第二話:怖がってる暇なんて
僕は集合時間になったのでサーティさんと一緒に宿へ戻ってきた。そこで、リーダーのライドさんに「魔道具とかでサポートが出来ないか」と言うと、ライドさんは
「んー……お前が良いと思うなら良いんじゃねえか? 俺らも助かるし……だが無理はすんなよ? サーティの世話になる回数が増えるだけだ」
ごもっともです。まぁ戦闘が無くても1日数回は回復魔法をかけて貰うんですけどね!
因みに、盾役のルドガーさんや魔術師のメリアさんにも相談した。
「……攻撃は全部受け止めてやるから、支援頼むぞ」
「良いんじゃない? ……ま、無理はしないことね」
メリアさんのそっぽ向きながらこっちをチラ見する仕草がかわい過ぎる件について。
とまあ、そんな訳で村を出て次の旅へ。今度は高原ステージとでも言うべきだろうか?
その途中、僕達はモンスターに遭遇した。
「ルドガー!!」
「おう!」
即座にルドガーさんが前に出て、その後ろにライドさん、そして距離を取ってメリアさん、サーティさんが並ぶ。因みに僕はその更に後ろ。
敵はゴブリンで数は4。ここらの地域で発生するモンスターはやや強力で、しかも数が多い。
「うぉぉぉおおお!」
ルドガーさんが注意を引いている間に、ライドさんが剣で半裸であるゴブリンの胸部を貫く。勢い良く血が吹き出して1匹が戦闘不能になり、ライドさんは即座に後ろへ下がった。
パーティの中で突出するのは基本的に愚策だ。目立った行動をすればヘイトが集中してしまうし、敵に各個撃破して貰いたいので無ければ直ぐに下がった方がいい
「【炎球】!!」
初等魔法【炎球】。一般的な魔術師であればスライムをギリギリ削り切れる程度の物だが、メリアさんが操るソレは直径1mにも上る業火となる。
ってかメリアさん含めて皆さん普通に強いです。でもーーー
「ギャアッ! ギャアァァァアア!!」
来た。ゴブリンはある程度レベルが上がると「呼び声」を使うようになる。近場に居る仲間を呼び出してしまうので、本当なら速攻で全滅させるべきだ。
だが、今回の様にゴブリンが同時に複数体現れるとどうしても時間を稼がれてしまうことがある。
「クソッ!」
舌打ちしながらライドさんが剣を振るい、ゴブリンの頭部にめり込ませる。「切る」ではない、「めり込む」のである。そもそも直剣というのは特殊な物で無い限り切断は出来ない。基本的には急所に勢いを乗せて刺突するのである。
「【索敵】……来るわ! 数は……そんな!?」
「どうした!」
「10……20……いえ、もっと居る!!」
「チッ……退避するか」
「いえ、それは無理ね……完全に包囲されてるわ」
マジかよ、とルドガーさんとライドさんの顔に滅多に見られない焦りの表情が浮かぶ。たかがゴブリンとは言え、多数に囲まれればかなり厳しい戦いとなる。
そんな中で、僕は出番がなくて暇そうにしていたサーティさんに声をかけた。
「サーティさん」
「どうしたの?」
「そのーーーー」
僕が思いついたことを話すと、サーティさんは眉をひそめて「本当に出来るの?」と言う。「当然です」と返せば、サーティさんはライドさん達の元へ向かった。
「あのね? ーーーー」
「……本当に出来るんだな?」
サーティさんから内容を聞いたらしいライドさんは、僕を見て訪ねる。
正直怖いが、自信はある。それに迷っている暇はないのだーーやってやろうじゃないか。
ライドさんはニヤッと笑って、仲間たちを見回した。
「今の作戦、聞いていたな? 確かに成功すれば勝算は十二分にある……行くぞ!」
ライドさんの号令に合わせて、みんなが動き始める。言いようのない感動に浸る間もなく、僕も僕自身の準備を始めた。




