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私が死ぬまでの七ヶ月  作者: 春のした
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出会い

「寒いなぁ…」


マフラーをきゅっと握りしめて、空を見上げた。

今にも雪が降りそうな冷え込み。


「友達…友達ねぇ」


言ってみたものの、友達って誰だろう。

正直、私に友達らしい友達っていないかもしれない。いや、いない。だって、作ってこなかったから。

家族以外の人と、心を通わせる…そんな気持ちを味わいたくなかった。

いつか無くなると知っていたから…。


「アケミちゃんかなぁ…」


強いて言えば、彼女かな。

高校に入ってから、よく話しかけてくれる子を思い浮かべてみた。


「…いいや。やめとこ」


話すようになった。でも、唐突に遊びに誘える仲ではない。…と思う。友達作ったことないからわからないけど。

入退院を繰り返し、一週間の内に何度も体調を崩す。外で駆け回ることすらしたことない。こんな自分と友達になってほしい…なんて、思えるわけない。


そうだ!お気に入りの海辺に行こう。あそこなら、こんな寒いなか行く人もいないだろう。

少し、一人になりたい。

なにも考えない時間がほしい。そう思った。


その海辺は、病院からそう遠くない。昔から、たまに病院終わりに寄っていた。

あまり冬に行くのは避けていたが、今日は体調も良い方なので良いだろう。


少し足取り軽く、人通りもまばらな海岸に向かう道を歩く。

数分歩くだけで息切れしてきたが、その頃には綺麗に管理された海が見えてきた。


サーっと潮の香りが、私を包んだ。

泳いだ事もないが、昔から海が好きだった。


「やっぱり、こんな寒いところ誰もいないよね」


もとから、そんなに知名度のある海ではない。サーフィンをするような人も中々いない田舎なので、やっぱり人なんていない、静かで冷たい海。

鞄からハンカチを出すと、私は砂浜にひいて座った。


「はぁ…綺麗だなぁ」


潮風が、全身を纏っていく。冷たい風が、海辺に来て、さらに強くなっている気がした。


「もう…良いよね?」


そう呟いて……呟いた瞬間、涙がこぼれた。


「お母さんのバカっ!バカバカバカっ!」


涙と一緒に、気持ちもこぼれ落ちる。

我慢してた。


どうして?


なんで?


なんで、そんなに…


私を産んだことを後悔するの?


そう、思ってしまう。

お母さんは、体を強く埋めなかった事を言ってるのはわかる。でも…でも、わかっていても


「元気な子供じゃなくて…私が産まれてごめんね」


もし、私じゃなかったら。


その思いが、私を支配する。

もっと、強い別の子がお母さんの子供だったら、もっとお母さんは笑って生きてくれてるのかな?


「ごめん…なさい」


死ぬのは悲しくない。

でも、お母さんがずっと泣いてるのは悲しい。

笑ってるお母さんより、泣いてるお母さんばかり見て生きてきた。


「産まれてきて…ごめんなさい」


ポロポロ涙があふれた。



「あのー…」


そんな時、後ろから声がした。


「えっ!」


慌てて振り向いた時、綺麗な黒い瞳と目が合う。


「ごめんね、大変そうなときに声かけて」

「あっ…いえっ」


いつの間にか、私の後ろに、同い年くらいの男の子が立っていた。

しゅっとした背の高い男の子。こちらをにこりと見ている、でも意思の強い光の灯った瞳がこちらを見つめている。


「あの…なにか?」


ハッとして、慌てて涙をぬぐった。


「あのぉ…泣いてる君には大変申し訳ないのだけど」

「はい」


「僕、これからここで死ぬので、どこか行ってもらっていい?」



「………え?」




それが…私と彼の出会いだった。



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