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私が死ぬまでの七ヶ月  作者: 春のした
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はじまり



「残念ですが…余命七ヶ月です」


人間の死って、こんな簡単に告げられるんだなぁ。

それが、私の感想だった。


「そんなっ!」


隣のお母さんが泣いてる。自分の事のように、体を震わせて大声で。

でも、私は涙が出なかった。

まるで、自分の事じゃないみたいだった。


「お母さん…泣かないで」


にっこり微笑んで、お母さんの背中を撫でる余裕すらあった。


「ごめんね…ミサキ。本当にごめんね」

「なんで謝るの?」

「強く産んであげれなくて…ごめん」


お母さん…私はね、この時つらかった。

死ぬことがじゃないよ?

強く産まれてこなくて…お母さんにこんなに辛い思いをさせてしまって。そんな自分なのが、辛かった。


「先生、最後までよろしくお願いします」

「ミサキちゃん…」

「先生…約束守ってくれてありがとう。嘘つかないでくれて」


先生にしたお願い。それは、私が死ぬときは、嘘をつかないでほしいと言ったこと。

余命宣告は、ちゃんと私自身にしてほしいと言った。

小さい頃から病気と一緒だった。覚悟はできていた。

病気と一緒に産まれてきて、16歳になれたのは先生のお陰だと思ってる。

涙ぐんだ先生の顔を、私は忘れない。




――――――――――――



「お母さん、もう泣かないでよぉ」


まるでお母さんが病人みたい。そう言ってケラケラ笑う。


「ミサキちゃん…ごめんね」


さっきから、お母さんはこれしか言わなくなった。

……さすがに辛いな。

正直な気持ち。


「お母さん、私ちょっと友達に会ってきていい?」

「えっ?今から?」

「遅くなるまでには帰るから」

「でも…」

「残り少ない時間、好きにさせて…ほしい」


使いたくなかった言葉。

でも、このままじゃ私も潰れてしまう。少しでも、この場から逃げたかった。


「は…っ、早く帰ってくるのよ?何かあったら連絡してね?具合悪くなったら、周りの人にすぐ言うのよ」

「うん!ありがとうー」


まだ何か言いたげなお母さんを無視して、ぱっと後ろを向いて歩きだした。


あー、なんて冷たい風だろう。


冬の風が、私の体にまとわりついてくる。


まるで、私の心みたいに、冷たく冷たく冷えきった季節。


「ごめんね…お母さん」


呟いた声は、もう届かない。




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