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五十七話

「さて、盟約の内容だが、無論対象は私と女王だ。

 一つ、ブルクリード王国第二王子ハレイスト・フィス・ノエル・マルディーンは女王と協力して争いを収束させる事。

 一つ、その為ならば互い協力を惜しまない事。

 一つ、互いに死者を出さない事。その為に第二王子は獣側に作戦を伝え、獣側は第二王子に指示された通りに演技する事。

 一つ、情報のやり取りの為に人員は獣側が用意する事。

 一つ、王子側は民への配慮を、女王側は人への配慮を忘れない事。

 一つ、争いを収束させ、二度と争いを起こさない為の人質として王子側は王子を含む人員を、獣側は女王の側近である二人とそれぞれの種族の長の血縁を人質として交換する事。

 一つ、時間を掛けてでも争いを収束させる事。

 一つ、裏切りはその命を以って贖う事。

 以上、盟約を破ることは許されない。破った場合、全力で戦う事になる。が、そうなればこの世界は終わる」

 ハレイストはかつて女王と交わした盟約の内容を諳んじた。その時は口約束だけだったが、後日スカラを通じて正式な書面とした。最後にはハレイストのサインと女王と血判がある。

 内容は争いを終わらせる事を至上目的とし、あとはそれを補足する為の内容。それと、人質交換の指定。人質交換はハレイストが提案したものだ。何か証があれば人々も納得し、安心するだろう、と。

「民への配慮として貧民街で私の出資で毎日食事を配っている。実際にやってくれているのは城下街を取り仕切るヴァイパーのNo.2の配下だ。城下で遊んでいる時に偶然知り合った人物が何時の間にかNo.2になっていたのでな」

 ハレイストが笑う。最初は気が合い、城下に行く度に会っている青年。今では酒場で共に飲み、話し、情報の交換をし、今後の方針を決める。彼の配下は彼に心底心酔しており、彼に逆らう事はない。彼と仲の良いハレイストの事を目の敵にしているようだが、一度顔を合わせたがハレイストだとは気付かれなかった。まぁ、フードを被っていたので当然と言えば当然だが。

「盟約の内容は以上だ」

「で、ハレイストの目的は争いの終止符を打つ事。提案はそれで良いな?」

「えぇ」

 ルクシオンがハレイストの確認し、貴族達を見回す。

「今すぐ決を採る事はしない。ただし、事は早い方が良いだろう。明日、決を採る。異論はないな?」

 ルクシオンが問えば、皆が無言を以って答える。ルクシオンは頷き、ラミアに視線を移す。

「ラクサレムは起きそうか?」

「無理そうです」

「…そうか」

 即答したラミアにハレイストは嘆息し、気を取り直すように頭を振った。

「それと、人質の面子も決まっている。私、トーレイン、リリアーヌ、ラミア、ギルバートだ。リリアーヌの父であるヴィルヘルム伯爵には話を通してある」

 ハレイストはヴィルヘルム伯爵に目配せすると、伯爵は無言で頷いた。彼は娘を可愛がっている為、娘の願いを無下に出来ないのだ。

「ちなみに、ギルバートと言うのがヴァイパーのNo.2だ。彼の後任はもう決まっているので問題はない。ヴァイパーのトップにも話しは通してある。ですよね、父上?」

 ハレイストは笑み、会議室の入り口を見る。そこには車椅子に乗った壮年の男性がいた。深緑の瞳に深緋色の髪。ルクシオンの瞳とハレイストの髪を併せ持つ男性。否、ルクシオンとハレイストが彼の色を持っているのだ。

「ハレイストよ、演技はもう良いのか?」

 車椅子に座り、その車椅子を近衛騎士団団長であるスピア・チーフレインに押されながらハレイストに近寄る男性は当代国王エディンズ・ラル・ヒューズ・トゥル・トスカーナ。ルクシオンとハレイストの父親であり、獣を毛嫌いしていると噂される人物だ。

 その車椅子を押しているスピアは黄みがかった茶髪で、盲目ながらに団長まで上り詰めた強者だ。スピアの背後に控えるのは近衛騎士団副団長のシード・アリシエイト。濃緑の髪に碧の瞳。スピアに対する憧れを原動力に今の地位まで上り詰めた、つまり、スピアに心酔しているのだ。

「父上も、演技ご苦労様でした。申し訳ありません、御心に反する行動をお願いしてしまって」

 ハレイストは近寄ってくる父親に向かって深く頭を下げた。

「気にするな。民は労わってくれたのだろう?」

「勿論です。民には第一王子の命令で私がした事になっています」

「…は?」

 穏やかに笑んだエディンズに、ハレイストも笑顔で答える。そんな二人の様子に、家族内で一人だけ蚊帳の外なルクシオンは状況に全く付いていけていなかった。

 そもそも、父は弟を疎んでいたのではないのか。というか、弟は記憶を失っていなくて、あれは演技で。獣と協力していて、争いの度双方に被害が出ないように仕向けた黒幕は弟で。城下で自分の命令と言う事で弟は民に食事を配っていて…。

 そこまで考えて、ルクシオンの限界が来た。一度に新しい情報が脳内を飛び交い、処理しきれなくなったのだ。

「…取り敢えず、この場は閉会とする。詳しくは書面で今日中に渡してやろう。それを読み、決めよ。獣と争い破滅するか、獣と手を組み未来を掴み取るか」

「次の会議は五日後。その時に、意見を諮る」

「ルクシオン、ハレイスト、行くぞ」

 エディンズが呆然としている貴族達に言い放ち、ハレイストがその言葉を引き継ぐ。最後にエディンズはハレイストと固まったままのルクシオンに声を掛け、スピアに車椅子の方向を変えさせて一足先に会議室から出て行った。ハレイストは固まったままの兄の腕を引き、エディンズの後に続いた。

「じゃ、捕縛よろしく」

 そんな言葉を残して。

 控えていたジルフィスの指示で王国騎士団員が、残ったシードの合図で近衛騎士団も会議室に入り、反乱分子を捕らえ、引きずって行った。その中にはコフィーとラクサレムも当然含まれていた。驚きの余り情報を処理し切れていない彼らは簡単に連れて行かれた。

 それを尻目に大臣達も退出した。トーレイン、スカラ、エレン、ラミア、リリアーヌの姿は既に無く、騎士団達もいなくなった頃、ようやく正常に戻った貴族達によって会議室は混乱の坩堝と化した。

勢いで書いてしまいましたorz

何でしょうね、これ。自分で自分の作品が分からなくなっていく不思議。

取り敢えず、次話で頑張ってお話纏めます。

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