ラウンド3
「リィグもミリーも分をわきまえろ。今はのんびりと話をしている時ではない」
「そうだな、悪かった。」
「申し訳ございません」
厳しく言い放たれた言葉に、二人ともはっとして口をつぐんだ。
空気が変わる。
「それから、お前、なにか勘違いしていないか?」
まっすぐに面と向かって言い放つ、その傲慢とも言える態度。
「そもそもお前に拒否権などない。逆らうことも許されてはいない。」
彼は、すでに王者なのだ。
気圧される私に構うことなく、彼は話を続けた。
「だがそれは、私が王族で、お前が平民だからではない。古の約束が残っているからだ。」
「いにしえの・・・・?」
「そうだ。こんなおとぎ話がある。
昔、この地に降りたった人々は、神の末裔であると言われた先の人々と婚姻をかわした。
この地は豊富な資源があったが、神の末裔の血がなければ使えず、それがゆえに彼らは血を濃くしすぎて民族として成り立たないほどに追い詰められていたからだ。
だが、時の長老の弟は「またいつか、婚姻を繰り返せば血が濃くなろう。または血が薄まりすぎて、神の恩恵は受けられなくなるだろう」といった。
そして「私はその時のために、あの帰らずの森を通って世界を渡る。そして、血を守り、いつかその血が必要となる時が来たら、私の一族は必ずやこの地に戻ろう」と。
これは人々の間ではおとぎ話と思われているが、ほぼ実話だ。
危惧された通り、この国の血は薄まり続けている。私は先祖がえりと言われる濃さを持つが、私の弟や妹たちは血が薄い。父でさえ、受け継ぐことがぎりぎりのありさまだ。
このままいけば、この地を離れなければいけない時が来る。
だから、お前が呼ばれた。
末裔の血を濃く引いた、お前がな。
お前にとっては知らぬ話だろう。だが、そんなことはどうでもよい。
この国の人々を守るために、お前には犠牲になってもらう」
言葉が出なかった。
語られた言葉のひとつひとつに、思いが込められているのがわかったから。
この人が、必死なんだということが分かったから。
そして彼もまた、この国のための犠牲者なのだと、分かったから。
「さっきまでの威勢はどうした」
「・・・帰ることは、出来ないんですか?私の他に、一族の残りは?」
かすかな希望にすがってしまう。
「帰らずの森を渡ることができるのは一度だけだ。そして、お前には力がない。
・・・一族の残りが、お前一人なのは、お前自身が良く知っているだろう」
「知ってるんですか」
「当たり前だ。一族の女で子が産めること。血が濃いこと。それを条件に探しだしたのだから。他にもいたのなら連れてきている」
そうか、知ってたのか。
私は、この世で、一人ぼっちだったこと。
ある日、一人ぼっちになってしまって、途方にくれていたら、奇跡のように幸運がおりてきて、家族ができて、一人じゃなくなったこと。
「・・・だけど、またひとりぼっちだ・・・」
ちいさくつぶやいた言葉は、子供みたいだった。
また、この世界で、ひとりぼっち。
妃になるんだって言う、このひとと家族に、なれるんだろうか?
それなら、ひとりじゃなくなるだろうか。
ってあれ?受け入れ決定?
とってもシリアスになってしまいました。重くてスミマセン。
次は軽く行きたい・・!という願いをこめて最後は落ちません。
イズは不器用です。でも、誠実です。