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2年前まで同居してた高校生の担任になってしまった  作者: 冴花


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22/23

2年前まで同居していた高校生の担任になってしまった

琥珀がうちの高校に入学した。

高校教師の私が琥珀の担任になった。



琥珀と距離を置くことになり、琥珀は家から出ていったはずだった。

今年高校生になることは知っていた。




でも、まさかそんなことになるなんて考えもせず今日を迎えた。

当然のことだ。

家だって、思ったよりも離れていたんだから。


だから、近所で会うこともなく、LINEをして、誕生日には来てくれて、

琥珀はどこかの高校に通いながら一人暮らしをする。


そんな年月を過ごしていくはずだった。




なのに目の前にいる。

あ行だったせいで、一番前の席にいる。

正式には左前だが、目の前は目の前だ。



こんなことがあっていいのか。

まさか、これが「びっくりさせたかった」の正体だったのか。




「秋月琥珀です。よろしくお願いします」



もともとくせっ毛の琥珀の髪は、茶色のマッシュパーマのようなヘアスタイルだ。


ピアスを開けたのか。


最近、うちの高校はピアスがOKになった。

高校の偏差値が上がったことに対する生徒からの要望が実現した。

ただし、派手なものは禁止だ。

琥珀はシルバーの小さな丸いピアスをつけている。



琥珀の自己紹介とみんなの拍手に、この私の思考がかぶる。

琥珀を見て、何人かの女子がひそひそと話している。

もしかして噂を知ってる人がいるのだろうか。

それとも、もはや目をつけられているのだろうか。


脳内が忙しいまま、次の人の名前を呼ぶ。

現実を受け入れるのに、どうしても時間がかかる。

とんでもなく気が散る。


でも、無心でただ書かれている生徒の名前を呼ぶ。

そして、つられるように拍手をする。



琥珀がずっと私のことを見ている。

それに気づいている私は、よくわからないところを見ている。

落ち着け。今は学校にいるんだ。


他人のふりをしなくてはならない。




「はい。ありがとうございました。では、資料を配ります」




今日は半日で終了した。



その後生徒たちが続々と帰っていく中、掲示物を貼っていると



「先生、手伝いますか?」



と琥珀が言ってきた。



「こは・・・あっ、秋月くんありがとう」



琥珀はクスクス笑っている。



「先生、字綺麗ですね。習字でも習っていたんですか」


「あれから習字を習ったので、おかげさまで」


「あれからって・・・?」




しまった。




「違う、あね・・・姉から・・・」


「先生、お姉さんいるんですね」




琥珀がクスクス笑うのでにらみつける。



「あ・・・そういえば俺の携帯のストラップ、先生とお揃いなんです」



教卓に置いた携帯を見て琥珀が言う。



「何で未成年なのにビールのストラップつけてるの?」



ちょっと意地悪をすると琥珀が、



「好きな人とお揃いなんです」



と言った。




「ふーん・・・私変えたほうがいいかな」


「僕は気にしませんよ」


「好きな人が気にするかもよ?」


「気にすると思いますか?」



琥珀が私を見る。



「どう思います?」



死にそうだ。まだ生徒がいる。




「・・・いや、そんなこと言ったらキリがないというか・・・」


「俺、人とかぶらないものを買ったつもりなんです」




琥珀が攻めてくる。




「先生はどこで買ったんですか?」


「わた・・・あの、人に、もらった」


「どんな人に?」



後ろから「おい琥珀~、先生のこといじめんなよ~!(笑)」と聞こえた。

琥珀は「先生、おもしろいんだもん」と言って、



「あいつ、同じ中学だったんです。名前は市川湊いちかわみなと。俺の仲いいやつです」



と言った。

市川くんは黒髪のツーブロックで、分けた髪がオールバックのようになっている。

かなりイケメンだ。イケメンはイケメンを呼ぶのだ。

市川くんもピアスが2個ずつ開いている。

これは派手なピアスに当たるのだろうか。下手したら注意することになるだろう。



市川くんは自己紹介の時に



「市川湊です。中学では男子にモテていたので高校では女子にモテたいです」



と言って、何人かがクスクス笑っていた。



「そうなんだ」


「で、どんな人にもらったんですか。参考までに教えてください」




こいつ・・・




「小6のとき、下校中に帰り道でお腹壊して」


「あーそれは・・・」



さえぎるように琥珀が言った。



「次会った時に口止めされるやつですね」



そう言った琥珀は目を細め、人差し指と中指で自分の両目を指差し、日本の指を私の両目に向けた。

涼しい顔をしてはいるものの、耳が赤い。

勝った。私の勝ちだ。




「他に質問は?」


「今日、家に帰ったら何食べるんですか?」


「え。なんだろう。ビールのつまみ」


「俺、料理得意なんです。俺も好きな人にご飯作りにいこうかな」



と言った。



今日、私にご飯を作りに来てくれるってことか・・・?



