なんか最近の論議って斜め上だよね
昨日、割烹に尖閣問題についての話を載せた。
尖閣諸島に中国の船が来たらどうすんだという話。
そう言う話をするとすぐに「自衛隊だ!」という話を始める人がいるんだけども、ちょっと考えて欲しい。
自衛隊を出すってどういうことなのかを。
まず、第一に見なきゃいけないのが法律の話だけど、領海や領土で権限を行使するのは基本的に警察であるという事。
これは日本に憲法9条があるからではなく、一般的な国際法や常識としてそうなってる。
なので、国境に配備されるのは普通は国境警備隊や沿岸警備隊という軍隊そのものではなく警察の仕事をしながら一般御警察よりも強い権限を持ったりや即応できる武装をした組織になる。
で、空はと言うとこれは少し違って、警察ではなく軍隊が警備するというのが一般的な状況。
この違いをまずは把握しないといけない。
陸や海は警察組織が国境警備を担い、空は軍隊が担う。コレが今の法律。
で、尖閣の話に戻ると、その海を担う海上保安庁がそこに居る。
中国の船が尖閣に来たら?それは自衛隊じゃなくて海上保安庁の仕事。
武器を持って上陸したら自衛隊がではなく、そこもやはりまずは警察の仕事になる。
ほら、竹島に駐留しているのは韓国軍ではなく警察部隊でしょ?
それと同じ。
それに、自衛隊を~って言うけれど、自衛隊が出ていくには海上警備行動や治安出動などの発令が必要で、すぐに同行できるわけでもない。今そこのある問題に対して時間を掛けて決める話ではなく、現場ですぐに対処する必要がある。
しかも、尖閣諸島は日本の領土なんでしょ?ならば、領土内で起きた騒動を解決するのは警察の仕事となる。いきなり軍隊が出て来たのでは、それは事件や事故ではなく紛争なので外国の付け入るスキを与えることになるという至極あたり前の事を前提に話をしないといけない。今のメディアがすぐに自衛隊だとか戦争だとか煽っている姿こそ、まさしく中国の思うつぼなんだよ。尖閣諸島に領土問題が無いなら、戦争が起こるとか自衛隊が出ていくとかいう問題じゃない。警察が事件を解決する問題。
これと同じように現在話が飛躍しすぎているのが敵基地攻撃だね。
敵基地攻撃と言って騒いでいるのも少々首を傾げる事が多い。
敵基地攻撃力を持てば抑止力になる?撃たれる前にミサイル破壊すればいい?
ちょっと抑止力という言葉が独り歩きしすぎてるんではなかろうか。
抑止力というのは一つの兵器がそこにあるから発揮されるというのではない。その国がどうそれを扱おうとしているかという事の方がより大きい。
「トマホークを100発持てば北朝鮮は黙る」
みたいなことを言う人がいるけれど、トマホークを持ったって今の日本はそれを「敵基地」に向けて撃てないんだよ?
で、トマホークという神仏に縋るこうした意見が見落としているのが、現在の自衛隊の導入しようとしている装備類。
現在、離島防衛という目的のために射程500~1000kmになるミサイルをいくつか導入や開発を行おうとしてる。
トマホークって射程1600kmだから、実はそんなに大きく違わないんだ。
ノドンが1000~1300kmなのだから、射程500kmもあれば日本海上空から北朝鮮に届いちゃう訳で、是が非でもトマホークじゃなきゃダメな理由が無い。
そして、いまの離島防衛というのは相手の防空網。500kmなどという広域を索敵できるレーダであったり、射程200kmという体躯ミサイルであったりを避けて、敵の拠点や艦船を撃破するために保有しようとしてるんだから、その能力をそのまま北朝鮮に向ければ良いだけなんだよ。アレが必要、コレが無いとダメという話ではない。
メディアでアレが無いコレが無い。コレが必要と言ってるモノは離島防衛でも必要なもので敵基地攻撃だから必要になる特異なモノじゃないんだ。なぜかそこのところを説明せずに、「だから出来ない」といった論調になることが多いけど、敵基地攻撃が出来ないのであれば離島防衛すらできないんだ、実際には。
そうしたオドロオドロシイ解説を行う御用評論家って、単にそのメディアの意向に沿った作文を仕上げているだけ。
そして、もう一つ問題なのが、政党が批判してる専守防衛がどうしたとか攻撃的兵器が云々という話。
これ、すでに意味をなしてないよね。
だって、離島を取り返そうと思っただけで、高性能なレーダー避けて、長射程の対空ミサイルを掻い潜って攻撃しないとどうにもならないモノ。
まず、今の専守防衛が言われ出した1980年頃、この時にようやくイージス艦が誕生してそれまで30~50kmだった対空ミサイルが70kmの射程を得るようになる。
この当時日本が開発した空対艦ミサイルが射程50kmだったといえば分かるだろう。
専守防衛とか攻撃的兵器とか論じられた時代には射程500kmなんてミサイルが俄かに必要な状況なんか存在していなかった。
現在、敵基地攻撃に反対してる論調は、射程が50~100kmあれば安全に敵艦を撃破できる時代の価値観で行われている。まったく今の現実というのが分かっていない。
ただ、それは敵基地攻撃を行えばという推進側にも言える話で、トマホークが無いとダメという時代ではなく、離島防衛の装備をそのまま使いまわせばよくなったことを理解できていない。
ただ、大きな問題は、先に基地を破壊すれば良いんだというどこか信仰じみた意見がもてはやされているけれど、攻撃すべき場所がどこかも分からない。そして、すべてを事前に破壊する事が物理的に難しいという現実すら見えていない。怪しい話になると「基地ではなく都市を破壊する力があれば日本にミサイルを撃とうという気にならないんだ」と狂気じみた話をしだす者まで居る始末。
尖閣の話ではないけれど、まず、国際法や世界の常識を見ないとそうした話は出来ないんで、そこに注目すれば、現在の世界は先制攻撃や予防戦争を是としていない。怪しいから叩き潰そうという話にならないという事をまずは知らないといけない。
そして、ゼロリスクよろしく「これさえ持てば撃たれない抑止力」などというモノは存在しない。
敵基地攻撃力を日本が持てば北朝鮮は黙るんだという信仰じみた理解で話をすること自体が「軍事力とは最悪に備える物」という前提を無視してしまっている。
結局のところ、あまりにも古い価値観で話をしてみたり、ある兵器への絶大な期待をかけて話をするという今の日本の状況自体が、現実から遠く離れた仮想空間での空中戦を発生させちゃってるんで、賛成とか反対とか言う前に、少し冷静に、客観的に物事を捉える努力から始めた方が良いんじゃないだろうか。