子供部屋脱出!
「というわけで、この部屋はきらきら過ぎるの変えてください!」
すっぱりはっきり言ってやった!
だってこんなファンシーなお部屋むずむずしてくるんだもん!
「・・・具体的にはどんなの部屋がいいんだ」
美人もとい殿下はまだショック受け中ながら、一応聞いてくれるらしい。
「えぇとですね、基本的に小ざっぱりとしたのがいいんですけど。
強いて言うなら・・・・
まずは部屋の色は落ち着いた深みのある茶色が良いですね。
あ、カーテンに花柄はなしで、レースは良いんですが、厚い方はベージュ系かクリーム系のやさしい色合いで、柄は薄い格子模様か、なしかで。
一番いいのは下が緑色で、上に従ってグラデーションとかになってたら最高ですね。
机の色はワインレッドが良いですね。
つやのある木がおちついて良いと思います。あ、そんなに大きくなくていいです。使いづらくなりますから。
椅子はもちろん木が良いんですけど硬すぎると疲れますから、クッションはつけていただければ。
弾力のある生地が良いんですけど、職人技とかはいらないんで。至ってシンプルなので。
勉強するとなると本棚とかいりますかね?
あ、本は色々読んでみたいので後で図書館に行きたいです。ありますよね?
あ、それから、私はシェフ見習いなので、こちらの食べ物とか料理とか研究したいので、キッチン小さいので良いのでください。
部屋の片隅で。っていうかそれメインでも構わないんですけど。
キッチンはもちろん使いやすさ重視で、出来れば冷蔵庫みたいなのもほしいですね。
そうすればわざわざ食事をお願いしなくてもいいですし。
鍋は鉄とホウロウと、あ、もちろん包丁はくださいね。自傷とか他傷はしないんで安心してください。
で、それと・・・」
「まだあるのか!というかお前に遠慮の二文字はないのか?!!!」
おっと、切れたか。ちぇ。
並べ立ててたら殿下が切れてしまった。ちいさい男だなぁ。
「だって、具体的にっていうから」
「具体的過ぎだ・・・・!お前というやつは!」
あまりのお怒りになんかもう言葉が出ないらしい。
大の男が怒ってるんだから怖がってもいいのに、ちっとも怖くない。
ミリディアさんも笑ってるし。
この前の、冷たい顔の殿下じゃないからだろう。
なんだかんだいって、人の話を出来る限り聞こうとするのだこの人は。
「そのうすら笑いは即刻辞めろ!」
「じゃ、部屋変えてください」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・はぁ。わかった」
よっしゃ!かった!
思わずガッツポーズすると、殿下がなんか遠い目をした。
ちょっとやつれ気味だ。からかいすぎたかなー。
「お前は、子供なのか大人なのかわからないな」
ため息ながらつぶやく。
「趣味はババくさいし。かといえば子供のように負けず嫌いだし、やかましいし」
そんなあんたもやかましいわ!ばばぁじゃないやい。
三言くらい多い殿下をいつかとっちめてやろうと決意する。
「だが、面白い」
あれこれ闇討ち(復讐)手段を考えてたから、殿下のその、小さなつぶやきは聞こえなかった。
殿下の意識が変わり始めたのは、そこかもしれないと後でミリディアさんに聞いたときは、もったいないことをしたと思った。
「でも、ようございました」
「何がですか?」
ミリディアさんがにっこりするから不思議になって首をかしげた。
なにか良いことあったか?・・・・部屋替えのことかな?
「これで、リッカ様もこの世界に腰を据えられる覚悟ができたということですものね。」
なんですと!?
「お部屋をご自分で考えられ、殿下がそれをお認めになったということは、この宮殿に部屋をかまえられたということ。すなわち、ご身分がおありになる立場へと変わられたということですから」
えぇぇぇええええなんですかそれ。
にっこり顔のミリディアさんがなんか怖いよ!
「なるべくお部屋は早くご用意させていただきますね。一日も早くこちらに馴染まれるためにも」
よろしいですね、殿下、なんて言葉が遠くに聞こえます。
覚悟なんて決まってないですよ。だってまだろくに説明も受けてないし結局何がなんだかちゃんとわかってないし!
「そうだな・・・」
にやり、と殿下が笑う。
いやな笑顔だこれ!
「ミリディアは早速、総動員で部屋を整えさせろ。こいつの言ったようにしてやれ。ただし、部屋はもう一つ付け加えとけ。・・・・・未来の王妃の部屋だ。ぬかるなよ」
なんか悪代官にしか聞こえませんけどそのセリフ・・・・。
「さて、部屋代の分、しっかりきっかり、痩せてもらおうか」
にっこり笑う殿下の顔をつねってやりたい・・・。
ミリディアさんなんてもうすでに部屋の改装プランを練ってるし。
金額が聞こえるようにしてるあたり結構わざとじゃないかと思うんですよ、えぇ。
にしても。
お代は体でって、そのまんまか!!!!
体で支払え!
の内訳はちっとも色気がありません。
いつか出るかな・・・むりかな。




