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2年前まで同居してた高校生の担任になってしまった  作者: 冴花


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14/24

限界

焼肉デートの前に、陸翔くんのご両親のところへ行くことになっていた。



ご実家に行くのは2回目だ。

1回目は付き合ってから2か月後くらいのとき。

陸翔くんの姉、兄が来たので私たちも行くことになったのだった。

2人とも結婚していて、パートナーをそれぞれ連れてきた。



付き合ってから半年たったが、今回はそんな楽しい会のために行くのではない。

謝罪に行くためだ。


たまたま私の携帯を見てしまったという陸翔くんが、元カレである篠田と2人で飲む約束をしていたLINEを見たと言い、それを親に話したと言ったのだ。



「親が別れろって言ってきた。付き合っていくには親を説得しなきゃいけない」


「いや、篠田には彼女がいるし体の関係を持ったこともない。しかも親友の彼氏だよ」


「そんなのは何の証拠にもならない。今後何もない保証もない。俺が許したとしても、親が許してくれなかったら今後いい関係性も築けないよね。結婚前提って話したんだ」





やむを得ず、謝罪に行くことになったのだった。

しかも一人で。




ご実家につくと父親が外に出ていて物置で作業をしていた。



私が車から降りると、父親は



「何しに来た?」



と言った。


よほどお怒りのようだ。



「今後の陸翔くんとの関係のこともあって少しお話させていただきたいと思って。陸翔くんから聞いていませんか?」


「別に何も」




何で?


今日行くって話したよね。



こっちから連絡する手段もないのに。





そもそもなぜ親にそんな話をしたのか。


もちろん私は篠田とまだ2人で飲んですらいない。

LINEをさかのぼったが「今度また一緒に飲もう」というやりとりだけだ。

体の関係を持ったこともない。



そこまで怒ることなのか。



ぼーっとしてしまった。

余計なことを考えちゃだめだ。




「とりあえず入りなさい」




父親に言われ、家の中に入った。




「お邪魔します」




中に入ると母親もいた。



「棗ちゃんこんにちは。どうぞ、座って」


「・・・失礼いたします」





2人も座った。

なんて切り出そう。



「あの・・・陸翔くんから聞いているとは思うのですが、私の携帯を陸翔くんがたまたま見てしまったとのことで」


「そもそも何で鍵をかける必要がある?」




そんなことまで知っているのか。

鍵をかけるのは普通のことだと思っていたんだけど。

年齢層的な問題なんだろうか。


てか陸翔くん、ロック解除して携帯を見たってことか。今気づいた。

あのやりとりをしてたのは陸翔くんがいなかった時だ。



それってやっていいことなの?



「いやそれは、仕事の連絡も取っていますし、紛失したときに個人情報が流出したら嫌なので」


「見られても問題ない内容なら鍵をかける必要はないよね。相手に不安を与えるとは思わないのかい」


「見られても問題ないとは思っていません。ただ私」


「元カレと連絡を取って2人で会おうなんてやりとりをしてるくらいだから、鍵をかけなきゃいけないと思ったんじゃないの?」


「いや、ふた」


「それは浮気になるんじゃないかい」





いや・・・ならねえよ・・・

てか話聞けよ・・・




「・・・そもそも2人で会ってすらいないです」


「陸翔が携帯を見ていなかったら会ってたってことだよね」





何をそんなに詰める必要があるの?

たらればの話をしたらキリないじゃん。

「今度一緒に飲もうね」は「2人で」という意味合いとは繋がらない。



なんなのこの人。

私を浮気者に仕立て上げたいの?

