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第4話③ 初めての戦いと嘘


==杏耶莉(あやり)=南商業街・路地裏==


 人気のない路地裏には廃棄された箱などが詰まれ、人一人がなんとか通れるような細さになっていた。


「オレが行くじゃんね!」


 その声と同時に短剣の男性が猛スピードで近づいて来るので、私も応戦すべく何歩か前に出る。


「てぃっ!」


 私が大きく剣を振ると、それを受け止めようと男性は片方の短剣を突き出す。

 ()()大きい武器の私の方が攻撃力が強く、短剣は半ばで切り落とされて消滅する。


「のわっ!!!!! なんじゃんね!!?」


 大げさすぎる驚き方をしながら生成された短剣を持っていた右手を見つめている。私は無防備なその様子に当たらないだろう距離にもう一度剣を振った。

 男性はもう片方の剣を構えようとして、それを止めて後ろに下がる。


「怪我させたくないから、引いて」

「こんなん、怪我じゃすまないじゃん!!!!!!」


 それはそうだろうと私も思う。武器を持ちだして戦えば、当然命のやり取りになる危険があった。


「何をやってる……、オレに任せるんだな」


 今度は、後ろに控えていた長い武器の男性が前に出る。明らかに私よりも遠くに攻撃できる武器を私へと向けて構えた。


(まずは武器を破壊して無力化しないと)


 圧倒されそうになるのを抑えて、剣を強く握りなおす。

 リーチが勝っているのを理解してか、ぎりぎりの距離から突きを放たれるも、後ろに下がって攻撃を回避する。


「ぐっ……」


 再度突きを放つも、同様に回避しする。三度目の突きが避けられた時点で男性はぎりぎりではなく、半歩詰めて斧みたいな部分を振り下ろされる。


(来た……)


 待ち構えていた攻撃に反応するように今度は横に回避すると、そのまま長い武器の中央で真っ二つに斬り落とした。


「なっ……」

「よし!」


 『カラン』と音を立てながら、長い武器の先端が地面へと落ちる。

 男性は手に持ったままの短くなった棒と、落ちた武器の先端を交互に見て、最後に私の剣を見つめる。


「降参してください!」


 剣の先端を男性へと向けて言い放つと、我に返った様子で男性はもう一人の男性の元へと下がる。


「やばいじゃんね」

「ま、待ってくれ。 オレたちはその少女の身柄を拘束したいだけでな」


 支離滅裂で素直な発言に、逆に興味を惹かれて質問してみる。


「この少女()を攫って何をするつもりなんですか?」

「攫うって、別に疚しいことはないじゃんね」

「その通りだな。 ただ、罪を償わせたいだけだな」


(罪? どういうことだろうか)


「罪って何ですか?」

「その女の子が、露店で盗みを働いていたのを見かけてな」

「そうそう、オレらは悪者じゃないじゃんね」


(盗んだ……、窃盗。 つまりこの少女()()()()ってこと……?)


 話が本当なら、私は犯罪者を助けていたことになる。

 後ろを振り返り、少女の方を見る。脅えた様子なのはそのままだが、視線を合わせようとせずに小さく呟いた。


「お姉ちゃん、ごめんなさい」


 先程は『追いかけられる理由がわからない』と言っていた。


「……嘘をついたの?」

「うぅ……」


 否定しないところを見ると、この男性達の話が正しいことになる。大きく「はぁ……」とため息を吐いて剣を消滅させる。

 男性達の方へ再度向き直ると、質問をした。


「この少女()はこの後どうなるの?」

「しかるべき所で裁かれ、罪を償うことになるだろうな」

「裁かれる、か……」


 そう呟くと、男性二人は何故か慌てたように、矢継ぎ早に続きを話す。


「よ、余罪が調べられるけど手口からおそらく初犯じゃんね。 少額の罰金で釈放となるはずじゃんね」

「あぁ、それにその少女は訳ありだろうな。 それならランケットで支援をすると約束させてもらう、だから安心して貰いたいな」


 後半の支援どうこうについては()()()()()()が、この少女(犯罪者)が正しく裁かれるのであれば、私に不満はなかった。


「わかった。 じゃあこの少女()はお願いするね」

「任せろじゃんね」

「責任を持って助けると約束しよう」


 話を聞いて落ち着いたのだろう。前へと出てきた少女が私を見上げていた。


「お姉ちゃん……、ごめんなさい」


(謝るぐらいなら、嘘なんかつかなきゃいいのに)


 少女を一瞥してから、改めて男性達に謝罪する。


「早とちりで攻撃してしまい、すみませんでした。 武器も壊してすみません……」

「別に良いじゃんね。 オレらもやり方が悪かったし」

「武器も気にしなくて構わないな。 壊されたのはオレの未熟故だからな」


 騙されたとはいえ、好戦したにもかかわらずに快く許してくれた男性達に申し訳なく、再度お辞儀をしてからそのまま別れることとなった。


(そういえば、食材買いそびれちゃったな……)


 マーク宅とは反対方向の露店へと向かうのも煩わしく感じ、そのまま帰宅することにした。


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