8話 助命嘆願失敗
「貴様、何者か!?」
背後から声がした。
武士がいた。
私は大阪城内で藤吉郎君を探していた。今は豊臣秀吉だけど、藤吉郎君の方がかわいらしくていい。
そして、見つかってしまったというわけだ。
当然、私は縄にしばられ、藤吉郎君の元へ連行された。
とにかく、藤吉郎君に会えるのだから、まあいいとしよう。
「そなた、何者じゃ。」
「藤吉郎君に会えば分かります。」
「その名をみだりに呼ぶな!!」
30歳くらいの人が、激怒して言った。
「三成、もう良い。」
60歳くらいの人が部屋に入ってきた。
30歳くらいの人は、三成ということか。
「秀吉様、良いのですか?」
「ああ。」
ん?このおじさんが、藤吉郎君?
「藤吉郎君!レナだよ!覚えてない?桶狭間の合戦の時。」
「その声、もしやレナ殿!」
藤吉郎君は縄をほどいてくれた。
「先ほどは申し訳なかった。」
三成は言った。
「良いですよ、別に。」
「ところでレナ殿。話というのは?」
「あまり外で聞けない事なので、別の部屋に。」
別の部屋に行くと、さっそく本題を出した。
「藤吉郎君、秀次の妻子を処刑するって、本当?」
「・・・本当だと言ったら、どうする?」
「説得します。」
「昔、平清盛は源氏に勝った。しかし、頼朝の命を奪わなかったため、平氏はのちに滅亡した。」
「ならば、せめて駒姫の命だけは助けてください。側室としての交流は無いと聞いていますが。」
「側室としての交流が無い?ふっ。どうせ最上のやつが言うたのであろう。駒姫は、秀次からおいまという名を与えられていた。秀次から名を送られて、しかも側室になることを受け入れたやつを、許しておけるものか。」
「そんな・・・」
そこへ三成が入ってきた。
「レナ殿、その話はもうやめてくだされ。すでに、三条河原では、処刑が始まっております。」
「それでは、駒姫があまりにも気の毒です。」
「駒姫の運が悪いだけです。駒姫が受け入れたのも悪いのです。それに、義光殿自ら来ないというのは、何か企んでおるとしか思えないのです。」
「でも、いくら何でも・・・」
「レナ殿っ!!」
三成は叫んだ。
「駒姫はなぜ助命嘆願をしないのです?助命されることを恥だと思っているからではありませんか。
我々が好意を持って助命したとしても、礼も言わずに、最上に帰るでしょう。そのような者の助命
など、無意味です。」
三成、か。関ヶ原で敗戦したのも分かる。
助命嘆願するひまも与えなかったくせに、何をほざいてるんだろうか。
「駒姫の、どこが悪いのですか?」
「駒姫は、辞世の句を詠んだらしいですが、内容がおかしいです。罪が無いから極楽に行けると書いておりました。だからです。」
やっぱり、ロボットみたいな人。罪が無いのは事実。
「帰ります。」
外に出た。三成だけがついてきた。
「最後に言います。あなた、優しさのかけらも無いのね。人間のクズの中のクズよ。そんなんで家康に手を出すな。」
私は近くにある井戸から水を組むと、その水を三成にかけた。
「処刑される前の気持ち、少しは考えろ。あんたの栄華はそういう犠牲から成り立ってるんだよ。あんたの実力なんてゴミ程度よ。」
私は元の世界へもどった。