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生まれ変わりはドラゴンで  作者: 椎名 隆次
第一章 転生先はファンタジー世界
11/11

第10話 順序


 お互いの想いを打ち明け、無事に相思相愛と成った僕とアリス。

 祖父のガーランドや、祖母のメルト。

 母のウィンリーがあっという間に根回しをしたのか、夕食に呼ばれた頃には着々と僕とアリスの婚姻の準備がされていた。

 あまりの早業にどういう事か訪ねると、元々アリスを許婚にした時から計画をしていたらしい。

 まだ、兄のハーネストが結婚していないので、今できる準備だけとの事だったが、それにしても親戚筋の公爵家にアリスを養女に出して――などなど、気が早すぎじゃないだろうか?


 だけど、みんなの気持ちがとても嬉しい。

 姉のナナリーなんて、今からアリスの花嫁衣裳(ウェディングドレス)の採寸を始めるくらいだ。


「ドレスの事は任せなさい!! とびっきりのドレスを仕立ててみせるわ!!」


 なんて、自信満々に話していたけど、その前にハーネストの結婚が先だよ?

 相手を探さなきゃいけないけど。

 

 そんな事より神様だ。

 夜、アリスと一緒にお風呂に入って――いや、主と侍女(メイド)としてね?

 頭を洗って貰ったり、背中を流して貰っただけだよ?

 アリスはちゃんと湯浴み着を着ていたし、そりゃ.....濡れた湯浴み着をチラチラ見たけどさ。

 ま、まだ正式に婚姻を結んで無いんだから、婚前交渉なんてしないよ!!

 .....たぶん。


「いらっしゃい、真君♪」


 少女趣味の天蓋付きベットで眠った僕は、またも神様に出会った。

 そこは真っ白な空間でも、応接セットが置かれた場所でもない。

 青空の広がる草原で、時折流れる風が肌に心地良い。

 草花の香りもしっかり感じ、神様から芝生に寝転ぶ様に誘われた。


「アリス君と、結婚するんだね?」

 

 さすがはいつも僕の事を見ている神様だ。

 今日一日まったく声も聞かせてくれなかったから、見ていないのかと思ってたよ。


「はい。神様は、まだ僕の事を打ち明けるのには早いって言ってたんですけど....」


「うぅん。遅かれ早かれ真君は話すつもりだったんだから、結果的には変わらないよ」


 2人並んで寝転んで、そんな会話を交わしていく。

 神様は「おめでとう」と祝辞を述べて、僕とアリスを祝福してくれた。


「そうそう、はいこれ。ちょっと早いけど、2人の婚姻を祝してお祝いだよ♪」


 神様はそう言い、起き上がって二つの包みを手渡してくる。

 身長近くある長物と、1メートルちょっとの長さの中物。

 どちらも紫色の光沢のある、風呂敷みたいな布に包まれている。


「なんですか?これ」


「開けてみてごらん?短い方が真君用。長い方がアリス君用だよ」


 神様に促され、《格納庫(ストレージ)》にアリス用の長物を仕舞い、中物の包みを開いてみる。

 風呂敷の光沢がキラキラひかり、やがて現れたのは一振りの刀だった。


 白塗りの鞘に柄も白い糸で結われている。

 銀の細工が所狭しと装飾されて、鞘に付いた結い紐の先には、数珠の様な緋色の珠と漆黒の珠が1つづつ通されていた。


「これって....」


「うん。真君用の武器だよ。真君は、アリス君と結婚しても旅行を続けるんだよね?」


「そのつもりですけど....」


 何故神様がこのタイミングでこんな物を贈ってくれたのか、真意がわからない。

 いったいどういう事なのだろうか?


「前にも言ったけどね、この世界は殺伐としているんだ。人の命が本当に軽くて、この瞬間にも命を失って死んでいる者達がいる。

 僕は、何でもできると豪語している神だけど、本当はなんでも出来る訳じゃないんだ。

 輪廻(りんね)の輪には――運命には逆らう事ができない。それが、神って者なんだよ」


 どこか遠くを見るような遠い目をして神様が告げる。

 その表情はとても悲しげで、悔しそうにさえ見えてしまう。

 輪廻(りんね)の輪という代物がよくわからないけど、神様ですら運命には逆らえないものなのだと、その時知った。


「だからね、真君。旅先でも何でも良い。ウィル君の目に映る人々を、ウィル君ができる限りでいいから救って欲しいんだ。

 この刀は、その為の力。僕が真君の為に拵えた、神刀『(オボロ)』。

 人の命が霞んで消えないように、願いを込めた一振りなんだよ」

 

 ジッと僕を見据え、神様は一筋の涙を流す。

 とても感動的なこの状況。

 素敵な物を贈って貰い、神様の想いに打たれて僕も涙するのが当然なんだけど、おかしな物を見つけてしまったんだ。

 それは――


「神様」


「....何かな?」


「後ろに置いてあるテレビの横に、水戸○門って書いてあるDVDはなんですか?」


 そう。

 立ち位置的に気が付かなかったんだけど、確かにそこには大きなブラウン管型のテレビと、時代劇物のDVDBOXが置いてあるんだ!!