こちらの事実を聞く気がないのはわかった。




「陸翔くんも鍵をかけてます。お互い、そこは線引きをして付き合っていたつもりですし、そうなると陸翔くんだって」


「陸翔はそう思ってないわけだから」


「え。はい、今後は誤解させてしまうようなことはしな」


「鍵をかけるのをやめたらどう?見られても困らないんだから」


「いや、それ」


「陸翔が言ってたわ。酒をやめられないって。アル中だって。だったら飲んだら何をするかわからないってことだよね」





落ち着け。話を聞く気がない人と話しているんだ。

冷静に話をしないと。否定して話をすすめちゃだめだ。




「陸翔くんは前お付き合いしていた人がお酒を飲むと気が大きくなるからアル中という言い方をしていました。私はそんな飲み方もしてませんし、私は『お酒を飲むとエンジンがかかるからお酒を飲みながら料理をするのが好きだ』と言ったことならありますが、けん」


「酒を飲みながら料理(笑)陸翔が言ってたから知ってるけどその時点でアル中なんじゃないの?」




落ち着け。



「アル中って、禁止されていてもお酒をやめられなかったり、毎日何本も飲むことですよね」


「あ。そうだった。じゃあ君はアルコール依存症なんだね(笑)」





大丈夫だ。冷静に話せば大丈夫。わかってもらえるように話せばいい。

そうだ。そもそも片方から話を聞いただけの状態なんだから。ましてやそれが自分の息子なら、親としては許せるわけがない。私はそんなつもりがないこと、そんな行動をとった覚えがないことを話せばいい。



「依存症ではありません。ですが、陸翔くんが嫌だというので陸翔くんの前ではお酒を飲まないと約束しました」


「陸翔の前だけって意味あるの?(笑)」


「私の友達にはそんなこと言われたことないですし、止められてもいないので」


「ふうん。別にそれは俺には知らないけど。できるの?今後」


「できます」


「だってよ、母さん」





母親は「私に振らないでよ」と笑った。



「いや、私は別にお酒を飲みませんって言ってほしいわけじゃないの」


「俺もそうなんだよ」


「お父さんは黙ってて。陸翔から聞いたときは『飲むとすぐに寝ちゃう』って聞いてたから、陸翔は寂しかったんじゃないかなって思ったの。あの子が泣いて話していた時は、とにかく『寂しい』『悲しかった』って言い方をしてたから。寂しい思いをさせたくないと思ってくれるなら、起きていられるように少し控えてくれたらいいんじゃないかなって。浮気うんぬんとかそれはちょっとよくわからないけど、相手が嫌だと思うことはやめるべきだとは思うよ、私は」




ど正論だと思った。



たしかに、篠田と連絡を取る必要はない。

志穂に連絡して、篠田にも必要な情報なら篠田に伝えてもらえばいい。




「はい、そうします。連絡が来てたので返していましたが、私から積極的に連絡するべきではなかったです。今後は悲しい思いをさせないようにしていきます」


「そう言ってくれるならよかった。陸翔が『結婚前提』だなんて言うから私たちも余計に心配になっちゃって。前にお付き合いしてた人とひどい別れ方をしたみたいだから慎重になってほしくて。お父さんもつい心配なだけなの。嫌な言い方してごめんなさいね」




