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お風呂

 皆さん、こんにちは!


 お元気でしょうかそうであって欲しい!! 私はあまり元気ではありませんが、元気なふりして今週もこのくだらないエッセイを一本書き上げてやったぜ!! いつも以上にくだらないけどな!!


 てなわけで、今回のお題は「お風呂」です! 実はこれ、先週「お題が排水溝に詰まった髪の毛になったとしても、全力でエッセイを書かなきゃいけない」なんて余計なこと言ったせいで今回のお題が「排水溝に詰まった髪の毛」になりかけたんですけど、かなりの良心的配慮により「お風呂まで拡大解釈していい」ことになった……という経緯があります。私を甘やかしちゃダメだぞ!!


 なので、「お風呂」とは言いつつも、「排水溝に詰まった髪の毛」に内容を寄せていかねばなるまい。


 ところで、日本には古来より、「八百万(やおよろず)の神」という考え方があります。簡単に説明すると、「ありとあらゆるモノには神が宿っている」というような意味合いです。……たぶん。


 これが本当なら、お風呂にはお風呂の神が、排水溝に詰まった髪の毛には排水溝に詰まった髪の毛の神がいるということになります。排水溝に詰まった髪の毛の神……。なんとも不憫な存在です。私が神一族だったら、こんな神は断固ゴメンだ。できればブロッコリーの神になりたい。


 ……なんてどうでもいい話はさておき、こんな神が家の排水溝に潜んでいたら、どんな事態に陥るのでしょう。全力で妄想してみました↓↓



「……は? 何してんのあんた」


 私、神賀美枝瑠(かみが みえる)は、排水溝の中に向かってそう吐き捨てた。


 話は1分ほど前に遡る。ここのところ、しつこい排水溝の詰まりに悩まされて昼寝もろくに出来なかった私は、今日も全く流れなくなった水に苛立ちを覚えつつ、浴室の中で仁王立ちしていた。


「昨日掃除したばっかなのに……」


 自然と、ため息共に独り言が漏れる。どうして一晩で詰まるんだよ、おかしいじゃん。こんな勢いで髪が抜けたら、来年と待たずにスキンヘッドの爆誕だっつーの。私、まだ22歳の乙女なんですけど。……いや待てよ、スキンヘッドも捨て難いか。


 色々な思いを巡らせつつ、排水溝の蓋を取り外そうとおもむろに手を伸ばす。……と、その時。


「どうしたんだ、今日は一段とため息が多いぞ?」


 ……私の耳に、変な声が届いた。しかも、目の前にある排水溝の中から。私は一旦手を引き、その手を胸に当てて深呼吸をすると、そっと目を閉じた。


 ……ごめん、怖すぎる。どういうことだよ。


 えっ、こん中に誰かいるの? そんな馬鹿な。まさか幽霊? ここが事故物件だなんて話、聞いてないんだけど私。あの大家、今度会ったら、排水溝に詰まった髪の毛を口に突っ込んでやろうか。


「ごめんごめん、怖がらせてしまったようだね。大丈夫だよ、君に害は加えない。とりあえず、排水溝の蓋を開けてみてくれないか?」


 いや、全く大丈夫じゃないから。


 人生史上最大級の大事件だからこれ。そんなセリフが脳内に浮かんだものの、言葉にはできなかった。開けるのは怖いけど、このまま無視するのはもっと怖い。私は恐る恐る、排水溝の蓋を……開けた。


 ……目に飛び込んできたのは。まるで少女漫画の主人公のような、超絶顔の整った爽やか系イケメン(身長10cm)が、排水溝へせっせと髪の毛を詰める姿であった。


「……は? 何してんのあんた」


 こうして私は、冒頭のセリフを呟いたのである。正直、ツッコミ所が多すぎて、このセリフが適切だったかどうかも分からない。


「何……って、そりゃ偉大なる神の仕事さ」

「神の仕事……? あんた、神なの?」

「そう、僕は排水溝に詰まった髪の毛の神なんだ」


 ……排水溝に詰まった髪の毛の神って何だよ。その存在は、この世に必要なのか? 神って割には、全く神々(こうごう)しさも感じられないし。イケメンなのが、かえって腹立たしい。


「はぁ……。で、仕事っていうのは?」

「僕の仕事は、世界中の排水溝に髪の毛を詰めることなんだ!!」


 目を輝かせながら、ソイツは言った。そう言いながら、どこからともなく出現させた長い髪の毛を、排水溝のネットへとねじ込む。……おい、全部お前の仕業だったのかよ。ふざけるな、こっちとら自分がつるっ禿げになる未来を想像して、期待と不安のはざまに揺さぶられてたんだぞ!!


「あの、今すぐ止めてもらっていいかな? そしてここから速やかに退場して二度と来んな」

「な……なんて酷いことを言うんだ君は!! 僕は神だぞ!! 神に神の仕事をするなっていうのか!? 血も涙もないな!!」

「神なら、もっと人の役に立つ仕事しろよ」


 突き放すようにそう言い放つと、ソイツは目に涙を浮かべながら大きく口を開いた。


「君は、役に立つ存在じゃなきゃこの世にいちゃいけないって言うのか!?」


 …………えっ……?


 ……瞬間的に真っ白になる、私の頭。彼のその言葉が、心の奥に……グサリと突き刺さった。


「確かに僕は誰の役にも立ってない! でも、こうして神の仕事を必死に全うしているんだ!! 必死に生きてるんだよ!!」


 確かに、私だって必死に生きている。生きているけど、じゃあ、誰かの役に立っているのだろうか。……恐らく立ってない。きっと、ほとんどの人間は私と同じように、ただひたすら自分の人生を駆け抜けているのだろう。ただただ必死に。


 ……誰かの役に立たなきゃいけない。……誰がそんなことを決めたんだ? 精一杯、自分の人生を全うすればいいじゃないか。役に立ったか立たなかったか、そんなものは結果論に過ぎないのだ。


 私は、なんて愚かなことを神に向かって言ってしまったのだろう。全て、生きとし生けるものには、理由なく生きる権利があるというのに。今、それを痛いほどに理解した私は、同時に深く反省した。


 ……だけど。……だけどっ!!


「だけどアンタは神様なんでしょ!?」


 何をやるのかはその人の勝手だ。でも、神様ってやっぱり人間と同列じゃない。格上の存在じゃないか。そんな神様が人様に迷惑かけるなんて、やっぱり許せない!!


 私は神をつまみ上げると、窓から放り出した。



 ……って、予想以上に長引いた!! そして文字数もだいぶオーバーしたので、今回はこの辺で!!

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[一言] 神さま、つまめるんだ……。
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