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六十五話

 沈黙がその場を覆う。

 息を飲む民衆。目を見開く王。頭を垂れる人と獣。


 やがて、民衆が囁き始める。

「俺、貧民街で食事配ったの王様の指示だって聞いたぜ?」

「でも、あそこに人が増えたのは、元はと言えば王様のせいだろ?」

「腐った貴族共を一掃する為だろ?」

「その影響で貧民街に人が増えたんだろ?

 とばっちりじゃねぇか」

「だから、王子達に命じて手は打ったんだろ?

 それに、俺らに何の影響も与えずに改革とか無理じゃね?」

「改革?」

「改革だろ? 考えの古い貴族共を追い払ったって聞いたぜ?

 そんなでかい事やれば、俺らに影響が出ても仕方ないだろ」

「……だけどなぁ」

 王を擁護するような発言をする人と、何となく納得できない人。


「私の息子を前線に送って殺しておいて、あいつらは生き残ろうって言うのかい!?」

「儂も息子が前線から帰ってこなかった!」

「落ち着けよ。それは王様に事実を知らせなかった周囲が悪いんだろ?」

「黙れ! 無知は罪じゃ! 知らなかったから、で全てが許されるわけではない!」

「そうだけどよ……」

「だから、その償いとしてこれからも国の為に尽力してもらうんでしょう?」

「私はあいつらが生きている事自体が気に食わないんだよ!」

「でも、王様と女王様を殺しても死んだ人は戻ってこないわよ」

「それでも! 私の気が済まない!」

「……分からなくはないけど、頑固者」

 非難する老人と、やんわりと止める若者。


「向こうが戦を始めたんだろう?

 なのに、今更やめようだなんて」

「でも、続ければまた犠牲が出るわよ?」

「だからって、あいつらの指示で人が死んだってのに、あいつらはのうのうと生き残るのかい?」

「だから、王子様が言ったでしょ。一時の身体的苦痛か、死ぬまで続く精神的苦痛か、って」

「どっちの方が重いんだろうね?」

「あなただったらどっちが嫌?」

「……いまいち分からないねぇ」

「そう?私は精神的苦痛の方が嫌。おかしくなっちゃいそうだもの」

「そういうもんかい?」

「私は、ね」

 どちらの方が罪を償うのに相応しいか首を傾げる人。



 やがて、小さなざわめきは民衆を飲み込んだ。あちこちで議論が交わされ、時折怒号が飛び交う。

 女王と国王は困惑気味に民衆の言い合いを見る。

 頭を下げていた面々は、期待と不安の混じった目で見守る。

 彼らの中で、ハレイストとルクシオンだけは、民衆を真っ直ぐに見詰めていた。その瞳に浮かぶのは自信か、覚悟か。

 民衆のざわめきは一向に収まらず、どのような意見がどれくらいの割合を占めているのかは全く分からない。それ以前に、騒がしすぎてどのような意見があるのかすらも分からない状況だ。

 様々な意見が飛び交い、あちこちで議論が交わされる。放っておけば、三日三晩続きそうだ。


 ハレイストの心境としては、満足のいくまで話し合ってもらいたい。そうして、皆が納得できる結論を出して欲しい。


 だが、それは所詮無理な話しだ。

 人の数だけ意見がある。これだけの人数がいれば、数多の意見が出る。意見が一致する時もあるが、完全に一致することはそうないだろう。必ず、どこかが違う。皆が納得する一つの結論など、あり得ない。人一人が世界中の人から好意をもたれることがないように。人の価値観はそれぞれ違うのだから。


 議論が泥沼化する前に、止めるべきだろう。いや、ハレイスト達が何時までも川底にいる訳にも行かないという理由もあるが……。

 だが、これだけ大騒ぎしている民衆の注意をどうやって此方に向けるか。しかも、議論に熱中している人々を。

 ハレイストは腕を組み、悩む。いっそのこと、兄に黙らしてもらおうか。それこそ、一喝するぐらいで。……人の声量には限界があるので、無理か。殺気で黙らせるにしても、鈍い人は気付かないしな。と言うか、普通の人が殺気とか分からないか。