まじでな。てか本人が謝れ。




「陸翔、仕事だけど早く帰るって聞いてる。棗ちゃんと付き合う前はずっと毎日のように帰ってきて入り浸ってたから、最近帰ってこないことが私としては安心でもあるんだよ」


「そうなんですね・・・」



お金がないから実家帰って節約したいとは言ってたな。

単純に実家が好きなんだろうな。


これだけ心配してもらってたらそりゃあそうか。




「早く帰ってあげて。今日は焼肉なんだって?棗ちゃんのご飯おいしいって言ってたよ」


「そうなんですか。お母さんが作ってくれてて好きだったものばかり私に作ってくれって言うんですよ」



お母さんが笑った。



「やだよねそんなこと言われるの」


「いえ、実家のご飯がおいしいっていいですね」


「いつでも食べに来てね。陸翔と一緒に」





お母さんのおかげで空気が変わった。


お父さんも少し穏やかな表情になっていた。






そのあとは少し雑談してからご実家を出た。



陸翔くんからLINEが来ていた。



「うちの親、聞いてないってすっとぼけてなかった?」



陸翔くんが話してなかったわけじゃないんだ。



「言ってたけどちゃんと話できたよ」


「よかった。もうすぐ帰るから準備して待ってて」


「わかったよ」









焼肉屋は豪華なところだった。

数切れの肉が綺麗な和風のお皿に盛りつけてある。



「ここの牛タンうまいんだよ」


「そうなんだ」



値段を見てびっくりしたけど、陸翔くんが払ってくれた。




そのあとはプリクラを撮って解散の予定だったが、琥珀がいないことを思い出した。

家に来てもらって少しゆっくりしてもいいかも。




「少し家に来ない?」


「同居人は?」


「今日いないみたい」


「じゃあ寄ろうかな」




家に着いて携帯を見ると志穂からLINEが来ていた。



「今日って時間ある?話したいことがあって」



え、なんだろう。タイミング悪すぎる。



「ごめん、今日だめだ。明日でもいい?」



すぐに既読がついた。



「今手が空いたらLINEで送る。桃山に見られないようにしておいて」



何で陸翔くんに見られないようにするんだろう。


まさか、携帯を見られたときに陸翔くんが志穂に何か送った?


どうしよう。

いや、それならその日に連絡がくるはず。



陸翔くんが近づいてきたのであわてて携帯を閉じようとしたが、

怪しまれたら困ると思って志穂とのトークだけ閉じた。

琥珀のトークと陸翔くんのトークを固定しているから一番上に出るはずだったが、

琥珀のトークだけ解除されている。



もしかして陸翔くんがやったんだろうかと思った瞬間、ビールが差し出された。



「さっきコンビニで買った。今日は飲んでいいよ」


「え」


「説得してくれてありがとう」




今の雰囲気では聞けない。

とりあえずあとで聞こう。









お互い2本ずつ飲んでゆっくりテレビを見ていた時だった。



陸翔くんが携帯を閉じたかと思えば、引き出しを開けたり棚の上のものを触り始めた。

そこには琥珀のものも入っている。



「ちょっ、勝手に開けないで」


「いや、ちょっとだけだから」



今回ご両親と話したことで許されると思っているんだろうか。

それとも誰かに、疑わしいものはないか探せとでも言われたのかな。

嫌なことをされた仕返し?



陸翔くんが引き出しの上にあるアクセサリーケースを開けた。

中には琥珀とお揃いのビールのキーホルダーが入っている。

こっそり外したものだ。



「それは触んないでほしいな」




無視して陸翔くんが取り出すと、2つ入っていた。



琥珀が自分の分も入れたんだ。

ここにあるって気づいたんだ。

どんな気持ちで一緒にいれたんだろう。



キーホルダーを外したって気づいたとき、私の携帯を見て悲しそうにしてたな。



せっかく買ってくれたのに。




琥珀・・・・・




どうしよう、寂しい。







「何でこれ2つあるの?予備?(笑)」


「いいから戻しておいて。ほんとにやめて」





陸翔くんはため息をついて、2つともゴミ箱に捨てた。




「え、何してんの?」


「言い方が腹立つ」


「いや、だからって勝手に人のもの捨てないでよ。返して」


「別れないって決めて俺の親のとこに行ったんじゃないの?」


「話をずらさないで。人のものを勝手に捨てていいのかって聞いてる」


「どうせ同居人とも浮気してんだろ」




は?




