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三十一話

 エルーシオの言葉に、ハレイストはまたもや固まった。

 憧れの女王と会えるのは嬉しい、聞きたい事も、女王に聞くのが一番良いだろう。だが、敵である人の国の王子とそんな簡単に会って良いのだろうか。いや、まだ子供で丸腰であるハレイストでは何も出来ないが、それでも、無用心過ぎないだろうか。

「僕が会っても良いのですか?」

 ハレイストの問いに、エルーシオはきょとん、とした顔をした。それを正面から見たハレイストは再び衝動に駆られたが、何とかこらえた。腕は若干動いたが。

「あぁ、大丈夫ですよ。陛下も貴方に会いたがっておりますからな。理由は、陛下にお聞き下され」

 エルーシオはハレイストに安心させるように微笑みかけた。

「陛下が今すぐ来い、と」

 突然、低い声が割って入る。

 ハレイストが驚いて声の方を見ると、何時の間にかサランドが戻って来ていた。表情も無いが気配も無いらしい。

 ちなみに、エルーシオは人の国で言えば大臣のような役割を、サランドは騎士団長のような役割を果たしている。見たままだ。これが逆だったら驚きだが。

「よろしいですかな?」

 エルーシオがハレイストに尋ねる。心の準備は良いか、と聞いているのだろう。

「はい」

 ハレイストは緊張と期待と不安と好奇心で強張ってしまった声で答えた。

 エルーシオは小さく笑いを零すと、ハレイストに付いて来るように促し、歩き始めた。ハレイストはエルーシオの後ろを歩き、更にその後ろにサランドが続いた。

 一行は洞窟内を何度も何度も曲がりながら進んだ。記憶力の良いハレイストも、自分が何処からどう来たのか既に分からなくなってしまった。一度迷い込んだら余程運が良くない限り抜け出せないだろう。

 ハレイストは何の迷いも無く前を歩くエルーシオに感心した。迷いの無い足取りは、自分が何処へ向かっているのかきちんと理解しているらしい。この広い洞窟の道を全て覚えているのだろうか。

「もう直ぐですよ、ハレイスト殿下」

 エルーシオは歩みを止めずにハレイストを振り返った。

「楽しみです」

 それにハレイストは笑顔で答えた。憧れの獣の王。いや、女王か。トレニアル戦争の時から代わらず獣の頂点に君臨している存在。その姿を見た人間は既にこの世に居らず、姿を記した文献も無い。

 分かっているのは、翼があり、空が飛べる事。知能がとても高い事。大きい事。そして、とても美しい事。ぐらいだ。後は想像するしかない。

 ハレイストはドラゴンの姿を想像するのが好きだった。他の獣のように爪は尖っているのか。鋭い牙を持っているのか。どれぐらい大きいのか。美しいとは、具体的にどんな風に美しいのか。

 そう考えるだけで、ハレイストの心は踊り、時間はとても早く過ぎて行った。

「殿下は人間にしては珍しいですな」

「そうですか?」

 前を向きながら笑うエルーシオにハレイストは首を傾げる。

「普通の人間は我々を毛嫌いするものでしょう?」

 エルーシオのその言葉に、ハレイストは思い当たる節が幾つもあった。夜会の度に聞こえる貴族達が獣を馬鹿にし罵る声。周りの大人達が口を揃えて獣を倒せ、と言う会議。獣は人間のものであり、獣が人に刃向かうなどおこがましいと書かれている本。

 ハレイストからすれば、何故そこまで獣を毛嫌いするのか理解出来なかった。貴族や大人達が言うように、本に書かれているように、獣達は悪なのだろうか。人間の方が獣より偉いのだろうか。人間の方が偉いと言うなら、何を持ってそう言うのだろうか。

 その質問に答えてくれる大人は居なかった。

「僕からすれば、大人達の方が理解出来ません」

 ハレイストは緩く首を振った。

 エルーシオは前を向いたまま、静かに微笑んだが、何も言わなかった。一番後ろを歩くサランドも何も言わない。

「着きましたよ。この扉の向こうに、陛下が居られます」

 エルーシオは辿り着いた扉の脇に立ち、扉の正面にハレイストを立たせた。扉、と言ってもブルクリードの城のように立派な物ではない。が、石造りのそれは威厳に満ちていた。それは、この扉自体が持つものか、この扉の向こうの存在がもつものか。

「陛下、殿下をお連れしました」

 エルーシオが扉の脇でそう言うと、一拍の後、大きな扉がゆっくりと開いた。誰も触れてすらいないにもかかわらず、ひとりでに開いた扉にハレイストは驚いたが、緊張でそれどころではなかった。

「良く来ましたね、人の子」

 扉が開ききったと同時に、澄み切った高い声がハレイストにそう言った。

「初めまして、女王陛下。ブルクリード王国第二王子、ハレイスト・フィス・ノエル・マルディーンと申します」

 ハレイストは扉の中に一歩踏み入り、丁寧に頭を下げた。

「初めまして、人の子。私はルティーナと言います。面を上げなさい」

 美しい音色のような声に、ハレイストは顔を上げ、初めて獣の女王をその目に映した。

 一言で言えば、神々しい、と言う言葉がぴったりだ。全身を覆う鱗は数千の宝石を埋め込んだように銀色に輝き、大柄ながらも細身な体躯は滑らかな線を描いている。少し長めの四肢の先には鋭い爪が。先に行くにつれて細くなっている尾の先には剣の切っ先を思わせる鋭い棘。頭には尾より大きい棘が二つ。牙は大きく鋭い。今は畳まれている二枚の大きな翼は支えとなる骨に薄い銀の幕が付いているような物だ。広げたらさぞかし巨大だろう。

 何より、最も目を引くのはその瞳。深い青の瞳は静かに、強い光を宿している。理性的な光を宿し、上に立つ者として相応しい力を宿している。それでいて、何処か包み込むような優しさを帯びている。

 頭上から差し込む陽光も相まって、昔々の神話に出てくる聖獣のようだ。

「早速ですが、何故此処にいるのか話してくれますか?」

 ルティーナのその言葉に、ハレイストは頷き、事の顛末を話した。

ルティーナの描写するの楽しかったです(^-^#)

分かりにくかったらごめんなさい…

イメージ的には西洋風?です!


次話からは言葉遊び的な話になるかと…


誤字脱字・矛盾等ありましたらご指摘下さい。

感想等も頂けると嬉しいです。

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