 大岡○前とか、御家人斬○郎とか、遠山の○さんとか!!

 日本のサブカルチャーに触発されて、諸国漫遊して世直しをする為に突然こんな事を言い出したんじゃないよね!?

 刀って明らかにおかしいでしょ!?

 少なくとも、僕はこの世界に来てから見た事ないよ!?


「あ、アハハ....あ、アレはその....色々研究の為に、ね?」


「ディレクターズカット版とか書いてありますけど?」


「そうなんだよ!! 真君!! 特典BOXは未公開の映像が――」


 ....決定だね。


「神様。有罪(ギルティ)


「アワワワ.....」


 僕に釣られてボロを出した神様。

 うろたえいる様からは、さっきのシリアスムードなんてまったく微塵にも感じない。

 これはやはりお説教するべきだろうか?

 でもまぁ....少なくとも素敵な贈り物をいただいたんだから、これくらいで許しておくか。


「まったく、神様?」


「うぅ....ボクの威厳が....」


 いや、威厳はまだ平気ですよ。

 それよりも、日本のサブカルチャーに染まらないか心配です。


「お祝いの品、ありがたくいただきます。それと先ほどの話しですけど、できるだけ神様の意向に沿える様努力しますよ」


 頭を下げて感謝を述べた僕に対し、神様は落ち着きを取り戻して頷いてみせた。

 こんなどうしようも――訂正。

 こんなおちゃめな神様だけど、ボクは信頼しているし、何より感謝してる。

 神様のおかげでボクはこの世界に来れたのだし、大好きなアリスにも出会う事ができた。

 前世で死んだ僕から考えれば、たった数日で沢山の思い出を作る事ができたのだから。


「うん、お願いするよ♪ それと....これからもよろしくね?真君!!」


「こちらこそ、よろしくお願いします。神様」


 はにかんで笑う神様は、姿通りの少年的な幼い雰囲気を纏っている。

 かく言う僕も、見た目は15~18歳くらいなので、たいして変わらないだろう。

 やがて、神様との楽しいひと時も終わりが来て、ボクは目を覚ました。

 

 朝靄に包まれた外の景色。

 ベットの上で身を起こせば、枕元には一振りの刀が存在していた。

 

「ありがとうございます、神様。大事にしますね」


 そっと持ち上げ抱き抱える。

 LV故かスキル故かわからないけど、ずっしりとした重いという先入観とは違い、白鞘の刀はとても軽かった。





















 ウィル様と想いを確かめ合った翌日。

 昨夜の夕食会では、ご恩多きガーランド陛下や、メルト王妃様。

 それに、ウィンリー様とナナリー姫殿下までもが食事に同席してくださり、私の胃はキリキリと締め上げられる思いでした。

 こんな事になったのも――いいえ、こんな風に考えてはいけないと、ウィンリー様にも言われたばかりではないですか。

 全ては、ウィル様からの寵愛を受けた私が、この先努めて行けば良い話しです。

 

「ウィル様、おはようございます」


 いつもの様に日が昇ると同時に目を覚ました私は、身支度を整えメイド服に袖を通してウィル様に朝のご奉仕に向かいました。

 たとえ婚約したからと言っても、私はまだウィル様の従者兼侍女(メイド)なのです。

 これまで通りお仕えするのが当然でしょう。


 扉を叩いて室内へ歩み入ると、ナナリー姫殿下がウィル様に贈った可愛らしいベットの上にはウィル様がいらっしゃいませんでした。

 代わりに、風を切る音が聞こえて来ます。

 発生源を探し視線を彷徨わせると、部屋の外――バルコニーで剣を振るウィル様の姿を見つけたのです。

 

 上半身裸で黒のズボンを履いたお姿。

 今まで、何度もウィル様の裸は見た事がありますし、先日は....女性用の下着姿のウィル様も拝見しました。

 アレは実に良い物です。

 長い黒髪に中性的なお顔。

 前々からウィル様は男らしく無く――コホン。

 また脱線するところでした。


 一心不乱....いいえ、懸命に剣を振る今のウィル様は、まさに剣豪と呼ぶに相応しい貫禄を持っていらっしゃいます。

 初めて拝見しましたけど、ウィル様ってこんなに素敵な男性だったのですね....

 陰険引き篭もり状態のウィル様とは大違いです。


 私の存在に気付いたウィル様は、爽やかな笑顔で朝の挨拶をしてくださいました。

 キラリと光る白い歯。

 おとぎ話ではないですけど、やっぱり王子様はこうじゃなきゃいけません。


「おはよう、アリス」


「おはようございます、ウィル様」


 空間魔法の第二階位 《アイテムボックス》からタオルを取り出しウィル様に差し出します。

 それを受け取ったウィル様は、「ありがとう」と感謝を告げられ微笑んでくださいました。

 

 な、なんですか?あの爽やかな笑顔は!?