覚えとけよ、琥珀。

家に来た時には私から叱られることを覚悟しておくんだな。



「秋月くんって、中学の時に大人の女と一緒に住んでたって噂の人?」



二人の女子が来た。



「俺かもね」


「琥珀くんなんて珍しい名前、他にいないよ」


「掲示板のやつ、友達から聞いた」


「そうなんだ」


「もう女と一緒に住んでないんでしょ?」


「春高の先生って聞いたけどまだいるのかな」




心臓の鼓動が高まる。




「ここの先生だって噂あんの?俺知らないな」



市川くんが言った。



「えー、じゃあ違うのかな」



女子がちらっと私を見る。

市川くんが言った。



「どの噂が本当なんだろうね?相手を妊娠させたとか、不倫だったとか。忙しいねー琥珀(笑)」


「え、やば(笑)」


「あんま変な噂広めないであげて。俺なんてゲイ疑惑もあったんだから」


「市川のその噂は本当でしょ?」


「琥珀くん、そのイケメンの顔ぐちゃぐちゃにしてあげようか?」


「(笑)」




女子も笑う。

しかもイケメン二人だもん、さぞ楽しかろう。

私はヒヤッとしたよ。市川くんナイスすぎ。



「もう手伝いはいいから早く帰りなさい」


「やー、毎日昼までならいいのにー。ねえ、二人とも暇?一緒に遊びたいんだけど」




この女子はイケイケでしっかり美人枠だ。



「俺は暇だからいーよ。琥珀今日用事ある?」


「俺今日門限あるから17時半までならいいよ」


「えー門限とかかわいいんだけど(笑)」


「ボーリング行こ」


「プリクラ撮りたい」



お父さん、厳しいのかな。

それにしても、友達がちゃんといてよかった。



「じゃーね、先生」



琥珀が携帯を持った手で手を振った。

お揃いのビールのキーホルダーが揺れる。



「さよなら」


「先生さよならー」


「さよなら」





琥珀が来るならちょっと片付けしようかな。

ちょっと決め事しなきゃ。

琥珀の担任として過ごさなきゃいけないんだから。




学校を出ると、声をかけられた。



「白雪先生~」



桐沢先生だった。



「お疲れ様。今日昼までなんて最高だね」


「それでなんだけどさ、昼飲みしにいかない?」




最高のお誘いすぎる。



と、そこに青山先生が通りかかった。



「青山先生!」



脊髄反射で呼び止めた。



「はい?」


「あの・・・」


「青山先生も昼飲み一緒にどうですか?」



先に、桐沢先生が青山先生を誘ってくれた。



「三人でですか?」


「そうです~」


「場所は?」




来ないタイプだと思っていたが、青山先生も来ることになった。


そして街中の中華料理屋に来た。



琥珀からLINEが来ている。

柴の子犬が「遊んでください」と言って尻尾を振っているスタンプだ。


そして、森川からもLINEが来ている。


「入学おめでとう!」


いや、私は入学しないんですけど、と返す。



「うちの兄ちゃんがさっきせんせーとすれ違ったかもって言ってた!」


「え。じゃあ中央区にいるのかな」


「俺も中央区にいるよ!」


「そうなんだ。桐沢先生もいて、これから中華食べて酒飲む」


「え、まじ?」




桐沢先生から「ビールでいいですか?」と聞かれたので、トークを閉じておかわりのビールを頼んだ。




「でね、『私はお前の母さんじゃねえんだよ!』って言ってやったの」



すっかり酔った青山先生が饒舌になっている。

男運が悪いという青山先生は、最近別れた元カレに母親扱いをされていたと愚痴をこぼしていた。

ちょっとぶりっ子になっててめちゃくちゃかわいらしい。



「それ、ほんと大正解すぎです。彼女を第二の母親にする男なんて絶対やだ~」




桐沢先生も楽しそうだ。




「三十代のいい男が朝起こしてくれだの、みかんの皮向いてくれだの。歳下ならまだしもさあ~」


「歳下なら許せますかねえ・・・どうですか、白雪先生」




桐沢先生!私に振らんでくれ!



