片想いは両想い
唐突だが、僕には好きな人がいる。その人とは小学校で出会って高校生である現在までずっと片思いしてきた。
それでも僕は今まで1度も告白したことがない。なぜなら、身の程知らずな恋だから。告白しても振られるだけだってわかってる。それならずっと片思いの方がいい。そう思ってた。
彼女は容姿に性格、運動神経、その上成績まで全てが完璧。そんな彼女に好意を抱いているのはもちろん僕だけではなかった。
ある日僕は忘れ物を取りに放課後、教室へと向かっていた。
教室に着くと窓際に人がいた。それは紛れもなく彼女だった。
こんなチャンスはもう二度と来ないかもしれない。
僕は今までずっと逃げてきた。振られるのが怖くて中々踏み出せずにいた。でも今は教室に彼女と二人きり。僕は覚悟を決めた。
「………渡辺さん?」
振り返った彼女はやっと僕の存在に気づいた。
「…えっと…話が…あります。…いいです…か?」
声が震えている。あまりに唐突なのは分かっている。今日僕の初恋は終わる。振られると分かっていてもこの想いを伝えたい!そう僕は思った。決意した。
「……なんですか?」
少し考え彼女は言った。
「えっと…小学生時に……僕はあなたに一目惚れをしました。それからずっと今もずっと好きです!大好きです!!」
言えた。つっかえながらも自分の想いをきちんと伝えられたと思う。もう悔いはない。
そして沈黙が訪れた。その沈黙を最初に破ったのは彼女だった。
「…いいよ?付き合っても」
「……っ…!?」
今、僕の耳におかしな言葉が飛んできた(様な気がした)
「ただし条件があります。」
「……えっと…」
「ずっと2人で幸せに一緒にいられる所に行きたい。」
「…えっと…わかった!!それじゃあー」
「そしたらあなたと付き合う。」
失恋する。そう思っていたのに彼女は何故か僕の告白にYESと答えた。
嬉しい。決めた!僕は彼女を幸せにしてみせる!一生僕が彼女を守る!
それから僕は毎日バイトをした。少しでも働くために部活も辞めた。バイトを掛け持ちする日もあった。全ては彼女のため。彼女と過ごせるのなら僕はなんだってしたい!
パソコンで行き先を探しているとちょうど良い国を見つけた。その国は人口が少なく物価は安い。それでも、きちんと清潔な街並みだった。僕はそこにすることにした。
3ヶ月後
僕は再び彼女を呼び出した。
「…準備は出来たの?」
彼女の質問に僕は、行く国のこと、行った先での職、住居など、全てを話した。
「はははははははっ!ははははははっ!!ははははははははっ!!!」
すると彼女は突然笑いだした。そして「違うでしょ?」と言った。
彼女が僕に近づいてくる。
僕は今になって気づいた。近づいてくる彼女の手にはナイフが握られていたのだ。
「……えっ?」
(…嘘でしょ?)
「『ずっとふたりで幸せに一緒にいられる場所』…そんなの1つしかないじゃない。」と彼女が笑う。
「……もしかして…それって…」
彼女が僕に抱きついた。甘い匂いと共に腹に衝撃が走る。
(…ううっ痛い)
彼女から1歩離れて下を見ると腹辺りの制服が赤く染っている。
(ああああああああぁぁぁ)
彼女の顔を見ると今までにないぐらいの笑顔で僕を見ていた。目を合わせた途端ナイフに更に力が加わった。
「ああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁ!!!!!!」
「あはははははっ♡♡」
視界が暗くなっていく。そして僕は初めて異性とキスをした。彼女の顔が近い。
やがて完全に真っ暗になった。最後に聞こえた君の声。
「ずっ〜と一緒だよ♡♡」
やがて彼女の返り血が僕の顔に掛かったのがわかった。
3、2、1……
これは世界一幸せな恋愛物語