 ウィル様からあんなに強引に迫ってきたくせに、これじゃぁ私だけが意識しているみたいで悔しいじゃないですか。

 せっかく意気込んでお淑やかな淑女の仮面を被っているのに、今にも剥がれてしまいそうです。


「アリス。君に贈り物があるんだ」


 そう言われたウィル様は、中空に黒線を作り出しそこから紫色の包みを取り出されました。

 ウィル様が空間魔法をお使いできる事は、先日の孤児院で拝見していましたけれどやはり驚くものです。

 だって、引き篭もっておられた時のウィル様は本当にダメダメで、修練はおろか自分からは魔法の1つも使わない無気力な方でしたから。

 それが、今は自在に魔法を扱っていらっしゃいます。

 それも私が見た事も無いような高位の魔法です。

 黒魔法に召喚魔法。

 さらに先ほどの剣術。

 400年間も仕えてまいりましたが、まだまだ私はウィル様について知らない事が多そうです。


「これは?」


「神様がね。少し早いけど、僕とアリスの婚姻のお祝いだって贈ってくださったんだ」


 また、神、ですか。

 ここ【竜王国ドラゴニール】で信仰している神は、建国の王『竜神』様だけなのですけれど.....

 ウィル様のおっしゃられる神とは、いったい誰の事なのでしょう?


 ウィル様に手渡された包みを開くと、そこには白銀の長杖(ロッド)が姿を現しました。

 細やかな流れる様な造形がされていて、持ち手の部分に緋色の珠と漆黒の珠が結い紐で結び付けられています。

 ですが、何より目を引くのは頭部分に填め込まれた真っ赤な宝玉。

 初めて持ったはずなのにとてもよく手に馴染み、力強い魔力の流れを感じました。


「なんて凄い....」


 はしたなくも、つい自衛の為に覚えた《杖術》を試してしまいました。

 長杖(ロッド)の中ほどを持ち、《棍術》を併用させてクルクルと身体の周囲を回していると思わず魔力が流れ出て、長杖(ロッド)の先から燐光が溢れます。

 手に持つだけで溢れるこの魔力。

 おそらくですが、《魔力制御》《魔力増幅》などの類の付与効果があるのでしょう。

 これほどの品物は見た事がありません。

 まさか、これを作ったのはウィル様のおっしゃられる神という方なのでしょうか?

 もしそうだとしたら.....

 本物の神、様なのかもしれません。


 あまりの感動に、ついウィル様の事を忘れ長杖(ロッド)を振り回してしまった私。

 ウィル様の視線を感じて、慌てて型を中断して姿勢を正したのですけれど....


「もう止めちゃうの?とってもカッコ良かったのに」


 女性にカッコ良いと言う言葉は褒め言葉なのでしょうか?

 いまいちウィル様の感性は謎です。

 むしろ、カッコ良かったのはウィル様の方で――


 そこで、ふとウィル様が腰に帯びていらっしゃった剣に視線が移りました。

 湾曲した刀身。

 私が持つ長杖(ロッド)と同じ、緋色の珠と漆黒の珠が鈴の様に付けられた結い紐。

 もしかして、それも神という方が?


「ん?ああ、この刀も神様にいただいたんだ」


 私の視線に気付いたウィル様が、鞘から刀身を抜き出し見せてくださいました。

 それは、長杖(ロッド)と同じ材質の白銀色の金属。

 ダンジョンにやって来る冒険者が持っていた刀と言われる形状をしていて、ウィル様も刀と言われたので同じ武器なのでしょう。

 それにしても、美しいです。

 波打つ波紋が鋭利さを演出し、さぞや価値ある品物なのだと理解させます。

 もしかしたら、この刀と長杖(ロッド)は、2つで1つの夫婦を表しているのでしょうか?


「僕の持つこの刀は、銘を神刀『(オボロ)』って言うんだ。アリスが持つ長杖(ロッド)は、神杖『月読命(ツクヨミ)』。

 同じ材質でヒヒイロカネって言うみたいだよ?神様がわざわざ僕達の為に拵えてくれたんだって」


 嬉しそうに話すウィル様。

 余程、神という方に心酔されているのでしょう。

 かく言う私も、これほどの品物を作り出せる方に興味があります。

 

 ウィル様に感謝と神という方にお礼をお願いして、ご一緒に朝のお風呂へと向かいました。

 湯浴み着に着替え、駄肉をなんとか押し込む事に成功し、ウィル様にご奉仕したのですけれど....