「白雪先生、歳下の彼氏いるの?」


「いや、大人になったら付き合おうって言ってくれる高校生が・・・」


「あれ?中学生じゃなかったっけ・・・」


「今年高校生になりまして・・・」


「え!?まさか、うちの高校にいたりしないですよね!?(笑)」



青山先生、声でかい~

言えない。絶対に言えない。



「いや、夏高だったような・・・」


「夏高って共学になったんですか!?」


「あ、じゃあ冬高か」


「冬高、他の高校と合併したって聞いたんですけどどうでした?」


「秋高!秋高だった!ハハ」



春夏秋冬!混乱するんだわ!

もう全部共学にせえ!




「青山先生~実は私、今年卒業した生徒のこと好きだったんです」



桐沢先生は警戒心がなさすぎる。




「そんな噂を耳にしたから私が警告したんでしょうが!」


「青山先生~命の恩人~」


「あなたが隠す気なかっただけです!」


「先生は生徒のこといいなって思ったことないんですか?」



人が聞きにくいことを・・・



「私はちゃんと生徒と一線引いてましたよ!それでも噂になるんだから!学校って恐ろしいところなんだから!」


「噂されたことあるんですか??」


「・・・もっと仲良くなったらそのうち話す・・・」


「え~!青山先生と私たちはもう仲良しじゃないですか~!」



桐沢先生から森川と同じようなにおいがする。

コミュ力おばけ。



「・・・桐沢先生の服装、いいなって思ってたのに最近パンツ姿多いですよね」


「青山先生、私の服装見てくれてたんですね!」


「私、カーディガンにスカートみたいな服装、大好きなの・・・」




私は清水さん(森川のお兄さんの友達)に見せてもらったから知っている。



「え~、青山先生もそういう服着たらいいじゃないですか!何で着ないんですか?」


「もうスカートなんて履けないよ・・・」



そして、私を見た。



「白雪先生みたいに太ももが細くておしりが小さかったらパンツも似合うんだけど、私は骨盤歪んでてお尻が大きいからガードルみたいなの履いてるし」


「白雪先生、スタイルいいですよね!」


「だから私、つい白雪先生のお尻を見ちゃうの・・・」


「やだ青山先生~!変態みたい!(笑)」


「スカート履かなくなったなって思ってたけど、私は白雪先生、パンツ姿のほうがいいと思う」




えっ・・・




「青山先生が私に「最近スカート多いですね」って言ってたのって、そういうことだったんですね・・・」


「え?私、白雪先生にそんなこと言ったっけ・・・」


「いや、いいんです・・・もう多分履くことないですから」



てっきり「スカートなんて履いて色気づいちゃって」みたいなことかとおもったら、そういうことだったなんて。


今日、この会があってよかった。


青山先生への誤解は今日で全て消えた。




「青山先生もスカート履いたらいいんです」


「昔は履いてたの!私もスカート履きたいの!でも似合わないし・・・」


「似合いますよ。青山先生のこと好きだった卒業生がギャルだったって言ってましたよ」


「え!?誰!?」


「清水くんっていう人で、今年卒業した森川くんのお兄さんの友達なんですけど・・・」


「清水くん!覚えてる!」


「今の姿見たいって言ってましたよ。今度よかったら紹介します」


「いや無理無理無理無理!昔の生徒に会うの恥ずかしい!!!」


「青山先生、私今年卒業した森川くんのことが好きなんです!私も協力できます!」


「やめて二人とも~!!」



そう言った青山先生はすごくかわいかった。








店を出ると、桐沢先生が青山先生を引っ張る。



「はい!二件目行きましょ!こっちに串揚げ屋があるので!」




時計を見るともう14時半だ。



「あ、私はそろそろ・・・」



私の言葉にかぶり、「あ!白雪先生だ!」と声が聞こえた。




振り返ると、市川くんがいた。隣に琥珀がいる。




「え、あんたたちなんで・・・」


「琥珀が中華食べたいっていうから解散した~」



市川くんの横で、琥珀が携帯を持ってにやりと笑う。


こいつ・・・合流しようとしてるな?




