私はゲーム世界の勇者だ
私はゲーム世界の勇者だ。
私は、目の前で「勇者の仲間」と名乗る魔王を黙って見つめていた。 ……魔王は、頭上に表示されている「魔王」という字幕が、すでに正体をバラしていることに気づいていないらしい!
そのとき、魔王は目の前の魔物を鮮やかに倒し、私に誇らしげな表情を見せた。私は少し複雑な気持ちで魔王をちらっと見た。それから剣を収め、魔王を仲間に加えて一緒に旅をすることにした。
魔王は面白いやつだ。
私は魔王と冒険の旅を続けながら、何も知らないふりをし続けるのに必死だった。けれど、ときどき我慢できずに、魔王をからかってしまうこともあった。
魔王の驚いた反応を見て、私は思わず吹き出しそうになったが、どうにか堪えた。
やがて私は魔王城を攻略し、魔王の玉座の前までやって来た。そこは、妙に生活感にあふれていた。
ここまで来たところで、私は魔王に自分の正体を明かすことにした。あのときの魔王の呆然とした表情は、一生忘れられない。
その後、魔王が慌てて部屋を片づけているとき、私は床に落ちていた罠の設計図に目を留めた。
「さっきから、ずっと君の罠に注目していたんだ。本当に素晴らしいな」
魔王は半信半疑の表情を浮かべた。私が変な社交辞令を言っていると思ったのだろう。無理もない。なにしろ私は、さっき魔王の罠を一気にすべて突破したばかりなのだから。
私が本気で言っていると気づくと、魔王は少し得意げに言った。
「素晴らしいゲームのステージには、適度な難易度だけじゃなく、攻略できる道筋も必要なんだ。私が設計したステージは、必ず自分でも一度プレイしている!」
私は設計図を指さして言った。
「ここは、そのまま観光列車にできると思う」
「そのままジェットコースターに改造したほうが、もっと刺激的になる!」
「いいアイデアだ」
私は魔王をちらりと見た。こいつはステージの話になると、すぐに興味を持ち始める。本当に可愛いやつだ。
その後、ある日のこと。私がステージを建造していると、うっかり毒を受けて、地面に倒れた。魔王はすぐに駆けつけてきたが、もう遅かった。
私は魔王が慌てた表情を浮かべるのを見ながら、震える声で言った。
「勇者だっていうのに、どうしてこんなに簡単に死にそうになっているんだ」
息が途切れそうになる前に、私は魔王の顔にそっと触れた。そして、思わず笑いながら魔王をからかった。
「私にキスしてくれたら、復活するよ」
私は目を閉じた。そして、私は死んだ。
私は復活した。
私はゲーム世界の勇者だからな。
私は「リスポーン地点」から、いくつものステージを斬り抜け、障害を突破しながら魔王城へと戻った。
玉座に座った魔王は抱き枕を抱え、少し拗ねたように言った。
「ふん、遅い。ずいぶん遅かったな」
私はぱちぱちと瞬きをした。
「お前、私が復活したことに驚いていないようだけど?」
魔王は視線をそらした。
「……本当にキスしたのか?」
(完)
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