「ウィル様?痒いところはございませんか?」


 頭や背中を洗いながら質問をします。

 ウィル様はどこか上の空で答えられるのですが、チラチラと私の駄肉を見詰めてくるのです。

 私にとっては重いだけで、身体のラインを崩す駄肉なのですけれど、どうやらウィル様は私の胸が好きみたいです。

 やはりウィル様は変わっていらっしゃるのでしょう。

 絶大な力を持つ魔竜族にとって、重荷になるこんな胸がある女性より、スレンダーな女性の方が好まれるというのに。


 ウィル様と想いを打ち明け通じ合った今、2人きりというのはとても楽しい時間に成りました。

 以前とは違い今のウィル様はとても表情豊かになり、私の話しにも耳を傾け、時には色々な雑学の話しをしてくださいます。

 ま、まだ正式に婚姻は結んでいませんから、ね、寝屋を共にする事はありませんけど....

 い、いつか....そう、いつか私もウィル様と官能的な夜を.....


 そんな情欲に塗れた事を考えていたからでしょうか、ウィル様とご一緒に向かった朝食会で、私は人生で2度目の危機に陥ってしまったのです。





















「すまぬ、ウィルよ!!」


 朝食を食べようと王城の食堂に赴くと、先に来ていたガーランドが、開口一番謝罪をしてきた。

 いったい何事かと一緒に来たアリスに問い掛けるが、アリスもわからなかったみたいで首を傾げていた。


「あの、おじぃちゃん?いったい何の事?」


 昨日の夕食の時と変わらず、常に笑顔を絶やさずニコニコ笑顔のメルトに促され、ウィンリーの傍に用意された椅子に腰掛ける。

 アリスは婚約者と成っても相変わらず侍女(メイド)の様に尽くしてくれる。

 ウィンリー曰く、「正式に婚姻を結ぶまでは、アリスはウィルの侍女(メイド)なのよ」だそうだ。

 まぁ、お世話をしてくれるのは嬉しいし、ずっと傍に居てくれるなら僕にも不満はない。

 できればもう少し距離が縮まると良いんだけどね。


 頭を下げていたガーランドが顔を上げて、メルトが食事係りの侍女(メイド)へ朝食を運ぶように促す。

 埃も立てずに足早で立ち去った侍女(メイド)達を一瞥し、ガーランドが訳を話し始めた。


「実はの、ずっと忘れておったのだが――」


 嫌な予感を感じつつ、すまなそうに話すガーランドの話しを聞いた。

 それはなんとも重い話しであり、僕とアリスにとっては、ある意味試練の様な内容だった。


「――という訳でな。ウィルには、他に9人の許婚が居るのだ」


 唐突過ぎて思考が追い付かない。

 後ろに控えるアリスの顔を覗けば、あまりの話しに頭から煙を立てて硬直していた。


「つまり、次期国王のハーネストお兄ちゃんは魔竜族から妃を娶る事が当然で、他の魔族――十支族の王女と第二王位継承者の僕は、関係維持の為に政略結婚させるつもりだった、と?」


「うむ。これは慣例でな。3万年に一度、魔族の中でも特に力を持ち、古き血筋の我が魔竜族へ十支族が血縁を差し出す決まりになっているのだ」


「その、3万年に一度が僕の代だった、と?」


「その通りだ。前代はワシの祖父だったな。第二子だった故に王位こそ継いでいなかったが、豪気な方でワシも尊敬する(ドラゴン)だった。

 だが、なにぶん女癖が悪くてな....十支族の姫君だけでは飽き足らず、侍女(メイド)にまで手を付けておったな。

 幸いな事に、魔竜族は他の種族と子を設ける事ができぬ。

 今居る公爵家は、ほとんどがその侍女(メイド)との血縁だと言うから凄まじいだろう?やはり(オス)として生まれたからには、夜も強くなければな!!」


 それって、男として最低なんじゃ....


