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ごめんなさい。もう書けない

作者: 奈宮伊呂波

以下の文章は作者の独白です。

 こんにちは! 私、東野緑!

 今は学校のグラウンドにいます!

 もちろん一人でじゃないよ? 一人であんな広い場所に立つなんて寂しすぎるもん。

 目の前にはA君が真剣な表情で私のまなざしを見つめてて、私たちの周りにはたくさんの人がいるの。

 何してるかって? そりゃあもちろん決まってるよね。今日は高校の文化祭なのよ! 文化祭の最終日のキャンプファイヤーが終わった時間、私は彼にここに来るように言われたの! A君に!

「東野。好きだ。付き合ってくれ」

「こちらこそお願いします!」

 めでたくカップルの誕生だね。めでたしめでたし。


 ◆ ◆ ◆


 はろー! 私は北谷茜!

 今日は一世一代の日になるよ。なるかもしれない! いや、きっとなる!

 目の前に長年お世話になったバイト先の店長さん。他にはバイト仲間の人たちが数人。五人か六人か。んー、七人かも? まあいいや。場所はバイト先の事務所か何か。オフィスかもしれない。外かもしれない。

 私は今からバイトをやめて新しい仕事を始めることを伝えるつもりなんだ。

「B店長。私。今日でバイト辞めます。今までお世話になりました!」

「茜ちゃん。これから大変だろうけど、がんばってね」

「はーい!」

 晴れて、私はバイト先を卒業することができました。できた、できたよね? 多分できた。めでたしめでたし。


 ◆ ◆ ◆


 こんにちは。私は南条葵。

 今日はピアノのコンクールの日。これまでいろいろなことがあった。練習も大変だった。Cさんとの確執は中々解消されなかったけれど、それもようやくケリが付いた。

 さっき、私の出番が来た。ほどよい緊張感のおかげか、実力以上のものを発揮できたと思う。後は結果を待つだけ。

「ねえ。あんた、自信ある?」

「もちろんあるわ」

「相変わらず。うざいなあ」

 Cさんは苦笑いした。

 そして、結果発表。

 ―――。

 めでたしめでたし。


 ◆ ◆ ◆


 お世話になっております。私、西野黄彩(きいろ)と申します。

 さて、目の前にいらっしゃるのは敵軍を総括するDです。この者は能力者を取りまとめる人物であり、瞬間移動能力者でもあります。捕らえるのが難しく、能力を制限する電磁波を浴びせてようやく捉えることに成功しました。

「くたばれ。旧人類ども」

「その言葉、そっくりそのままお返しして差し上げます」

 後から現れた能力者が先に存在していた非能力者よりも優れているとは限りません。

 私はナイフを振り下ろしました。

 めでたしめでたし。


 ◆ ◆ ◆


 こんにちは。私は―――。誰?

 ねえ、私は誰? 名前は? 思い出せない。というか、名前、まだ決まってないよね?

 どういうこと? 追いついてないの? 世界を作るのはあなたなんだよ? がんばってもらわないと。

「好きです! ―――さん!」

 いや、違うから。そっちが先じゃないでしょ。

「付き合ってください!」

「お断りよ」

 私はねえ。貴方のことが心底好きなの。決して私の名前もわからないような謎の男なんかじゃなく。私を作ってくれるあなたが好きなの。愛していると言ってもいいわ。だってあなたは母であり父であり、友達であり、恋人である。

 私のことを一番よく理解している。

 だって、私のすべてはあなたなのだもの。貴方がいてこそ私が生まれることができる。

 可憐な女子高生にもしてくれるし、ぷらぷらのフリーターにもしてくれるし、ピアノ奏者にもしてくれるし、対能力者兵器にもしてくれる。

 なんにでもなれる。貴方と一緒なら。私は。

 だから好き。愛している。

 ねえ。だから。教えてよ。私の名前は。何?


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