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二十一話

ハレイストが目を覚ました時、陽は既に沈みかけていた。周りの景色は茜色に染めあげられている。

 視界に移るのは茜色に染まった木々。と、木に生っている木の実。そしてひたすら続く森だけだ。

 しかし、ハレイストには木が上に向かってではなく横に向かって伸びているように見えた。そして、右半身が圧迫されていた。

 暫く何故こんな不思議な景色を見ているのかとぼんやりとした頭でハレイストは考えた。が、気絶する直前の事を思い出して何が起こったのかを理解した。ついでに、自分が地面に転がっている事も。

 ゆっくりと体を起こすと、体が痛んだ。恐らく放置されてから大分時間が経っていたのだろう。

 強張った筋肉を少しずつほぐしながらハレイストは辺りを見回した。首を回すのも痛くて一苦労だが、何とか動かした。

「ブルクリード、ではないよね~」

 どうしようかな、という言葉をハレイストは口の中で呟いた。

 此処は明らかにブルクリードではない。ブルクリードで人の手が入っていない土地など無いのだ。少しはあるかもしれないが、見渡す限り木しか無いというのはありえない。

 そう、人の国、ブルクリードであるならば。

 では、ブルクリードでなければ何処なのか。答えは一つだ。

「スフィアランスだよね、此処」

 ブルクリードでなければ、もう一つは獣の国スフィアランスしかありえない。他の大陸は焦土と化しているのだから。

 普段二つの国を分断するセオリア河も、今は大分水位が低い。とはいえ、争いをするにはまだ早い。完全に干上がってからでなくては。今の状態で争いをしても、満足に動き回ることは出来ないし、体力の消費が著しい。

 だが、争いは出来なくても渡るだけなら可能だ。水位は踝までしかないのだから。ちなみに、普段は腰の高さまである。それぐらいなら泳いででも渡れそうだが、川幅がとにかく広いのだ。しかも、流れが速い。足を滑らせようものならお陀仏だ。

 常時見張りは居るが、川の長さが長すぎて、全体を見張るのは無理なのだ。争いの近い今の時期は見張りも増えているが、監視の目をすり抜ける事も出来なくは無い。

「誰か、協力者が居たとか?」

 ハレイストはそう言うと、面倒くさそうに溜め息を吐いた。

 協力者が居たのならば、ハレイストをスフィアランスに置き去りにする事など容易いだろう。

「帰ったら怒られるんだろうな…」

 ハレイストはトーレインの怒る様子を想像してしまい、帰りたくない、と思ってしまった。トーレインは怒りエレンは泣きトディスは嘆きルクシオンは暴走しそうだ。色んな意味で。

「あの人は…何も言わないか」

 最後に脳裏に浮かんだ人物の反応を考え、小さく呟いた。何処か自嘲気味で、寂しそうな声。あの人は、誰に対しても笑わないし、優しさを見せる事はないのだから。

 ハレイストは何かを振り払うように頭を振ると、方膝をついて立ち上がった。その表情は普段の様子に戻っていた。

「さて、ブルクリードは西だから、夕陽に向かえば良いのかな」

 ハレイストは本で読んだ知識を思い出した。何でも昔、科学とか言うものが発達していた頃の人によれば、陽は東から出て西に沈むらしい。言われてみれば確かにそうだ、とハレイストは思った。

 今の時代、陽がどの方角から出てどの方角に沈むかなど気にする者はいない。わざわざ考えなくとも、陽は何時も同じ方角から出て同じ方角に沈む、それがわかっていれば良いのだ。道に迷ったら人に聞けば良いだけなのだから。

 ハレイストは帰ったらどうしようかと頭を悩ませながら歩き出した。

 取り敢えず帰ったらトーレインの怒りをどうにかして静める事が先決だろうか。怒りを静めたとしても、その後は笑顔で脅されながら公務をやるはめになりそうだが。

でも、攫われたのは不可抗力だし許してくれるかな、と淡い期待を抱きながらハレイストはのんびりと歩く。あ、でも勝手に抜け出しのは僕か。やっぱり怒られるな、と思い至り、ハレイストは憂鬱な気分になった。

 というか、先の心配より無事にスフィアランスを出る事が出来るのかを心配した方が良いとおもうのだが。人と獣は対立関係にあるのだから。まして、ハレイストは第二だろうが城で疎まれていようが王子だ。人質にでもされたらどうするのだろうか。

 その事に気付かないのかハレイストはのんびりと、散歩でもしているように歩を進める。恐怖や緊張は一切無い。肝が据わっているのか単なる阿呆なのか、よく分からない。

 とにかく、ハレイストは西に向かって歩き続けた。その間にも、陽は着実に沈んでいく。

「今日は野宿かな?お腹空いたんだけどな…」

 ハレイストは木々の葉の隙間から空を見上げた。茜色だった空は薄暗くなっている。このままでは本当に野宿だ。食べ物も無く、敵の陣地のど真ん中で。しかも、助けは期待出来ない。

 しかし、無常にも夜は更けていく。

 ハレイストが野宿を覚悟した時、不意に首筋に冷たいものが添えられた。鋭く尖ったそれはハレイストの首にぴたりと添えられている。

「人間が、此処で何をしている?」

 背後から聞こえたのは、殺気の滲んだ低い声だった。 

え~と、微妙なところで悪いのですが、テスト週間に入ってしまったため更新が来週末頃になると思います。

なるべく早くあげたいと思います。

申し訳ありません。

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