「それでね、ウィル?問題というのはアリスの事なの」


 さすがはウィンリー。

 朝からバカな事を大声で話すガーランドの事なんて華麗にスルーしている。

 見習わなければ。


「アリスの事?」


「ええ、ウィルはアリス1人とだけ、添い遂げるつもりなのよね?」


「はい。僕は、アリスだけを愛し生涯共に居ると誓いました」


「ウィル様....」


「ウフフ♪母として、アリスにはちょっと妬けてしまうわ♪」


 手に持つ扇で口元を隠し、嬉しそうに眉尻を下げるウィンリー。

 固まっていたアリスがいつの間にか動き出し、アタフタと慌てる様は見ていてとても楽しい。


「それで、だな。ハーネストの事は一先ず置いておくとして、このままではウィルとアリスの婚姻を各国に通達できないのだ」


「それは....」


「わかっておる。ウィルが慣例を嫌っている事などな。

 ワシの言い付けを守り、ダンジョンを造り上げた事は称賛に値する。

 もっとも、人族の女を捕まえ性技を磨いたかどうかはこの際どうでもよい事なのだ。言い訳など如何様にもできるからな」


 たぶん、ガーランドは気付いている。

 僕が、人族の女性に手を出していない事など。


「で、だ。ウィルには十支族の長に会い、ウィルの思うがままに真意を伝えて来て欲しいのだ」


「納得されるでしょうか?」


「納得などどうでもよい事だ。ただ、魔竜族の王子がわざわざ訪れたという事実さえあれば、後はワシがなんとかする。

 なに、ワシ等は誇り高き魔竜族。他の氏族もワシ等の決定には逆らうまい」


 ガーランドはそう纏めて盛大に笑う。

 隣に座るメルトも笑みを浮かべ、ウィンリーが補足するように語った。


「ちょっと移動が大変だけど、王家の外航船を使ってもいいし、飛竜隊に連れて行って貰うのもいいわ。なんならドラゴンらしく《竜化》して飛んで行くのもいいわね。

 先触れはもう手配してあるから、ウィルがいない間に私達もハーネストの妃探しをしておくわね」


 僕とアリスのせいで逃げ道を塞がれ、結婚を急かされるハーネスト。

 申し訳ない気持ちもあるけれど、僕とアリスの為に礎と成って貰おう。

 

 それにしても船に飛竜か。

 ドラゴンライダーみたいに背中に乗るのかな?

 っていうか、《転移門》で飛べないの?


「まぁ、そうだな.....500年ほど掛けて行って来るといい。ちょうど婚前旅行で良いではないか!!」


「そうですね♪ 楽しそうだわ♪」


 いや、待て。

 気が長すぎやしませんか?

 これだから、長寿の魔竜族は....

 価値観が訳わかんないよ!!


「まずは吸血鬼族の下へ行くのが良かろう。午後になれば婿殿とハーネストもあそこから戻って来るからな」


「ええ、もしかしたら救援の相談をされているかもしれませんからね」


 ん?話しがおかしな方向に向かっているぞ?

 救援って何の事だ?


「おじぃちゃん。お母さん。救援ってなんの話しですか?」


「ん?ああ、それはな――」


「内乱が起きているらしいのよ」


 内乱?吸血鬼族で内戦でもしているって事?

 僕、今からそんな危険地帯に行かされるの?


 というか、ウィンリーはガーランドの話しを割って入るのが好きだな。

 ほら、ガーランドが話しを横入りされて落ち込んでるよ?

 メルトが慰めてるけど。


「それって危ないのでは?」


「危ないだと?ワシ等魔竜族に危ない事などありはしない!!」


 随分と豪気な事を言うね。

 まぁドラゴンより強い人なんて居ないだろうけどさ。


「大丈夫よ、ウィル。そこには、カーラ様が居るのだもの。滅多な事なんて起きはしないわ」


「ウィンリーの言う通りよ。カーラは吸血鬼の真祖。殺したって死なないのだから、心配なんてしなくても平気よ」


 母娘二代で笑っているけどさ、心配なのはそのカーラって人じゃなくて、僕とアリスの事だよ!!

 っていうか、真祖って....

 つくづくファンタジーだな。


 その後、不安いっぱいな僕とアリスを置き去りにして、和やかに朝食が行われた。

 そこで教えられたのだが、僕のもう一人の許婚の名は、王女ルイーズ・ドヴィッシュ・フロム・ヴァンパイア。

 真祖にして女王の、カーラ・ドヴィッシュ・フロム・ヴァンパイアの実娘だそうだ。

 ルイーズには兄はいないが姉が居て、次代の女王は姉の方が継ぐらしい。

 第二王子の僕が言うのもなんだけど、呈の良い厄介払いにしか聞こえない。

 王族や貴族なんてそんなものらしい。

 親の為に全てを捧げるのが子の務めで、それは絶対なのだと。

 そうは言いつつも、僕の我が侭を聞いてくれるんだから、ガーランドやメルト。

 それにウィンリーはとても優しいと思う。

 朝食の席にナナリーが顔を出さなかったのは、なんでもアリスの為に徹夜してドレスをデザインしていたそうだ。

 何をそんなに急いでいるのかわからなかったけど、義妹ができて嬉しいんだって。

 アリスも満更でもない表情をしてたから、ま、いいか。






















 アルトやハーネストが戻って来てからとは言っても、他国へ訪問に行く事に変わりは無いからと、王子としての身形を整える為に服や失礼にならない程度の装身具が必要なんだそうだ。

 ガーランドが「用意する」と言ってくれたのだけれど、既に移動手段を頼る事になっているからやんわりと断った。

 もちろん、断ったのは僕じゃなくてアリスだ。

 2人で歩む為に、少しづつ夫婦(めおと)作業をしたいんだって。

 それに、将来ハーネストが無事に国王を継げば、僕とアリスは晴れていち公爵に成る。

 王国からの援助はもちろん無くなるし、今のうちからそういう事に慣れておく必要もあるだろう。

 だから、2人で住処であるダンジョンに戻ってきたという訳。

 

