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二十三話

「…レ…、ハ…ト!、…レイス…!ハレ…スト!」

「ん…?」

 誰かの叫び声でハレイストは目を覚ました。

「やっと起きたかハレイスト!」

 嬉しそうな叫び声がハレイストの鼓膜を震わせる。寝起きの頭にその大きな声はよく響く。

 ハレイストは辛そうな声を漏らしながら体を起こした。ハレイストが寝ていたのは大きなベッドだった。

「もう少し静かに出来ないかな、レドラ」

 ハレイストは恨めしげな視線を声の主に向ける。窓の外はまだ暗く、月光が部屋に入り込んでいる。

「仕方ないだろう。皆がお前を待ち構えていると言うのに何時までも寝てるな」

 恨めしげな視線を受けたチーターもといレドラが言い返す。

「何時までもって、たかが一時間ぐらいだよ?」

「お前が此処に来る事自体珍しいんだぞ、その一時間が勿体無い」

 窓から外を見て意識を失ってからそんなに時間が経っていない事を確認したハレイストは言った。が、

レドラに切って捨てられた。レドラの目は恨めしそうにハレイストを見ている。

 恨みたいのはこっちだよ、と思いつつ、ハレイストは大きく息を吐き出した。

「簡単に行き来出来る訳ないでしょ」

 寧ろ簡単に行き来出来たら毎日が争いの日々になってしまう。そんな事になれば民の生活で危ういではないか。その分決着は早く着くかもしれないが。多大な犠牲を伴って。

「お前の行動が遅すぎるんだ」

 しかし、その言葉もレドラに切って捨てられる。

 これには反論出来ないハレイストだった。予定よりずれ込んでいるのは確かだ。

「城は色んな陰謀渦巻く恐ろしい場所なんだよ。今も何か方々で怪しい動きがあるし」

 貴族達は何か考えてるだろうし、騎士達も動いてるし、侍女達も何か企んでるし、国王に至っては出て来ないし。

 ハレイストは報告される情報を思い出して顔を顰めた。頭痛がするのは気のせいだと思いたい、と若干逃避をしている。

「愚図の割にはよく知ってるな?」

 レドラが可笑しそうに言う。

「侍女達の噂の威力は凄いんだよ?城の伝達係より先に情報を得てたりするから。それに、おしゃべり好きだし」

 ハレイストは苦笑しながら答える。貴族達は侍女達を見下しているが、ハレイストは彼女達を結構頼りにしている。侍女、と一口に言っても、中には貴族令嬢も居る。教養を学ぶ為だ。それと、城の中で出会いを求めて。

 そんな彼女達の楽しみはおしゃべり。彼女達の話を聞いていると、貴族間の関係、企み、恋愛事、人気の高い男性の行動パターン等、話題は多岐に及ぶ。

「それだけか?」

 レドラの声が少し低くなる。その表情は不機嫌そうだ。

「君達の有能な諜報部員もね。ごめんね、危ない事に協力させちゃって」

「気にするな。彼等は自ら望んで任に就いた」

 申し訳なさそうに言うハレイストにレドラは首を振った。

 そして、口の片端を上げて笑うと、付け足すように言った。

「人間は空を飛べないからな」

 その言葉にハレイストは笑った。

 そう、人間が空を飛べない限り、もしくは弓よりも短時間で放て、命中率の武器を開発しない限り、有能な諜報部員を始末する事は出来ない。が、人間は飛べないし、そんな武器も存在しない。

「昔は銃って言うので打ち落としてたみたいだよ?」

 ハレイストは大分前に読んだ古い古い本を脳裏に浮かべながら言う。何度も書き写されながら残されていたその本には太古の知識が詰まっていた。

 科学という物がまだ生きていた時代だ。しかし、科学言うものはとうの昔に無くなった。正確に言えば、維持が出来なくなった。

 苛烈を極めた人と獣の争いで大地は荒れ果て、科学者達は研究所ではなくなった。暢気に研究をしていたら争いの余波を受けて死んでしまう。それに、謎を解明している暇があったら武器を開発しろ、と上層部に言われたらしい。

 その頃には、世界を破壊してしまえる兵器があったが、使用されなかった。人間も滅びてしまったら意味はないし、獣達は各地に点在しており、その兵器を使えば近隣の住人に被害が及ぶからだ。

 そんな風に争いは泥沼にはまっていき、何時しか武器を作るのに必要な鉄を取るための鉱山も現在残す所後一つ。それを使い切ってしまえば、人間は新しく武器を作り出せない。だから、銃や爆弾等は現在使われていない。極少数の者が弓を使い、後は全員剣だ。剣ならば、きちんと手入れしていれば長年私用できるからだ。

「昔の話だ。今はそんな物を作る材料も技術も無い」

 レドラは鼻を鳴らして吐き捨てるように言う。

「まぁね。で、女王が待ってるのかな?」

 ハレイストは軽く肩を竦めて見せてからレドラに尋ねた。こんな時間にレドラが居るのならば、呼ばれているのだろう。女王に。

「お待ちかねだ。服はそのままで良い。一刻も早くお会いになりたいそうだ」

 ベッドから立ち上がったハレイストにレドラは頷きながら答える。レドラが此処に居るのはハレイストを女王の許に連れて行くためだ。個人的に会いたかったというのもあるが。

「じゃ、行こうか。女王陛下にお目通りに」

 ハレイストはそう言って微笑むと、先導するレドラに付いて部屋を出た。

やっと、やっと此処まで…!!

ようやく獣が出せました。

人と獣のお話なのになかなか獣が出てこなくてちょっと苛々していました(笑

次は女王が出て来ます!

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