【番外】君と一緒のクリスマス。
フレアとエンの、クリスマス。
「ねぇ、エン。クリスマスって知ってる?」
「……くりすます?」
フレアは和やかに微笑んで、隣に座っているエンの手に、自身の手を重ねる。
手の平から伝わる体温は
冷たい雪を、溶かしそうな程暖かくて。
少し照れながら、彼女は続けた。
「神様の誕生日だから、大切な人と一緒に過ごしたり、贈り物を贈ったりする日なんだって。……昨日、教えてもらったの」
「……そんな日が、あるんだ。
なら……君はここに居ちゃ、駄目なんじゃないの?」
途端に
フレアはコロリと表情を変え
ふてくされたように顔を背けた。
重ねられた手に力がこもる。
そんな彼女の様子に
エンは慌てて次の言葉を探し始めた。
だが、やはり浮かばない。
彼には、フレアが怒った理由すらわからないのだから。
とりあえず謝ろう。
そう思い、エンが口を開くより先に
フレアは、呟いた。
「私は、君と一緒に居たかったんだよ……?
駄目な訳、ない」
「え……あ。
、俺も……一緒に居れて、嬉しい」
「本当に?」
「……本当」
そっか。
と、フレアの楽しそうな声が聞こえて。
エンは、くすりと笑う。
ーー相変わらず、表情がよく変わる。
彼女の表情を変えているのは
紛れもない、彼自身だというのに。
すると
フレアはエンの笑顔と、握った手を交互に見つめ
次の瞬間。
「メリークリスマス」
ちゅっ。
「…………」
彼の両目が見開かれるが
フレアは、触れ合う唇を離そうとはしない。
数秒の沈黙。
ゆっくりと、雪が約束の樹へ降り積もる。
ーーこのまま時が、止まればいいのに。
彼女はぼんやりと、そう思った。
不意に、唇が離れる。
驚いているのか、混乱しているのか
硬直しているエンに向かって、フレアは言った。
『来年も、一緒に居ようね』
これはまだ、二人が幸せだった時の物語。
二人の口調、大丈夫ですかね。
すごく心配です。