「……さて、どうしようかな」

「何がだ?」

 ハレイストが思わず呟くと、ルクシオンが敏感に反応した。その事に驚きつつ、言葉を返す。

「兄上、放っておいたら何時までも続きますよ? これ」

「だよなぁ……」

 二人して騒がしい民衆を眺める。議論は止むどころか激しさを増している気がする。

「あ、それなら大丈夫だぞ」

 二人の会話を聞いたギルバートが軽く言う。

「ギル、何かしたの?」

「ギルバート、だったか。どういう事だ?」

 その言葉に、兄弟揃って首を傾げた。それを見て、流石兄弟、とルクシオンが聞いたら喜びそうな事を思いつつ、兄弟の疑問に答える。

「おう。部下にめちゃくちゃ声がでかくて煩いのがいてな、そいつが黙らせるはずだ」

 ギルバートは腕を組み、軽く頷きながら言う。

 しかし、二人の顔つきは怪訝そうだ。

「……こんなに騒がしいのにか?」

「無理じゃないの?」

「さぁな。まぁ、本人が言い出した事だから俺知らね」

 二人の最もな言葉に、何とも無責任な返事。ギルバートもあまり期待はしていないらしい。哀れ、部下。

「部下って、茜色の髪の人?」

「イーダンな。知ってんのか?」

「一回だけ見た事あるよ。貧民街で食事を配ってた。面白い五人組だったね」

「……性格はあんなんだが、腕は確かだぞ?」

 くすくすと笑うハレイストに、ギルバートは渋い顔で弁明する。あんなんだが、一応大事な部下だ。それぞれ性格に難あり、だが。

「そこら辺は信用してるから大丈夫だよ」

「そうか」

 笑うのを止め、微笑むハレイストに、肩を撫で下ろす。部下を持つ身としては、部下の能力を正しく評価してもらえないのは辛い。

 笑う二人。残された一人はしかめっ面。

「…………で、そいつは何時黙らせるんだ?」

「あー、もうすぐだと思いますよ?」

「そうか」

 低い声で為された問いに、ギルバートは頭を掻きながら答えた。それに頷いたルクシオンは、細められた目を未だ騒いでいる民衆に向けた。その背からは、明らかに不機嫌さが滲み出ている。

 背を向けたルクシオンから少し離れ、その背を横目で見ながら二人は小声で言葉を交わす。

「なぁ、お前の兄貴、何であんなに機嫌が悪いんだ? というか、睨まれたんだが。俺、何かしたか?」

「拗ねてるんだよ。強いて言えば、僕と仲良く話したから、かな? 多分」

「第一王子が弟大好きって噂は本当なんだな」

「あ、好きな女性いるからね、兄上」

「……そうなのか」

「何、その疑わしい目は。兄上の場合、家族愛が凄いんだよ」

「成る程。家庭を大事にする男か」

「まぁ、奥手だから、中々その女性との仲が発展してくれないんだけどね……」

「奥手? あんな見た目なのにか?」

「前線に立ち続けてたからね。それに、僕が仕事しなかったから、公務で忙殺されてたし」

「……お前、酷いよな。兄貴は労れよ。てか、兄貴こっちにおいてって大丈夫なのか?」

「大丈夫だよ。たまには戻ってくるし、その頃には兄上を支えてくれる人もいるだろうし」

「ん? じゃあ、お前の兄貴が好きな女性もお前の兄貴が好きって事か?」

「……本当に鋭いよね。兄上にもその鋭さを分けてくれないかな」

「お前の兄貴も勘は良いだろが?」

「そっち方面は鈍感だから」

「ありがちだな」

「ギルが言えた義理じゃないけどね」

「何だと!?」

「あ、ほら、来たよ」

「ま、待て! 話を逸らすな!!」

 一際高い木の天辺付近に見えた茜色に、ハレイストは視線をそちらへ移す。隣で何か叫んでいるが、気にしない。木に登った人物は、口元に白っぽい何かを当て、大きく息を吸ったのか、頭が軽く後ろに下がる。

 次の瞬間、怒声が響き渡った。



「――――――――――― てめぇら、いい加減黙れ!!!!」

一ヶ月以上放置してごめんなさい。

キャラが崩壊してるのは見逃してください。

自分でも何を書いているのか分かっていないんです……。


テストが終わったかと思いきやパソコンが壊れ、またもテスト週間に……orz

勉強なんか嫌いだ!!

でも勉強しないと……。


この小説は夏休み前までに完結させられたら良いな、と思っています。

完結したら削除しようかな、とか。

気力があれば書き直そうかな、とか。  ←でもきっとやらない。

そこら辺はまだ悩み中です。

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