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五十九話

―――私が幼い頃は王位を巡っての争いが酷くてな。私の父、先代の国王は好色家だった為だ。子供は全部で数十人いた。貴族達はそれぞれ自分がこれと決めた王子や王女を次期国王にしようと躍起になった。

 そこで、争点になったのが獣をどうするかだった。私の母は私を利用して、もう一度王の寵愛を得ようとしたんだ。王は、無能なものが嫌いで、役に立つものがすきだったから。母は私に会う度に獣を悪く言った。それに同調して、母の実家も、私を支持する貴族も同じ事を言った。

 それが物心つく前から続いてな、六歳になる頃には私は獣への嫌悪感を強く抱いていた。民も、獣がいなくなる事を望んでいるはずだ。そう、思っていた。

 私は数多いる子供の中でも、後の方に生まれた。一番上の王子とは十五歳程離れていた。だが、母の実家が侯爵家だった為に、生活に困る事はなかった。環境にも恵まれていて、幼い頃から王になる為の勉強をしていた。

 私は飲み込みが早くてな、母は喜んだ。私が十三歳になる頃には、私は次期国王の有力候補になっていた。他の有力候補はみな年上で、私をよく思っていなかった。私も、彼らの事は嫌いだった。年上なのをいい事に、いつも嫌がらせをしてきたからな。その頃には、沢山いたはずの王子や王女は、私を含めて残り十人程しかいなかった。皆、毒殺されたり、事故で死んだり、暗殺された。


 やがて、父は病気になり、水面下で行われていた継承権争いが表面化した。城内を歩けば、そこかしこで貴族が言い合ってた。候補同士が言い合っている事も、多々あった。私も、他の候補者と言い争った。

 そんな時期が大分続いてな、その間、父は放置された。誰も、好色家の父に興味は無かったんだ。あるのは、王位と、傀儡の王だけ。父が亡くなるのは時間の問題だった。そして、候補者同士の、全てを使った殺し合いが始まるのも。

 

 面倒なので飛ばすが、紆余曲折を経て、私は王になった。父は、私が即位する二月程前に亡くなった。母は、その後を追った。

 それから、私は獣をこの世から消す為に、動き始めた。幼い頃に植え付けられてた獣に対する嫌悪感は、大人になっても消えなかった。

 税を上げ、民から兵を集め前線に送り、私は城の中から彼らに指示を出し、獣を殺した。こちら側の方が被害が大きかろうと、私は気にしなかった。どんな犠牲を払ってでも、獣を消す事が、民の為になるのだと思っていた。母が、周囲の貴族が、そう言ったから。

 今思えば、愚かとしか言いようがない。

 そんな私を変えたのが、一人の男との出会いだった。



 私は、何時まで経っても目立った成果を上げられない事に憤りを感じていてな、気晴らしとばかりに、初めて城下街に行ってみたんだ。一度抜け出すと、その後も断続的に抜け出した。目的地は、大体が酒場だった。酒場は、色々な情報が集まるからな。

 そこで会ったのが、アレックス、ヴァイパーのNo.1だ。とは言え、その頃はまだ下っ端だったが。

 酒場では酔っ払いが沢山いてな。酒場で飲んでいる時、酔っ払っているアレックスに絡まれたんだ。酔っ払っている、と言っても、理性はあるようだった。話し始めて直ぐ、私達は意気投合した。

 アレックスなら私の疑問に答えてくれる気がして、尋ねたんだ。私が城下に出掛けるようになってから疑問に思い始めた事を。

 即ち『民は獣をどうしたいのか』

 私は、民は獣をこの世から消したいのだと思っていた。だが、城下に出て、民に直接触れて、私の認識が間違っている気がしたのだ。だが、城下に出てまだ数日だったので、よく分からなかった。

 いや、本当は分かっていたのだろうが、長年の思い込みをひっくり返されるのは辛かった。だから、アレックスが民は争いなぞ望んでいないと聞いた時、信じられなかった。

 そんな私を、アレックスは酒場から連れ出して、一軒の家の前に連れて行った。その家の玄関では、中年の女性が泣きながら青年を抱き締めていた。青年の方も、今にも泣きそうだった。

