記憶喪失か!?
気がつけば
オレは学校の踊り場に
無惨にも倒れ込んでいた
それは特に
意図的な意味も無く
必然的なことだろうが
何があったのかを
オレは知らないので
あるからして
記憶が飛んだものと
思われる。
しかし、そんな
状況下におかれている
ことよりも気になるのが
何故に、
倒れ込んでいたであろう
オレを保健室に
運ぶなり声をかけるなり
しなかったのかという
ことだ。
え?何?総スルー!?
などと心底叫びたい。
「お!」
とかなんとか
思っていると
階段から下る人影が
オレを指差し声を上げた
その顔に覚えはない。
「探したぜおい」
探されてたぜおい。
「あの?何か用で?」
未だ自分の状況が
イマイチ分からんのに
すらっと言葉が出て
自分でも驚愕する。
「おいおいおいおい」
おいが多いぞおい。
「まさか忘れちまったのかよ?」
そのまさかですが。
「えと。本当に何のことか分かりません。そしてオレはあなたが誰なのかも分からないのですが」
至って丁寧な口調で
返答を試みた
オレだったが
それが逆に
相手のしゃくに
触れてしまったのか
冷たい目であしらわれる
「まったく。しらばっくれるのは昔からお得意だな」
仕方なく
オレの過去を探るが
記憶が何一つ
出てこない。
どういうことだ!?
オレは不可抗力的に
頭を押さえ悩んでみる。
しかし全く何も
出てこない。
記憶喪失か!?なんて
バカげたことを
思い付くが
どうやらそうらしい。
根拠とすれば
自分の名前すら
忘れているようだからだ
考えれば
自ずと出てくる
ものなのか否かは
はっきりしないが
オレのおかれた
状況はかなり
深刻なもののようだ。
「どうするんだ?」
まるでオレに起きた
状況の全部を
知っているような
口振りだったが
どうやらそれではない。
どう答えていいか
分かり兼ねるため
とりあえずオレは
「何がだ」と
誤魔化してみる。
「ふっ。とんだ調子者だなお前は」
ふと。オレに近づく
その少年。
気持ちの悪い手つきで
オレの首に手をやる。
うわ。ヤメロ。キモイ。
「もう付き合って3ヶ月なんだぜ。オレ等」
……………………ん?
まてまて、
何つったこいつ?
付き合う?ふざけろ。
男だろ。
オレは背筋が寒くなり
少年の腕をほどく。
「何だよ。やっぱりお前はあいつかよ」
あいつって誰だ。
つかオレもお前も
誰なんだ。
どういう関係だ。「あ、いた」
あー。またなんか
メンドくさいであろう
別の少年が来た。
「お前。一体どっちと付き合うつもりだ!?」
あー。やっぱり。
え?何なの?BL?
オレは記憶が喪失する前
何やってたの?
正直想像するだけで
身が凍るぞ。
誰か助けてくれ。
「さあ答えてくれ。一体どっちなんだよ!!」
何でキレてんの!?
マジで意味がわからんぞ
とにかく。ここは
一先ず…………
「「あ゛」」
重なる二人の声。
走り出すオレ。
だがしかし
快走していたオレは
見事に下の階の
踊り場でコケた。
――――――――
気がつけば
オレは無惨にも
踊り場に倒れ込んでいた
「お!」
どこかで見たことある顔
だが気のせいだろう。
こんなやつ知らん。
END.