閉ざされた空間
目を覚ます、男性。
あたり一面真っ白な無機質な小部屋。
空間的広がりはほとんどなく、人が3人横になる程度だ。
その部屋に見合わない小汚い布団の上に体を伸ばしていることに気づく。
「ここは?」
目を覚ました者は、至極当然な疑問を抱く。
後頭部の痛みを感じる。
「またか。」
そうつぶやくと、彼は部屋の扉が少しばかり開いていることに気づいた。
さらに扉を開き、部屋の外へでる。
そこには、またしてもあたり一面真っ白な空間が広がる。
廊下の様相を呈するその空間には、いくつもの扉がついていた。
「刑務所みたいだな。」
そう、彼がつぶやいた瞬間、彼がさっきまでいた部屋の扉が急に閉じた。
廊下を道なりに進むと青色の部屋が構えていた。
成人男性4人分ほどの大きな扉だった。
「どうやって開けろっていうんだ。」
見つめ続けていると、
その扉が急に動き出した。
その瞬間、白い光に空間全体が満たされてゆく。
「目を覚ましたか?」
瞼を開けると、目の前に中年男性が座っていた。
彼は、またしても横になっていた。今回は、ベッドだった。
「よかった、君、自分の名前はわかるか?」
中年男性は、彼の目をのぞく。
先の白い部屋とは、空間的広さは、同じだったが
コンクリート打ちっぱなしの内装は、簡素なものだった。
ぼんやりと天井を眺めていると、天井に広がる染みが模様に見えてきた。
彼は、思い出したように中年男性の顔を見て、
「あ、俺は、、、」
名前がでてこない。
「脳震盪でもおこしているのか?ひどい事故だったからな。」
「事故?」
彼は、突然の感覚に襲われる。
「思い出した、」
「俺は、深川透、、だ。」