第四話:最弱がどうした
サーティさんの前を走っていた僕は、咄嗟に後ろを振り向き、停止する。
「……ッ」
「サーティ!」
「サーティちゃん!?」
僕の声で気付いたのか、前に居た三人も気付く。だが、気付くのがやや遅れたせいで距離が空いているし、メリアさんの魔法では僕たちを巻き込んでしまう可能性がある。
(サーティさんを……守る!!)
最弱がなんだ。ステータスがどうした。
その程度で恩を捨てる様な人間になるくらいなら、突貫して死んだほうがマシだ。不思議と頭にあったのは恐怖ではなく、闘争心とサーティさん目掛けて突進してくるゴブリンへの怒り。
「【魔弾】ーー!」
「おい!!」
僕が臨戦態勢に入ったのを見て、ライドさんが声を上げる。三人は既に【補助魔道具】が無くても逃げ切れる距離にある。後はこっちでどうにかする。
それが分かっているのか、声こそ荒げたがライドさんは此方へは向かって来なかった。
「【風衝弾】!!」
「きゃぁぁあ!?」
僕はサーティさんの足元の、僅かに後方へ狙いを付けて弾丸を放つ。この弾は反動が大きく、腕が悲鳴を上げているのが分かる。
でも、ここで止まるわけには行かないーー!!
「走って!!」
僕は風に飛ばされるように走ってきたサーティさんの手を掴んで、前へスイング。その反動で僕は尻餅をついた。やばい超痛え。
「え、ちょ」
「早く! 僕は大丈夫だから!!」
「……っ、分かった!」
僕は尻餅を付いた状態でみんなを見送る。大丈夫、サーティさんには握った時に【補助魔道具:身体性能】を持たせておいたからきっと逃げ切れる。
それに、僕にはパーティ全員の場所が分かるアレがある。きっと、どうにかなるだろう。
「……さて」
僕は、横を素通りしていくゴブリンの集団に轢き殺されない様に避ける作業へと移った。
『ホント、ザコどころか完全無視ですよね。まぁいつも通りってことで』
僕は半ば諦めの境地へ踏み入れていた。今の言葉を理解できる人間は、この世界には居ないであろうが。