「おかえりなさいませ。ご主人様、アリス様」


 食堂に《転移門》で帰ってきた僕達を出迎えたのは、少し前まで冒険者をしていた侍女(メイド)のエイナ達だ。

 なんでも、先にピアス型の通信用魔道具でアリスから帰還を受けていたらしい。

 そんなものを持っているなんて、僕は知らなかった。

 アリス曰く、「第二宝物庫には高価な武器や防具。それに魔道具を収めてある」らしい。

 僕が前に入った宝物庫は第一宝物庫で、そこには金銀財宝だけを別けて仕舞ってあるんだって。

 ダンジョンの事を全てアリスに任せていたから、ウィルさんは知らなかった訳だ。


 ついでだからと第二回【魔竜の試練】案内ツアーをアリスが買って出てくれて、僕は2人仲良く手を繋いで散策を始めた。

 正式に婚約者(フィアンセ)と成ってから、アリスは少しだけ大胆になった。

 もちろん、家族の前でもそうだけど、人前では今まで通り主と侍女の関係だ。

 転機となったのは、神様からの贈り物を渡した時かな?

 僕から神杖『月読命(ツクヨミ)』を受け取ったアリスは、とても嬉しそうにブンブン振り回していたしね。

 「カッコイイ」って言ったんだけど、今から思えば女性に対してカッコイイってどうなんだろう?

 でも、本当にアリスはカッコ良かったんだ。

 

 食堂でエイナ達から不在の間の簡単な報告を受けて、アリスがそれに関連した指示を出していく。

 何もしないというか、できない僕はちょっと情けない?


 その後は訓練場に顔を出して、侍女隊と名付けられた侍女(メイド)業並びにダンジョン防衛の職務に抜擢されたフェリス達40名の侍女(メイド)達に挨拶をした。

 エイナ達との違いは、侍女(メイド)業と戦闘どちらに主軸を置くか。

 前者はエイナ達で、緊急時にはエイナ達ももちろん戦う。

 一方のフェリス達は、まだLV自体が低いのでそこから修練しなきゃいけないらしく、ダンジョン防衛の戦力としてはカウントできないそうだ。

 この前スクワットしてたのもそういう理由なのか。

 LV上げだけど、何も魔物や魔獣と戦うだけじゃなくて、日々の修練でもLVは上がるんだって。

 それでも、LV10を越えると上がりにくくなるから強くなろうと思うと、結局は冒険者や軍に入って兵士・騎士になるのが一般的だそうだ。

 命懸けの仕事ならではで、結構稼ぎが良いらしい。

 お金の力で学校に通って軍部に入る者も居れば、地道に冒険者として地力を上げてそこそこ名が売れてからスカウトを待つ人も居るみたい。

 「お金を稼ぎたいなら後者がオススメです!!」って、フェリスに推奨された。

 別に僕は冒険者に成るつもりはないんだけど....


 あ、アリスがフェリスを叱り始めた。

 うん、見なかった事にしよう。

 怒ったアリスは怖いな。気をつけよう。


 怪我の無いようにだけ注意して、せっかくだから次はダンジョン1階層から潜って行く。

 僕の住処である【魔竜の試練】は人口ダンジョンなので、中に居る魔物達は契約した者だけだ。

 元々は【竜王国ドラゴニール】の外れに住んでいた子達で、このダンジョンの最下層に設置されている『ダンジョン・コア』によって使役されているらしい。

 古代魔法文明の遺物で、【竜王国ドラゴニール】では家宝にあたる代物なんだって。

 そんな貴重な物を使っていたなんて....

