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のらりくらり回避してたら、気付けば外堀を埋められた件について

作者: Roku
掲載日:2026/02/19

21歳、大学4年生。

交際経験もなければ、好きな人すらいない。だから、「ざまぁ」する相手もいなければ、される心当たりもない。それはそれで、少しだけ空虚な気もしていた。人付き合いに難があるわけでもなく、友達だってちゃんといる。

「いま」を楽しみすぎた結果、ひとりなのだと自分を納得させていた。

そんな私に最近、異性の友達ができた。

アプリで知り合ったその相手とは、会うつもりなんて毛頭ない。のらりくらりと会う約束をかわし、なんでもない日常を共有する。その適当さが、なんだか心地よかった。

今日、相手から「ラーメンを食べた」と連絡がきた。

感化された私は、近くの店へ足を運んでみた。写真を添えて「私も食べたよ」と送ってみれば、相手から「近くにいるかも」と返信がくる。

途端に、背筋に冷たいものが走った。

会いたくない。その一心で、残りの麺を急いで啜り、店を出ようとした。

「……すんさん、ですか?」

肩を叩かれた。呼ばれたのは、私のネット上の名前。

知らないふりをして逃げようか。でも、反射的に振り返ってしまった私の目に飛び込んできたのは、同じ大学の伊藤くんだった。

「え……?」

呆然と立ち尽くす。

「まさか、あなたが『豚チャーシュー』なの?」

恐る恐る尋ねると、彼は少し照れくさそうに、でも確信を持って頷いた。

「うん。まさか、山田さんだったとはね」

……よかった。ネットの人と会うのは少し怖かったけど、知り合いなら、現実でも仲良くできるね」

本気でそう思って胸を撫で下ろした私に、彼はまっすぐな視線を向けた。

「うん。……じゃあ、これから一緒に遊ばない?」

そうして、私たちは吸い込まれるように近くのゲームセンターへ向かった。

UFOキャッチャーで一喜一憂し、対戦ゲームでムキになる。画面越しにのらりくらりと交わしていた言葉が、今は隣で体温を持って響いている。

なんだか、楽しい。

「友達っていいな」

そんな純粋な実感が胸に広がり始めた、その時だった。

ふと隣の彼を見ると、筐体の光に照らされた横顔が、驚くほど真剣で。

さっきまで「豚チャーシュー」なんてふざけた名前で呼んでいた相手が、急に「男の子」としてそこに立っていることに気づいてしまう。

「ねぇ、付き合おう」

ゲームセンターの喧騒の中で、彼はさらりと言ってのけた。

「毎日連絡取り合ってるわけだし。……というか、もうお互いのこと、十分知ってるよね」

畳みかけるような言葉に、私は言葉を失う。画面越しに「私に会いたがってるな」なんて他人事のように分析していた余裕は、目の前の彼の熱量に溶かされてしまった。

あれよあれよという間に、私は「付き合う」ことになった。

……うん、正直に言おう。

これ、めちゃくちゃ怖い。

「ざまぁ」する相手もされる相手もいない、平穏で空虚な私の日常。

そんな鉄壁のガードを、豚チャーシューこと伊藤くんは、「毎日、話してる」何て理由で突き崩してしまった。

明日からはもう、「のらりくらり」とはいかないんだろう。

スマホの通知が鳴るたびに、心臓が跳ねる。

「いま」を楽しみすぎて一人だった私が、誰かと「いま」を共有する。

未知の世界に足を踏み入れた自分の、あまりの無防備さが、今はただ恐ろしくて、少しだけおかしい。

まぁ、居心地もいいし

楽しいし

いいかと

自分を納得させて、


豚チャーシューこと、伊藤くんこと、彼氏の敬太郎に明日はキスしようかな何て考えている自分がいた。


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