第三話:隠密行動
取り敢えず隠密行動をするのだが、僕の場合は普通とは少し違う物になる。
「よっと」
普通に、出来るだけ普通を装って森の中へと入っていく。「マップ」に写っている敵影は20を超える。
この数を全て気付かれずに殺すなど、それこそ小説の主人公でも無ければ無理だーーそれがタダの成功であれば。
僕の動きは正攻法であり邪道。正々堂々と無力化させて貰う。
「【魔弾:睡眠】
横から無造作に相手のこめかみに照準をつけて、余所見をしながら小声で魔弾を放つ。一瞬だけ「うっ」と声を漏らした盗賊は、そのまま森の中で倒れた。
魔弾は【衝撃】とかもあるのだが、そっち高いし発射時と着弾時に音が出るのでこちらの方が使い勝手が良い。
「さて、次……」
僕はまた森の中を進む。
内心はかなりビクビクしているのだが、最も安全なのは堂々と「村人A」であることだ。
さて、向こうが終わる前にさっさと終わらせてしまおう。何人かが固まってるから、4分ぐらいかな……。
さっさと全員片付けたーー内心はかなりビクビクしていたがーー僕は、今、つい先程からパーティメンバーと戦っている盗賊を眺めている。
「どうしようかな……」
このまま何もしなくても、きっとみんなは勝つだろう。何せ4対2だ。伏兵の20人は全員封じてしまったし、万に一つも負ける要素はない。ただ、余り戦闘を長引かせると折角眠らせた奴らが起きてしまう可能性がある。
「うーん……」
しかし、僕が近づこうものなら……まぁ推してしかるべきである。
剣の風圧で吹っ飛び、木に叩きつけられでもすれば骨折、脳震盪で気絶。万が一にでも剣……いや、それを振るう体に当たってしまえばその瞬間に大量失血で気絶が確定する。
「……やっぱいいや」
こういう所で出しゃばるのは良くない。そうだ、良くない。仮に前回上手くいったからと言っても、僕は一度も真っ向から戦ったことなんてないのだから。
下手な自信は破滅を招く。僕はそう肝に銘じて、その場を見守ることにした。
対人トラップなんて無かったんや




