんなわたしだが、能力の高さでやっかみを向けられたりするのを嫌って外していたのだが、それを見抜かれていたとは思っていなかった。


「何を根拠に――」

「勘だ!」

「……」


 勘だった。だが、その直感は間違いではないので馬鹿にも出来ない。


「そうだな。 僅かに君が弓を持つ手が以前と違って感じられるのは気のせいでもなかろう。 これまで軽く構えていた君からその気楽さが抜けている。 そんな気がしただけだ」

「……」


 先輩の言う通り、わたしはあの戦争以降、手にしているものが人の命を奪える代物であるという事実を再確認していた。それまで自分なら取り扱いを失敗しない、人も不用意に傷つけないと自負していたが、その考えは改まりつつあった。


「……気のせいっすよ」

「かもしれないな。 だが、そうじゃないかもしれない」

「……」

「何はともあれ、真剣に打ち込む君に感涙していると伝えようと思っただけだよ」

「……そっすか」

「それと、君の友人が元気に登校する日が来ることを願っておくよ。 君の調子に関わるみたいだからね」

「あざっす……」

「近頃は何やら物騒だしね。 正月休みは君も気を付ける様にしたまえよ」

「……はいっす」


 そう言いたい事だけ言いのけた先輩は、別のわたしの次に好成績な一年の元へと向かった。なんだかんだ面倒見が良いという事なのだと適当に納得すると、残りの矢を手早く放った。


 ……


「お帰りなさい、瑞紀(みずき)ちゃん」


 帰宅後出迎えた赤野(あかの)を適当にあしらって、わたしはネットに情報が転がっていないか調べ始める。


(最近で見つかった家出女子高生……、もしくは自殺……)


 我ながら嫌なキーワードで調べるも、完全に無関係なものか、釣りらしき情報しかヒットしない。


「……うわっ」


 意図せずアダルトサイトにアクセスしてしまう。女子高生というキーワードが関連していたらしい。


(どうしてこうも、おっさんはJK好きなのかね)


 下手なグロ画像より質の悪い映像が流れるサイトからブラウザバックして、情報収集に戻った。

 アングラな掲示板のまとめサイトを見つけてその内容を読むが、それらしい情報は見つからない。


(……ん?)


 そんな中で杏耶莉(あやり)に関する情報ではないものの、気になる文言を見つけてクリックした。

 そこには目の前で男性の首が突如切断されたと思ったら、黒い煙になって消えるという目撃証言から始まっていた。


(首を切断、か)


 当初は「妄想乙」といった書き込みで茶化されていたのだが、数人が全く違う場所で違う特徴の人間に対する同じ現象を見たという報告が浮上して、雰囲気が徐々に変わっていく。


(自演、じゃねぇのか……?)


 IPが違う複数人の書き込みであり、文面の癖が全く違う事から、少なくとも自演の類ではなさそうだった。


(日付も……アイツが消えた日以降の目撃しかねぇな)


 あの戦いで、杏耶莉(あやり)は首を狙う事が殆どだったと聞いている。それとこの首が斬られる目撃証言……無関係とは思えなかった。


(この、黒い煙になるってのが不可解だけどな……)


 それに、これだけの人間が消えてるなら、もっと騒ぎになってもおかしくないと思う。


(やっぱ悪戯だろ)


 そう結論付けたわたしは、このまとめサイトを閉じた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