第40話① この国の王様の行方
==杏耶莉=灼天の節・十二週目=エルリーン城・城内三階通路==
ある日、私宛にチェルティーナからある手紙を受け取っていた。
――アヤリ様。
実はある特殊なお願いを致したく、この書簡をお送りします。
厳しいお願いをする事となりますので、もし嫌でしたらお断りしていただいて構いません。
詳しく書面でお話しできる内容ではありませんので、詳細は当日お話いたします。
では、詳しい時刻と待ち合わせ場所について――
そうして待ち合わせたチェルティーナと共に城へと到着し、その場で合流した第一王子に連れられて三階へと初めて訪れていた。
「三階って、絶対立ち入り禁止だって聞いてましたが……」
「その認識で間違いない。 特に立ち入りを禁じていた……とある理由でな」
この城、エルリーン城の敷地も建物も広い。その中でも建物の中央に位置している三階は一、二階と比べて広くない。
そんな三階に訪れる機会はなく、寧ろ絶対立ち入らない様に言いつけられていた。
「そのあたりの説明はこの後到着してからお教えしますわ」
「はい……」
そうして少し歩くと、ある部屋の前にその部屋を守護する騎士と第二王子が待っていた。
「待っておりましたよ兄上、チェチェ。 そしてアヤリ」
「……」
偶に見かける外でのグリッドと比べ、物腰の丁寧なラングリッド王子との差に未だに慣れない。私が初めて会ったのはこっちだったが、王子モードのラングリッドはまず見かけないのだ。
「それで、説明はまだなのでしょう。 ワタシが話しましょうか?」
「いや、此方で話す。 立ち話で悪いが、聞いてもらえるか?」
「はい、大丈夫です……」
そうしてその部屋の前で立ち止まった私達は話を始める。
「この国の王……我等の父に当たる男について何を知っている?」
「王様ですか……? うーんと、どこかで具合が悪いって聞いた様な……」
これまで疑問に思わなかったのだが、様々な事柄を取り仕切っている第一王子は王子なのだ。この国の長たる王ではない。
どこで聞いたのか覚えていないが、調子が悪いという事だけ覚えていた。
「相違ない。 だが、仮にも爵位を得た貴族であるならもう少し知っておいてくれ」
「それは仕方ありませんわ。 意図的に私が意図的に話しておりませんでしたし、ラング殿下も民が不安がらない様情報統制しておりますもの。 アヤリ様の出自もあって気付けないのも無理ありませんわ」
それなら仕方ないと納得しかけた所に、ラングリッドが追随する。
「そうだろうか。 ミズキもカエデも不思議がって聞かれたぞ?」
「……アヤリ様ですので」「……アヤリであるからな」
「私、そんな認識なんですか……」
一切合切気づかなかったのは私が悪いが、私だからで納得されるのは不服である。
「……して、その父王であるのだが……病に臥せっている。 もう一周期以上もな」
「そんな、重い病気なんですか?」
「見た方が早いのではないでしょうか、兄上」
「……で、あるか」
そう言って指示を飛ばすと、目の前の部屋の扉が開かれる。それと同時に護騎士二人が風のドロップをディートして構えた。
「何が――うわっ!」
扉が開かれるのと同時に大量の黒い煙が通路に噴き出す。それを騎士二人で作った風の壁で来ない様に防いだ。
「これは……影霧!?」
「叱り。 その発生源が見えるか?」
部屋の中をじっと見ると、豪勢なベッドに、細った人影が横たわっているのが見えた。
「あれって……」
「うむ。 それが現王である我等の父上だ」
「え!?」
私が驚きと共に他三人の顔を見回すと、全員が悲しそうな顔をする。第一王子の話は間違いないのだろう。
「何でそんな事に……」
「……其方には敬意を話しておくべきであろうな」
そうして、第一王子は話を始めた。
「以前、この国で裂け目の大量発生があったのは知っていよう」
「はい」
「その折、影霧の病気が蔓延する村があったのだ。 それを確認しに行った騎士の報告を受けた際にどうも父王にも伝染してしまったらしい」
「それは……」
影霧は人から人に移る原因不明の病気である。その人に纏わり付く黒色の煙みたいな症状から命名されたという。
初期症状であれば私が斬り裂いて治療が可能であるのだが、これは明らかに末期症状だろう。
「何でこんなになるまで放置を……」
「いや、それが病気が発症してそう間を置かずにこの状態となってしまった。 既にアヤリがこの国へと到着する前の話だ」
「……そう、だったのですか」
「それに、風による霧散の対処が有効であると判明したのは父王が発症してからだ。 故に、何もかも間に合わなかったのだ」
「私が詳細を含めて知ったのも、アヤリ様が一度故郷に戻られた後ですわ。 それまでは本当に限られた者しか知りませんでしたわ」
「それは今もだぞ。 この事実は極少数の者しか教えてない。 現在も兄上を含めた王族や公爵諸侯。 そして、信頼の置ける騎士の一握りしか知らない」
順に彼らの話を聞いて、当然の疑問が湧き上がる。
「そこまで隠してるこの話を何故私に話したのでしょうか?」
「それはだな――」
私はその物騒な言葉を聞いて、只々驚かされた。
「――父王を楽に……命を絶ってほしいのだ」




