表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/31

3:『ナイト』と『サピィ』

 夜もだんだんと明けてきたのか、暗闇と言っても差し支え無かった時間帯を抜け、僕の目でもある程度は周りが見えるようになった。

 今まではナイトウルフの尻尾を片手に持ち、先導してもらうような形で歩いていたが、もう大丈夫だろうと手を離す。急に尻尾にあった感覚が消えたからか、ナイトウルフがちらりとこちらを見てきた。もういいよ、と言ってやると、何事も無かったかのようにまた歩き出す。

 そこで、ツンツンと何かに頬を突つかれた。何だと思い視線を向ければ、そこには小さな女の子が。右肩に座る彼女は、僕の反応を見てクスクスと笑っている。



 名称 スピリット レベル3

 状態 テイム

 スキル 『精霊の囁き』


 筋力G

 体力G

 俊敏G

 魔術E

 精神E



 彼女は、先程テイムしたばかりのモンスターだ。多分、精霊のような存在なんだろうとは思うが。スキルにも精霊って言葉があるし。

 どうやら暗闇で目が利いていなかった時から僕の周りを飛び回っていたらしく、たまたま光る葉っぱの近くに行った時にその存在に気が付いた。

 興味本意で近付いてきたのだろう。これで敵意があって、尚且つこちらの戦力を上回っていたのなら、ナイトウルフが反応していたはずだ。

 事実、彼女は敵意なんて欠片もないみたいだし、ステータスも、スキルを持っている以外は警戒に値しない。

妙に気に入られたみたいなのでそのままテイムして、今に至る。

 見た目は元気な女の子。背中に片方二枚、合わせて四枚の透明な羽を持っている。

 癖っ毛なのか、所々で跳ねた髪はショートより若干長め。勝ち気そうな瞳は蒼い光を反射させていた。

 全体的にボーイッシュな感じの精霊である。


「あ」


 とん、と僕の肩から飛び降りた彼女は、ナイトウルフにそのまま突撃を仕掛けた。ぼふんと黒い毛並みに埋もれた彼女はご満悦な顔をこちらに向けている。別に羨ましくなんかない。

 ナイトウルフは我関せずを貫き通すつもりか、背中で暴れる彼女には全く反応しない。と、言うよりかは呆れて気にしないようにしているように思えた。大人だ。

 そうこうしている内に、森の終わりが見えた。逸る気持ちを押さえ付けながら突き進む。


「……お手柄だね」


 森から出て、視界の開けた場所に出る。そこには、一流れの大きな川があった。実は、ナイトウルフに水の匂いを追わせていたのだ。

 元より夜中に狩りを行うモンスターだ。普通の狼よりも嗅覚に優れている……かは、わからないけど。こうして見付けることが出来るのだから、少なくとも悪くはないと断言できる。

 ナイトウルフの頭をワシワシと撫でた僕は、川に近付いてその流れに手を差し込んだ。見た目は汚くは無い……けれど、飲むには結構勇気がいるな。


『キレイ』

「ん?」


 不意に聴こえた声。どこからだ、と視線をさ迷わせる。

 と、目に入ったのは、水と戯れる精霊の姿。無邪気に、楽しそうに水を蹴り上げる彼女。


『キレイ、キレイ』


 この声は、彼女から聴こえてきている気がする。厳密に言えば、音として聴こえている訳ではなく、頭に直接響いてくるような感じだ。


「キレイ……この水が?」


 反応してくれたのが嬉しいのか、彼女はコクコクと頷きながらこちらに飛び付いてきた。


『みず、キレイ』

「見た目が、かい?」

『みためも、なかみも。ぜんぶぜんぶ』


 ふむ。

 どうやら、彼女とは意思疎通が出来るようだ。多分、彼女が持つスキルによるものだろう。若干言葉足らずなのは否めないが、まぁそれには目をつぶろう。

 それよりも、今は。


「綺麗なのか……。じゃあ、町があるのは下流の方になるのかな」


 彼女の言葉を信じるとして、川の上流にはおそらく町が無い。あるとするならば、下流だ。


「少しも汚くないの?」

『キレイ』

「そか」


 綺麗か汚いかの極論二択しか無さそうな感じだから、本当にこの水は綺麗なのだろう。川の付近に町があるとして、その町が上流にあるのなら、そこまで綺麗な水は流れてこないはずだ。

 次の目的が決まった。これからは、出来る限りこの川を下っていくことにする。

 と、そこで。

 ナイトウルフが何かに警戒するように唸り出す。どうやら、他のモンスターに目を付けられてしまったらしい。

 精霊さんが水に濡れたまま僕の服の内側に潜り込むと同時に、そのモンスターが姿を現した。



 名称 イビルアイ レベル9

 スキル 『ホークアイ』


 腕力E

 体力E

 俊敏D+

 魔術D+

 精神E



「げっ、イビルアイ」


 厄介な奴が出てきてしまった。しかも、ナイトウルフよりもレベルが高い。

 その姿を一言で現すなら、羽の生えた目玉。まぁ、よくある感じのグロテスクモンスターの初級編的な見た目。

 こいつの何が厄介かと言うと、何を隠そうコイツらはとにかく群れる。標準スキルなのか、イビルアイが元からもっている『ホークアイ』、つまり鷹の目と言うやつで、常に仲間を見失うことなく行動しているのだ。

 コイツと出会った時の常識、『一匹見たら十匹はいる』は、記憶上最悪の虫を彷彿とさせて僕の身体を震わせた。


「ナイトウルフ!」


 こうなったら先手必勝。数が数を呼ぶ前に、今いる奴等を速攻で潰す。

 ナイトウルフが僕の声と同時に襲い掛かった。

 爪がイビルアイの目玉を縦に引き裂き、鋭い犬歯が瞳に突き立てられる。

 数こそ厄介なイビルアイだが、強さは然程でもない。現に、僕の蹴りでも普通に倒せる。シンクロありきの力ではあるが。


『たくさん』

「え?」

『みずのむこう』


 五匹程イビルアイを葬った時に、服に潜り込んでいた精霊さんが川の向こう岸を指差していた。

 たくさん。沢山のイビルアイがこちらに向かっているってことか。

 仕方がない。やってられないから逃げるとするか。


「逃げるぞっ! 走れ!」


 イビルアイを貪っていたナイトウルフが、僕の声に反応して走り出す。目玉食うなよ……。良いけどさ。

 今は取り合えず、イビルアイから逃げることを優先するとして、そうだな。

 この先で町が見付かったなら、そこで一休みしてから、王都への旅路を再開するとしよう。どうせここらのモンスターはレベルが10あれば精々と言ったところだ。僕が指示を出せば、レベルが低いナイトウルフでも充分に対応出来る。

 よし、しばらくはこのパーティで行くとするか。戦闘担当ナイトウルフ……面倒だな、ナイトで良いか。

 精霊さん……こっちはスピリットだから……スピィ。言い辛いな、サピィにしよう。癒し担当決定。


「宜しくな、ナイト。サピィ」


 伝わったかどうかはわからないが、ナイトは走りながら吠えて返してくれた。

 サピィは……なんかくねくねしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