はじまり。3
あっと言う間に連れてこられたのは、
「・・・シンデレラ??」
まさしくお城!という感じの建物。や、これは由緒正しいお城だ。
なんとなくドイツのお城に似ている感じ。
ちょっと、武骨な、けれど優美なお城。
「来い」
さっきから一言しかしゃべらない超絶美人は無愛想にのたまった。
「え、どこに・・・。というかあなたは?」
問いかけるも、すでにすたすたと歩き出していた彼の後姿は遠く、もう一人の彼女はいつの間にか姿を消していた。
ギギギ、と音がして城の門が開く。
振り返ってみた森は暗く、さらに青みを増してもはや紺から黒へと変わろうとしていた。
なにか出てきそうな気がして、ぞくっとする。
なんだか寒気もしてきた。
ていうか、私薄手のパーカーにハーフパンツだよ、そりゃ寒いよ。
「おい、言葉が聞こえないのか?」
ついてこないことに気がついた彼が、いつの間にか戻ってきていた。
「え」
「言葉が不自由なのか?聞こえないふりをしているのか?どうでもいいがさっさとこっちへ来い。むだな手間をかかせるな」
正直、あんまり人を嫌いになったことはない。
今までの人生そんなに長くないが、嫌いになるほどの付き合いもしなかったせいか、一番嫌いなのは小学生の時に「チビブタ」呼ばわりした男の子だった・・・・・が、断言できる。
このひと、嫌いだ。
どうでもいいならなんで私はここにいるんだ!
叫びたかったけど、あまりに久々のむかつきだったためか言葉にならない。
「ちょっと、痛い!」
立ちすくんでいたらまたも引っ張られた。
ワンパターンだっての!
「なら歩け。」
「・・っ・・・・・わかりましたよ!!」
傲岸不遜ってこういう人のことを言うんだきっと。美人だからこそ余計にその不遜さが際立ってるよ!
城は広かった。
そして誰も見かけなかった。通路に明かりがポツンポツンとしか灯っていないところをみると、夜中に近いのではないだろうか。
ちょっと歩き疲れてきたころ、男(もう彼なんて丁寧に読んでやるものか!そういえば女とか呼ばれたし!)は急に扉の前で立ち止まった。
ノックすることもなく、内側からすっとドアが開く。
「お待ちしておりました」
さっきの、彼女だ。
「用意は整っているか」
「できております」
「入れ」
くっそう!なんで顎で指図するのが似合っちゃう人種がいるんだよう!
なんだかむかつく~!と思ったけれど、心なしか気の毒そうな声で彼女が「お入りください」というので、しぶしぶ部屋の中へと入っていった。
そこにはもう一人、見たことのない人が立っていた。
緑がかった黒髪に、金色の瞳を持つ男の人。
・・・・うっすらと思いたくなかったんだけど、これ、やっぱり・・・・
「リッカ様、どうぞこちらへ」
「・・はい」
椅子に腰かけると、テーブルに飲み物が置かれる。
ステンドグラスのような色をした、器にほれぼれしていると、
「毒など入っていない。飲みたければ飲め」
この男、こいつ、ほんっと、、、、ムカツク!!
「違います!・・・器が素敵だなぁと思ってただけです。いただきます」
なんだか悔しくて一気にグイっと飲む。
「・・美味しい!」
桃のようなフルーツの甘さと爽やかさがちょうどよい、アイスティーだった。
グラスも程よく冷えていて、でも水滴は垂れてない。
飲みごろに合わせて出されたものだ。
緊張でのどが渇いていたせいもあってごくごく飲みほしてしまう。
プロだな~と感心していたら、彼女がもう一杯ついでくれた。
「ありがとうございます」
お礼を言ったらにっこりとした笑顔が返ってきた。
このひと、いい感じだなぁ。
なんだかほのぼのしていたら。
「本題に入るがいいか」
あえて視界にいれていなかった今最も嫌いな奴がしゃべってしまった。
が、そこではっとする。
いけないいけない、なんでここにいるのか、この人たちだれなのか聞かなきゃなんだから。
どうも能天気な私は、肝心なことも流してしまうことがある。
カナメがいたら怒られそうだ。
ふっと息をはいて、目をまっすぐ向けた。
「お話を、お伺いします」
ちょっと、眉をあげた超絶美人はまぁともかく、そこの後ろの金眼なヒト、なんか面白そうな顔してわくわくしてるのやめてくれないかなぁ・・・。
それ、完璧いたずらっ子のする目ですよ。
やな予感、満載。
あ、また出てきてない・・・。
次回は冒頭の部分までつながるはず・・・・!(多分)