第32話③ 孤立と一人
投稿遅れました、すみません!
==杏耶莉=快天の節・五週目=律舞高校・校庭==
体育の時間、校庭に出ていた。
少し離れた位置には1-C組の女子生徒が同じく体操着を着て外に出ている。
「んな事もあるんだなー」
「そうだねー」
普段合同で体育を受ける事はない。だが社会科の教師が一人、急用で午後まで来なくなった事で、私のクラスである1-B組の授業が行えなくなってしまった。その為1-B組の授業を入れ替えて、曜日的に同じく体育のある1-C組の体育と合同実施させてしまおうという算段である。
「……にしても、目立つよな」
「……そうだねー」
遠くに見える宿理は、他の女子生徒と明らかに浮いていた。単に女子受けが悪くて孤立しているのもそうだが、それ以上に目立つのは薄着で普段より強調された胸である。
「下手なグラビアアイドルよりもすごいぞ?」
「私は何であんたにそんな知識があるのかが気になるんだけど……」
「ネット掲示板ってのは、下世話な話好きな男が多いからな。 画像とか貼られる内にアイドルとかAVとかに詳しくなった」
「……あ、そう」
私はネットやらSNSやらについて一切詳しくない。対する瑞紀は結構詳しいらしい。
「十七……こっちもあっちも奇数。 って事は一人余るよな! って事で、わたしはちょっかいも兼ねてペア組んでくるぜぃ!」
「あ、ちょっと……瑞紀!」
私の呼びかけも空しく、彼女はC組の集団に紛れてしまった。
「私のペア相手……」
普段は準備体操のペアを瑞紀と組んでいたので、一人余ってしまった。幸い小学校からの繰り上がりが殆だった中学と違い、逸れなりにクラスメイトと交流出来ていたので相手を見つけられた。
==楓=律舞高校・屋上==
合同体育のあった昼休み、今日も同じく屋上で昼食を取っていた。
「春宮さんって、毎日お弁当ですね。 それも、冷凍食品は使ってませんよね?」
「へ……? あ、うん。 いつも朝時間が余るし、料理も好きだからね。 ……節約も兼ねてるけど」
「お前は早起きだよな。 おばあちゃんかな?」
「……向こうに行ってる間に、日の出と日没で寝起きする習慣が出来ちゃったんだよね。 朝は剣の訓練して、シャワー浴びて、それでお弁当作って登校してる」
「ほへー。 確かに向こう暗いしなー」
「私は遅くまで書き物をしていたので、そういった習慣は付きませんでしたね……」
私より長い期間しか捕らわれた状態となっていなかったとはいえ、春宮はだいぶ違う過ごし方をしていたのだろう。
「それにしても……、高校生で自分で何でもやって凄いですね。 親御さんには作ってもらえないのですか?」
「――ぁ」
実は以前から気になっていた事柄である。週末に毎回出向いても存在しない彼女の家族。一見住んでいた形跡こそあれど、疑って見てみれば丁寧に管理されているだけで随分使われていない物も多かった。
考えた要因として親だけ出張しているという理由もあり得るのだが、どうも、彼女には妹も居るらしい。それなのに、彼女だけ置き去りだというのも不思議に見える。そもそも、彼女も友人の六笠もそれを隠そうと、触れられたくなさそうとしている様にもしていたので疑念が増えていた。
「……」
「あ、杏耶莉の母親はこいつと違って料理下手だからな」
「そうなんですか。 では、お父様はどうでしょうか?」
「……」
「……あー、こいつの父親は確かに料理上手だな。 だけど、毎朝弁当の準備までは手が回らんだろうからな」
「そう、ですか……」
「……」
「そ、そういうこった。 な?」
「……うん」
春宮は沈黙を通して、六笠は動揺した様子で何とか受け答えをする。
明らかな藪蛇に私の奥底に存在する探究心が刺激されるも、相手を傷つけかねないという良心との葛藤で揺れ動く。
最終的に欲求を抑え込んだものの、私は観察を続ける事は確定した。
(明らかに訳ありですね。 春宮さんの曇った表情を癒す事は出来ないでしょうか?)
異世界という橋渡しを以って彼女らへと好意的な感情はあるのだ。私なりに出来る事を考えようと思った。
「……そ、そういやーお前。 クラスで孤立してるよな」
「……はい、そうですね」
明らかな話題転換だったが、これ以上この場の空気を悪くしてしまうつもりはないのでそんな話題に乗る。
「アレか? 最初の奇行が原因か?」
「……それもありますが、どうにも女子生徒のグループに入りそびれてしまいまして。 影響の大きい方が目の敵されてしまっています。 対して男子生徒からは、多少人気があるので嫌がらせはありませんが、男子からも遠巻きに見られるのみで結果一人になってますね」
「Oh……、そりゃー大変だな。 それなら――」
そんな話題で今日の場を凌いだ。ただし、今日は最後まで春宮の元気は戻らなかった。