 それでも、まだいくつか王城の宝物庫に保管してあるから壊れても大丈夫だそうだ。

 その『ダンジョン・コア』は、魔物との契約だけではなく、地脈から魔素(エーテル)を吸い上げて魔石を作る力がある。

 だから、ここの魔物達が倒されても死なないし、倒すと魔石がドロップする。

 魔石は電気の無いこの世界ではとても重要で、ほとんどの生活必需品に使われている。

 照明もそうだし、火を起こすのもそうだし、純度の高い魔石は水すらも作り出す事ができる。

 全て魔道具という、土魔法と付与魔法の使える道具製作士(アイテムクリエイター)が作り出した物。


 人族が住む【ティマイオス大陸】で人口ダンジョンがあるのは、こことあと1~2個しか無いらしい。

 いつか行ってみたいものだ。


 今日も【アドリアーヌ王国】の子爵家の騎士団一行がダンジョン探索に来ている。

 長大盾(タワーシールド)全身板金鎧(フルプレートアーマー)で武装した10人ほどの重戦士を壁役に、隙間から長柄の槍で攻撃を加える槍士。

 その後ろから隊列を組んで弓矢や攻撃魔法を駆使する後衛部隊。

 連携を指揮するのは、頭に真っ赤な羽の付いたちょっと派手な鎧兜の騎士。

 相対するのは全身青い体毛を纏った猪頭のオーク達。

 LV11くらいの集団だから、LV20代前半の彼等なら問題なく倒せるだろう。

 別にオーク達がやられても魔石を残して消えるだけで、死ぬ訳じゃないから心も痛まない。

 さてさて、せっかく会ったのだから挨拶くらいはしておこうか。


「こんにちは。頑張ってますね」


 アリスを後ろに従えて、指揮官らしき派手派手な騎士に話しかける。

 オーク達を殲滅した騎士達は、ギョッとした顔でこちらを振り返った。


「な、何者!?....でしょうか?」


 侍女(メイド)を従えた僕の格好を見て、横柄な態度から一変して低姿勢を取る指揮官。

 今の僕は例の白いマントを羽織っているから、ダンジョンに不釣合い釣りな変な人だろう。


「これは失礼しました。このダンジョンの主、魔竜族の第二王子のウィル・ア・テラと申します」


 警戒されない様に礼儀に気を付け、胸に手を当てて会釈する僕。

 指揮官は驚いて目を丸くして、魔石を拾っていた騎士達は突然の事に震え出した。

 

 全身板金鎧(フルプレートアーマー)って音がうるさいんだね。

 戦闘中は気にならなかったけど、戦闘音が止んだ今は、震えるとカチャカチャ音がしてるよ。


「ひ、引き篭もり王子!?」


 またその異名か。

 アリスと婚姻を結んだら、僕は王子じゃなくなるからその異名も無くなるかな?


 恐怖に顔を引き攣らせた彼等に、戦闘の意思は無い事を告げる。

 指揮官役の彼は、【アドリアーヌ王国】所属のハイゼル・リンデ・フォルモード子爵の小飼い騎士だそうだ。

 名をエトウィン・ファーラムと言い、LVは31。

 ここ数日【都市ロハス】を拠点にダンジョンにアタックを繰り返し、王国軍所属の騎士団のLV上げと魔石収拾をしているんだって。


「まさかウィル王子と会えるとは夢にも思いませんでした」


「あはは....ここは僕の家ですからね」


 次の戦闘へ向けて休息する彼等に便乗し、第5階層に設けた安全地帯の陣へとお邪魔した。

 安全地帯と言ってもただの小部屋で、出入り口が1つだけなのでそこさえ警戒しておけば安全なだけだ。


 命を預ける武具の手入れを始める騎士達。

 かなり早めの昼食を取る為に、煮炊きを始める者も居る。

 この騎士達の印象は、結構明るい?

 こんな穴倉で戦闘しているというのに、笑顔や笑い声が絶えないのは良い事だね。


「何階層まで潜られる予定ですか?」


「目標は10階層突破なのですが....」


 ん?なにやら歯切れが悪いな。


「アリス。10階層って何が居るの?」


「10階層にはミノちゃんが居ますよ」


 ミノちゃん?

 ああ、牛頭人(ミノタウロス)か。

 そういえばエイナが戦って負けてたっけ。

 あれ?LV23のエイナが、どうやって10階層まで行けたんだ?


「おそらく、魔物と戦わずに縦穴を使ったのでしょう。功を焦る冒険者がたまに無茶をしますので」


 質問した僕にアリスが答えてくれた。

 なんでも、各階層には下階へ通じる縦穴があるそうで、それを使って一気に階層を潜る事ができるらしい。

 LVの低いエイナは結構無茶をしたんだね。


 ご馳走になったお茶のお礼を告げ、エトウィンと騎士団とお別れをした。

 冒険者とはまた違った意味で気の良い騎士達に、怪我をしないよう言ったんだけど....


「怪我も勲章なんですよ!! ウィル王子!!」


 なんて返されてしまった。

 不覚にも、ちょっとカッコイイなんて思った。


 その後アリスとまた手を繋いで散歩じゃないけど、ダンジョンを潜る。

 言葉は通じないけど、出会った魔物達はとても友好的で、自分達が作った住処を自慢された。


 それにしても、ブモブモ言う牛頭人(ミノタウロス)はまだ良いとして、20層に居た三つ首のワンコ。

 三頭猟戌(ケルベロス)は、さすがに倒せる人が居ないんじゃないだろうか?

 LV50超えてたよ?

