エピローグ
――― 人と獣との争いが始まってから約1300年経った現在。時の国王エディンズ・ラル・ヒューズ・トゥル・オスカーナ及び第一王子ルクシオン・レン・ロウム・クライス、及び第二王子ハレイスト・フィス・ノエル・マルディーンの計画により、争いは幕を下ろした。
調停の場はセオリア河が干上る月に一度のその時、河の中央で行われた。
その際、国王と女王ルティーナは代償として命を差し出そうとしたが、二人の王子及び女王の側近を筆頭とする者達の呼びかけにより事なきを得た。
その後、第二王子と共にその執務補佐官とその妻、第二王子の護衛役と城下町の元締め的な組織に属する題に王子の友人。計五人。
女王の側近が二人とシカ、イヌ、トリの長の計五人。
それぞれが人質交換を行い、調停は終了。そのまま宴の運びとなった。最初はぎこちなかった両者も、酒のお陰か最後には分け隔てなく接し、共に宴を楽しんだ。
その日の内に行うはずだった人質交換は、宴のせいで延期になり、スフィアランスに帰れなくなった獣達は我が国でその後一月を過ごした。
酒を酌み交わした仲であるせいか、彼等の関係は良好となり、一月はあっという間に過ぎた。一月後の日に別れを惜しんで泣いている者がそこかしこで見られた程である。
人質交換が行われる際、セオリア河に接する公爵領の街の人の一部が移住した。獣達との打ち合わせは事前に済ましており、住居の準備から畑まで始めていたという手際の良さである。
第二王子以下五人、及び多数の人々がスフィアランスに移り、幾つかの村に分かれて住んだ。但し、第二王子は女王の近くに居を構えた。
――― そこから、様々な取り組みが始まった。
まずは、セオリア河に橋を架ける事。
それと、我が国の書物を参考にした『船』を造り、海に出て漁を行い始めた。我々は海への進出を始めたのだ。問題となったのは『泳ぐ』事だが、これも書物を参考に皆が練習した。が、獣は泳ぐ事が出来ず、海に潜るのは過去も現在も専ら人の仕事である。
その代わり、獣は力仕事に精を出した。又、子供の遊び相手としても優秀だった。だが、その鋭い爪故に子供達と遊ぶ事が出来ない獣もおり、そんな彼等は楽しそうに遊ぶ子供達と獣を微笑ましく、羨ましそうに見守っていた。
時折、と言うか頻繁にスフィアランスに移住した第二王子もやって来ては、民と共に遊んでいた。その度に従者に怒られていたという事は、今でも民の語り草となっている。現在ではその姿は王族の目指すべき姿とされており、彼がいた時代以降、王族には民に優しく、気さくな者が増えている事は周知の事実だ。
国王と女王もそれぞれ自分達の後継者の育成に励み、傍らにいて、求められた時と必要な時だけ、最低限の助言をした。そんな彼等の尽力により、後継者が立派になった頃、彼等は逝った。国王が亡くなると、当時事実上国を取り仕切っていた王太子が即位し、女王の亡骸の傍からは彼女の子供と思われるドラゴンの子供が見付かった。
幼いドラゴンは第二王子改め王弟を父親のように慕った。
それから十年が経った現在は、国王ルクシオン・レン・ヒューズ・ロウム・クライス、女王セレスティナの治世の下、人々は穏やかな日々を過ごしている。
更に、夢を抱いて意気揚々と出航した者達が別の大陸を見付け、移住の計画が立てられている。人口は年々増加しており、移住計画は目下最優先事項である。
これからも、両者の関係が良好であり、日々が穏やかである事を心より祈る。
――――『ブルクリード・スフィアランス王国史 第一巻 トーレイン・ヴィルヘルム/著』より抜粋
これにて完結です。無理矢理纏めようとしたのですが、無理でしたw
最後の方には更新が遅れたにも関わらす、又、このような拙い作品に長い間お付き合いして下さり、ありがとうございました。
暫く執筆活動をする予定はありません。
気紛れで投稿するかもしれませんが、その時は又読んでもらえると嬉しいです。
本当に、ありがとうございました。