 何故そんな事をしているのか分からない私に、アレックスは言った。

『あれは徴兵された息子を送り出す母親だ。前線に出向けば、無事に帰って来るか分からない。二人にとっては今生の別れかもしれない。…争いなんて、何の為にするんだろうな。獣が生きてたって、俺達は構わないのに。ただ、平和なら』

 私はその言葉に愕然としたよ。目の前に突きつけられた光景にも。そのどちらもが、私の認識を壊すのに十分な威力を持っていた。

 その後にアレックスが続けて言った言葉にも驚いたがな。

『それで、これを見てあんたはどう思った?国王陛下』

 アレックスは私の正体を見破っていた。その上で、私に話し掛けて来たんだ。

 私は民の望みを叶えたかった。だから、争いも終わらせたいと思った。

 だが、今まで民に争いを強いてきたのは私で、そんな私が急に主張を変えても、誰も付いて来ないと思った。その時の城内には、争いに賛成している貴族しか残っていなかった。それも、自業自得なのだが。

 私は正直にアレックスに言った。城が荒れれば、国が乱れる。争いを止める為の行動の陣頭は、私ではいけなかった。だから、私は自分の子供達にその役目を任せる事にした。先に生まれていたルクシオンは純粋だったから、獣への嫌悪感を埋め込まれる事のないように、その教師達を一新した。

 それから暫くの後、ハレイストが生まれた。深緋色の髪に薄墨色の瞳。それは、くしくも祖先であるステリアンに似ていた。獣と停戦条約を結ぼうとした何代も前の国王と。

 私はハレイストを見て思ったのだ。争いを止めるのに、一番貢献するのはこの子だ、と。ルクシオンはハレイストを目に入れても痛くないと言う程に可愛がっていたし、ハレイストもルクシオンに懐いていた。二人の仲は良好で、その事に私は安堵した。

 ハレイストある程度大きくなると、ルクシオンと同じようにその教師に公正で、私情を挟まず、獣に嫌悪を抱いていない者を任命した。ルクシオンもハレイストも順調に育ち、二人共争いを厭うようになっていた。

 特に、ハレイストはかつての私と同じように城下によく出掛けていた。そこで民と交流し、争いを止めたいと言う思いを強くしてくれた。それに、その時にはヴァイバーのNo.1になっていたアレックスが自身の後継者になるだろうギルバートとハレイストが合うように仕向けた。二人はかつての私とアレックスのように直ぐに意気投合し、志を同じくした。

 そこで、私は計画を次の段階に移した。

 イライザにハレイストをスフィアランスに連れて行くように頼んだのだ。その事実は誰にも知られてはならず、ハレイストが獣の女王と会えるかどうかも定かではない、一種の賭けだった。

 それを受け入れれば、イライザは大臣の地位にはいられない。だが、イライザは快諾してくれた。そして、しっかりとその責を果たしてくれた。イライザは極刑に処された事になっているが、何処かの田舎で平和に暮らしているはずだ。公開ではなかったし、ハレイストが無事に帰って来た事で城が慌しくなっているうちに処理したからな。

 ハレイストが帰って来て、記憶を失っていると聞いた時、愕然とした。記憶を失っていては、今までの計画が水の泡だったからだ。だが、ハレイストと二人になった時、記憶は失っていないと聞いた。そして、私の計画を知っている、とも。どうやら、アレックスがギルバートを通じてハレイストに教えてしまったらしい。

 まぁ、事情を知っている協力者が増えるのは好都合だったので、そのままハレイストにも協力してもらった。配役で言えば、私が悪役で、ルクシオンが英雄で、ハレイストが裏方、だな。

 それで、まぁ色々やって今に至る。

寝ぼけた頭で書いたのでおかしい所が多々あると思います。

そのうち頭が起きている時に読み直して、修正を加えるかもしれません。

何はともあれ、まとめられた、はず…?


さて、次の更新は何時になることやら……

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