 

「アレくらい倒せないようでは、ウィル様にご拝謁する資格はありません」


 だってさ。

 僕なんて呑気に【都市ロハス】に出入りしているっていうのにね。

 よくわかんないや。





















 午前11時を過ぎた頃、最下層の住居部分へ戻った僕とアリスは、第二宝物庫へと向かった。

 第一宝物庫と同じ巨大な鉄扉で守られた部屋。

 事も無げに扉を開いた僕に対して、アリスは目を瞬かせた。


「ん?どうしたの?」


「い、いえ....なんでもありません....」


 いったいどうしたんだろうね?アリスは。


 アリスを伴って入った第二宝物庫は、内部に沢山の棚が設置されていて、黄金の山が築かれていた第一宝物庫とは勝手が違っていた。

 《魔力感知》が教えてくる、強い魔力の流れ。

 それは、棚に置かれた花瓶やらの小物。

 壁に立て掛けられた数々の武器や防具からも如実に感じる。

 おそらく、これが魔道具の類なんだろう。

 こんな楽しそうな場所があるなんて、《真偽の神眼》を使いまくって遊べそうだ。


「ウィル様?こちらの装身具はいかがでしょうか?」


 アリスが指し示した一画にあったのは、ペンダントや、ロザリオや、カメオなど。

 他にもシャツに使うカラーステイやピン等が無造作に置かれていた。


「ん~...僕にはコーディネイトができないから、アリスに任せてもいい?」


 入院生活の長い僕に、センスなんてものは無いと思うのでアリスに任せる。

 アリスがいつも用意してくれる服は――まぁ、白いマント以外はおしゃれだと思う。

 そ、それに、しょ、将来一緒に住んだら、奥さんに服とか決めて貰うのって夢じゃない?


 アリスが嬉しそうに装身具を選び始めたので、ホッと胸を撫で下ろして僕も他の品物を見始める。

 ここにあるのは、ダンジョンへ来て負けた冒険者や騎士達の代物だけではなく、ガーランドやウィンリーなどからも贈られた品が混じっているそうだ。

 なんで一緒くたにしているのかわからないけど、たぶん、使う時に罪悪感を感じないように....かな?

 だって、こんな先祖伝来と思われる高価なペンダントとかあるし。

 なんで失うかもしれないのにダンジョンなんかに持ってきたのかわからない。

 お守り代わりなのかもね?


 ペンダントを見ていて、ふと先日【深緑の洞窟】で拾った翡翠の付いたペンダントトップとチェーンを思い出す。

 《格納庫(ストレージ)》から取り出してしげしげと眺めたけど、やっぱり何の変哲もない装身具だった。

 

 ん?待てよ?

 魔石を使って魔道具が作れるなら、これを材料に魔道具ができるんじゃないか?


 思い立ったが吉日と、もう1つの戦利品銀製の短剣を取り出して2つを並べる。

 魔石の代わりは適当に置いてあった魔道具のカメオを使って、取扱説明書(マニュアル)に従い土魔法と付与魔法を合体させて唱えた。


「《分解(アナライズ)》《精製(ピュリファイ)》《創造(クリエイト)》《構築(コンストラクタ)》《変形(トランスフォーム)》」


 分解で素材のインゴットに作り変えて、精製で不純物を取り除き精度を上げる。

 さらに創造で何を作るかイメージして、それをどういう手順で構築するか考える。

 最後に変形でインゴットを作り変えれば、僕のイメージ通り完成!!


 できあがった物を手に持って見詰める。

 別に熱くなったりしていないのが、とても不思議だ。

 初めてだけど、思い通りのできにかなり満足!!


「うぃ、ウィル様?い、今のは.....」


 集中してたから気付かなかった。

 いつの間にか装身具を選び終えたアリスが、僕の傍でジッと手元を見ていた。

 その表情は驚きを隠せないと言った感じで、ただただ呆然としている。


「アリス、腕を出して」


 有無を言わさずアリスの左手を掴み上げ、そこへ出来上がったばかりの品物を通す。

 それは純銀製の腕輪で、両面対になるように、翡翠と魔石が填められている。

 腕輪の外円部には細かな枝状の流線が彫り込まれ、一目で手の込んだ代物だとわかるだろう。


「あとはこれに.....固定(フィクセイション):《属性耐性》《状態異常耐性》」


 元と成った魔道具の魔石では、2つの効果を固定するのが精一杯だった。

 アリスに頼んで高純度の魔石を用意して貰えばもっと良い効果を付与できただろうけど、初めて作った代物ならこんなものだろう。

 

 茫然自失状態のアリス。

 そっと頬に口付け、にこやかに笑顔を向けた。


「初めて作った物だけど、受け取ってくれるかな?アリス」


 状況の理解できていないアリスは、何度も腕輪と僕の顔を繰り返し見詰め、やがて何かを諦めるかのように溜息を吐く。


「....ウィル様は、規格外過ぎます。ですけど....ありがとうございます。大切に、大事にします」


 なにやら言いたそうな感じだけど、笑ってくれたからいいよね?

 

 そして、ガーランド達と約束していた昼食の時間が来てしまい、僕とアリスは《転移門》で【竜王国ドラゴニール】へと戻る。

 アリスの腕には、キラリと光る純銀製の腕輪が嵌められているのだった。


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