「・・・秋月くん、門限あるんでしょ?」


「ありますけど、まだ時間あるんで」



そして、まだにやにやしながら言った。



「白雪先生。俺、お金ないんです。おごってください」




こいつ・・・まじでこいつは・・・


桐沢先生が「白雪先生、誰このイケメンたち!」と言った。




「…私のクラスの生徒です」


「え!そうなの?私英語担当の桐沢だけどわかるかな?」


「青山先生、桐沢先生、白雪先生ですよね。先生たちって顔で採用されたんですかね」




市川くんのあざとい言葉で、すっかり二人はおごる気になってしまった。




「中華は今出ちゃったからアレだけど、串揚げ食べる?」


「ちょ・・・生徒と居酒屋行っていいんですか?」


「私服なんで大丈夫です」


「俺ら酒飲む気はないです(笑)」




そういうことではない・・・




「あ!いた!白雪せんせー!」




はい、森川。絶対来ると思った。


琥珀の表情を見ると、これは想定外だったようだ。



「あれ?琥珀じゃん!」



そして青山先生と桐沢先生を見た。



「まじか!ねえねえ青山せんせーいるよ!」




奇跡的に、森川のお兄さんと清水くんまでいる。

青山先生が結構でかめの声を出した。



「玲子ちゃん!?うわまじだ!」



雰囲気が全然違うのに、清水くんはすぐにわかったらしい。



「清水くん、森川くんも・・・久し振り」


「うわ~俺・・・今年の運全部使い果たしたかも・・・」



清水くん、めちゃくちゃ嬉しそう。



それぞれいろんな挨拶をかわし、目まぐるしい状態で串揚げ屋に向かう。


琥珀が私の隣に来た。

得意げな顔をしている。



「あんた・・・いろいろ話があるからね」



小声で言うと、琥珀が少しにやっとして



「嬉しくないんですか?」



と言った。



「や・・・そういうことじゃなくて・・・!」


「俺今日好きな人の家に泊まろうか迷ってるんですけど、どう思います?」


「えっ!?そ・・・れは」


「なんで先生が嬉しそうな顔してるんですか?」


「・・・あんたまじで覚えときな・・・!」




琥珀がクスクスと笑う。




「てか、桐沢先生かわいいですね」


「・・・そうだね」


「あれ?不満そうですね」


「いや、別に」


「まあ・・・俺の好きな人のほうがかわいいけど」



琥珀が私を見る。

ずるいやつだ。



琥珀の私服は、明るめのグレーのジャケットにベージュのパンツでセットアップみたいになっている。

ジャケットの中に白いタンクトップを着ている。

ふわっと甘い香りがまた身をまとっている。


こう見ると、高校生には見えない。




「先生、そのネックレス、綺麗ですね」


「・・・ありがと」


「俺のネックレス、どうですか?」



赤くて丸いネックレスをしている。



「・・・これって」


「これ、何かわかります?」



私は琥珀色のネックレスをつけて、琥珀は_____



「もしかして、なつ・・・」


琥珀は耳元で「『めのう』って言うんですよ」と、さえぎるように言った。

肩を強めに叩くと、琥珀はわざとらしく驚いたような顔をした。。




「え、まさか先生・・・自分の・・・」


「あんたもう話しかけないでね」


「そんな・・・俺たち今日会ったばかりなのにそんな冷たい事言わないでください」


「てか何で敬語なの?」


「先生、何言ってるんですか?俺生徒ですよ?」


「・・・はあ」




琥珀がクスクス笑っている。


落ち着け。

これは初対面だ。こいつとは初対面なんだ。


こいつのペースに巻き込まれちゃダメ。




串揚げ屋にいくと、私の隣に森川が座った。



「俺先生の隣!」


「あんたが勝手に決めるんじゃない」


「久しぶりなんだから!」


「1カ月を久しぶりって言うの、あんただけだよ。泣いてたくせに」


「おい。そんなこと言っていいの?ちゅーするよ?」


「森川くん、ちょっと調子に乗り過ぎだね?」


「じゃあ私は森川くんの向かいに座ろうかな」



桐沢先生が森川の向かいに来た。

そして、森川を見ると、少し笑って目をそらした。


森川が「・・・最近桐沢先生、なんか変なんすよ」と私に耳打ちした。

少し照れてるようだ。




市川くん、琥珀、私、森川

______________________


森川のお兄さん、清水くん、青山先生、桐沢先生





この席になった。

琥珀はなんでわざわざ私の隣に・・・

奇跡的で偶然すぎる飲み会がスタートした。

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