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思い出の校舎  作者: 蛞蝓
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思い出

学校には沢山の思い出がある。

初めての友達、休み時間での出来事、運動会、初恋、数え出したらキリがないほどの思い出が次々と溢れてくる。

「ここに来るのも久しぶりだよな」

大学生くらいの青年が横にいる女性に話しかけた。

「そうだね。何年ぶりかな」

そう答えた彼女は懐かしむ様に目の前の校舎を見つめた。

「俺達が卒業したのが12歳だから、8年ぶりってことになるな」

「8年かぁ……、そんなに経ったなんて思えないね」

彼女の言葉を聞いて青年は、「どうして?」と尋ねた。

すると彼女は笑いながら「だって、あの頃のことハッキリと思い出せるもん」と答えた。


学校での出来事は、常に新しいことの連続だ。特に小学生の頃の体験というのは思い出の宝庫だろう。

小学校で体験した事はそうそう忘れることはない。先生に怒られた事すらも思い出になるのだ。

校門をくぐり二人は歩きながら会話を続ける。


「光一は良く先生に怒られてたよね。掃除の時間に箒で遊んで窓ガラス割ったり」

「あー、やったやった。そんでイノセンにゲンコツ貰った」

イノセンとは学校一のコワモテ先生で、光一を始めとしたお調子者達をよく叱ってくれていた先生だ。

「……雪は先生達から可愛がられてたよなー。俺が怒られてる横で笑ってたりしたし」

雪は成績が良くて友達も多く、おまけに可愛かったため?か先生やクラスメイトから好かれる存在だった。

「私は光一みたいに馬鹿やってなかったからね。提出物も出してたし」

「別に提出物の問題じゃないだろ……」

いやぁ、懐かしい。あの頃の話をしだすと話が終わらない。普段はあまり考えないが、やはり小学生の頃の思い出は良いものだったんだなと改めて感じた。

職員室の近くを通ったところで聞き覚えのある声に足を止めた。

「光一君、雪ちゃん。久し振りね〜」

「藤岡先生!」

その60過ぎくらいの先生は、光一たちの一年生の時の担任だった藤岡先生だった。

光一はこの先生の事をおばさん先生と呼んでいたが、藤岡先生は全く怒ることなく光一に接してくれていた優しい先生だった。ただ母親にはその呼び方についてかなり怒られたが。

「光一君もお久し振り。もう本当におばさん先生になっちゃったわね」

そんな先生からはやはり優しい感じが滲み出ている。光一は先生に会ってあの頃の記憶を一気に思い出した。

「いや、そんなことないですよ。先生はあの頃と変わっていません」

「そうかしら?ありがとう。立ち話もなんだし、取り敢えず職員室に入って貰おうかしら。お茶も出すからね」

「ありがとうございます」

二人は同時に礼を行った。

職員室に入るとクーラーの涼しい風が二人の身を包んだ。

「うわっ、相変わらず涼しい〜」

「光一は職員室の掃除は好きだったよね。クーラーが効いてるから」

雪が笑いながら言い出す。

「あと図書館もな。階段掃除も意外とすきだったぞ」

結局涼しいからじゃん、と雪が呟く。

その後少ししてから藤岡先生がお茶を持って来てくれた。二人はありがとうございますと言ってお茶を貰った。

「ほんとに二人とも大きくなったわねえ。光一くんもイケメンになったし、雪ちゃんもすっごく綺麗だわ」

そんな事をニコニコしながら言われ二人は照れくささを覚える。

「今日来てくれたのは成人式の用意で来てくれたのよね。先生達も少し見に行くつもりだから宜しくね」

「はい!楽しみにしています!」

雪が嬉しそうに応える。

今回二人が小学校を訪れたのは、今年の成人式で二人が実行委員に選ばれたという事で、今年の成人式で流す先生達のメッセージや、懐かしの風景を写真で撮ったりしてスライドショーにしたりと、そういった資料を集めに来たのだった。

優等性の雪が実行委員に選ばれた事は理解できたが、光一はどうして自分が選ばれたのか分からなかったが、どうやら雪が光一の事を指名したそうだ。その事について雪に聞くと「面白いから」と言う適当な答えが返ってきた。

「最初は何で俺が実行委員なんかと思ってたけど、何だか楽しみになってきたよ」

光一の顔から自然と笑みがこぼれる。

そんな光一を見て雪は微笑んで、立ち上がった。

「よし、それじゃあ資料集め始めよっか!」


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