表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/69

二十二話

 首筋にぴたりと当てられた冷たい感触に、ハレイストは本能的に背筋が寒くなった。が、表情には出さない。

 問い掛けに答えないままでいると、背後からもう一度問い掛けられた。

「人間が、此処で、何をしている?」

 ゆっくりとした口調には、明らかな苛立ちが混ざっている。どうやら感情を表に出しやすい性格のようだ。

 城では直ぐに貴族達に追い落とされるタイプだな、とハレイスト緊張感も無くぼんやりと思った。それとも、人は死に直面すると冷静になるのだろうか。

「さぁ?気付いたら此処に居たから、取り敢えず自国に帰ろうかと思って」

 ハレイストは肩を竦めて問い掛けに答えた。まさか自国に辿り着く前に見付かるとは思っていなかったのだ。いずれはばれるかもしれないが、此処まで早いのは流石に予想外である。近付いてきた気配に気付かないのも。

「返すと思うか?」

 背後に立つ獣が冷ややかに笑う。

「思いたいけど、無理なんだよね」

 対するハレイストは残念そうに溜め息を吐く。それでも動揺の色は見られない。

 獣はハレイストの言葉に笑い声を立てると、ハレイストの首筋から鋭い爪を外した。

「女王陛下がお待ちだ」

 その言葉を最後に、ハレイストは衝撃に襲われた。地面に倒れ込む前に、毛むくじゃらの腕に抱えられて。

 意識を失う直前に思った事は、後ろに立っていたのはクマだったんだ、という事と、今日はこんなのばっかりだ、しかも何か既視感があるし、だった。


--一方、アーノルドの屋敷では。

「殿下が戻っていないだと?」

 ハレイストが残していた分の仕事を片付けているトーレインの元に、屋敷の使用人が訪れた。

 曰く、殿下が戻っていないが、どうしますか、という内容だ。

 使用人の報告を聞いたトーレインが低い声を出す。それまで忙しなく動いていた手も止まった。しかし、視線は書類から離さない。

「もう直ぐ夕食の時間になるのですが…」

 トーレインの怒りを感じ取った使用人は若干青褪めながら答える。力は無いくせに迫力があるトーレインは城内でも恐れられている。特に、その達者な口のお陰で精神的ダメージを負った人々は多い。

「放っておいて下さい。泊りがけで居なくなるのは何時もの事です。長くても二、三日で帰って来ます」

 トーレインはあっさりと言い放つと、止まっていた手を再び動かし始めた。

 使用人はその言葉に唖然とした。てっきり猛烈に怒り出すかと思っていたのだ。

「大丈夫なんでしょうか…」

 思わずそう呟いた使用人にトーレインが口を開く。

「大丈夫です。どうせ街の人達に捕まってるだけですから。王都でもそうですし」

 ここまで言われると一介の使用人には何も言えない。しかも、レイスに話してもエレンに話しても同じ様な返事が返って来たから大丈夫なのだろう。

 しかし、それでも心配なのだ。屋敷に居る使用人や侍女達全員が。ハレイストが居ないとこの屋敷は何処か寂しい感じがするのだ。

「では、失礼します」

 使用人は頭を下げると、静かに退室して行った。

 扉が閉まり、使用人の足音が聞こえなくなると、トーレインは手を止め初めて顔を上げた。窓から夜空を眺め、おもむろに立ち上がった。

 トーレインは窓に近寄ると、静かに窓を開けた。暫く窓を開け、そこに立っていると、声がした。

「あんたの主なら無事だよ」

「だろうな」

 唐突に聞こえた声に動じる事なくトーレインが答える。が、周りに人は居ない。そう、人は。

「他に何か言伝は?」

 トーレインは視線を落とし、尋ねた。

 その視線の先に居るのは一羽のツバメだった。ツバメが窓際に止まり、トーレインを見上げている。

「明日中には返すって、女王陛下が」

 ツバメ、もといスカラが答える。

「…帰って来るのか?」

「…たぶん?皆に捕まってるかもしんないけど」

 僅かに顔を顰めたトーレインに、スカラは自信無さげに答える。ハレイストの周囲を惹き付ける魅力は誰に対しても発揮される。貴族の阿呆共は例外だが。

 その為、ハレイストが一度外出するとなかなか戻ってこないのは何時もの事なのだ。いや、正確に言えば、帰って来れないのだ。人々に捕まって。そして、彼等に冷たく出来るような性格ではないハレイストは、最初は城に帰ると言いながらも、最終的には街に残るのだ。

「今居なくなられるのは困るんだが」

「女王陛下もそれは分かってるよ」

「なら良い」

 スカラの返答にトーレインは軽く頷いた。そもそも、トーレインも女王がそんな考えなしでない事ぐらい分かっている。が、一応確認したかったのだ。この時期にハレイストに居なくなられると非常に困るのだ。

「何時もありがとうな、スカラ」

 トーレインはスカラに微笑み掛けた。滅多に見せないであろう優しい笑みだ。妻のリリアーヌにはよく見せているが。

「こっちこそ感謝しないとね。お陰で結構助かってるし」

「お互い様だな」

「そういうこと」

 小さく笑いを漏らすトーレインにスカラは大きく頷いた。

こんばんわ!!

テストが色んな意味で終わったので久々に書きました。

なんというか、ごめんなさい…

内容がごちゃごちゃになっている気がします、大丈夫でしょうか?

誰か、私に文才を分けてください…!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