「人のもの勝手に触って、捨てていいわけないって話をしてる」


「俺と付き合ってんだよね。他人との思い出とか捨ててほしい派だから」


「いや返して。あんたが決めることじゃない」


「ほら。あんたとか言って(笑)酒飲むと逆らってくる。だから嫌なんだよ」


「逆らうって何?私たち対等だけど。対等に話そっか」


「言い方気をつけろって。もう酒禁止な?」





話が通じない。父親とそっくりだ。





「あと私の携帯勝手に見るのももうやめて。犯罪だよ」


「自分が悪いんじゃないの?浮気したから」


「あのやりとりのどこが?2人で約束した覚えないんだけど」


「やましいからパスコードロックしてんでしょ」


「じゃあ自分もやめたらどう?私に携帯見られてもいいってことだよね?」


「浮気してるやつのセリフだよ。それ。自分がやましいから俺に話をすり替えようとしてる」


「はあ。まずそれ返して」






陸翔くんがキーホルダーを床に投げつけた。



キーホルダーが壊れた。







ガラス製だったんだ。








プラスチックだと思ってた。











こんな形で知りたくなかった。








2つともバキバキに割れている。



私のも、琥珀のも。

















もう限界だった。





食器棚から、陸翔くんにもらった食器を出すと、思いっきり床に投げつけた。


鈍い音を立てて食器が飛び散る。





「おま、は!?嘘でしょ!?」




陸翔くんが割れた皿の前に駆け寄った。




「え、粉・・・え・・・?お前まじで・・・」




粉々でしょうね。


当たり前だ。床に打ちつけたんだから。

床なんて弁償すればいい。

もし夜中だったらクレームきたかもしれない。



でも今はこいつの絶望的な顔を見てるのが最高だ。

信じられない、とでも言いたげのこの顔。

ざまあ。いい気味。





「同じことで仕返しされてどんな気持ち?」



自分でも相手をあおるような表情をしていたのはわかってる。

でも許せない。

このクズに仕返ししないと気が済まない。



煽りに乗った陸翔くんが私の首をつかんで壁に打ち付けた。

喉から、ぐっ、と音がした。

陸翔くんは息を荒くして私をにらみつける。



喉が痛い。頭も痛い。くらくらする。



「お前、頭おかしいんじゃないの?これいくらしたと思ってんの?人の気持ち踏みにじってんのわかってる?」


「大事なのは金額なんだ?その時点で私の気持ちなんてわかってないよね。まず私に謝れよ」


「何で煽るの?俺に殺されたいの?」





お腹を蹴られた。



倒れた痛みよりも、息ができなくて吐きそうだ。

必死に呼吸を整える。





「弁償しろよ?その皿、2枚で3万だから」


「じゃあお互い弁償だね。買えば済む話なんでしょ?」




陸翔くんの前で見せていた自分が剥がれ落ちていく。

私のこと、弱くて従順な女だと思っていただろうけど。




「お前の傷は治るけど、俺の食器は治らない。買って済むと思わないでくれる?」


「じゃあまだ殴る?どうぞ。お前なんかこわくないわ」






鍵が開く音と走る足音がして、私の胸倉をつかんでいた陸翔くんが手を離した。

誰なのか考える余裕がないうちに2人入ってきた。



琥珀と森川だった。



琥珀が私と陸翔くんを交互に見る。

森川は割れた皿を見てから、涙目で床に伏せている私を見た。

琥珀が陸翔くんをにらみつける。



「お前何やってんの?なつめ、こいつに何された?」


「お前が同居人?」



陸翔くんの表情に焦りが見える。

まさか琥珀が帰ってくるとは思ってなかっただろうし、森川もいるとは思っていないから焦るはずだ。

余裕がない様子なのは私にもわかった。



森川が琥珀の肩をつかんで琥珀を後ろに下げた。



「一発殴らせろ」



見たことない顔をして陸翔くんの前に立ちはだかっている。

普段へらへらしてるくせに。



「このクズと同類になっていいの?」



そう言った琥珀のほうが、もっと殺気立った顔をしていた。

背の高い琥珀が、自分より少し背の低い陸翔くんを蔑むように見ている。

森川はもっと背がでかい。圧がすごい。



「お前なつめのこと殴った?志穂さんから、お前が元カノに暴力振るってたって聞いたけど、もしかしてなつめに同じことした?」


「聞かなくても見たらわかるじゃん。殴っちゃダメなら警察に通報する?」


「待って」




慌てて止めた。

もちろん陸翔くんをかばうつもりはない。




「そんなことしたら近所で噂になる。迷惑かけたくない」


「俺別に何言われてもいい」


「せんせー、俺も」 ←?


「大丈夫。別れればいいだけだから。陸翔くん今日は帰って。お皿のことは考えるから」


「じゃあ別れるってことでいいよね」




ずっと黙っていた陸翔くんがやっと口を開いた。




「当たり前だよね?人のもの壊したり手をあげるような人とまだ付き合うと思う?」


「こっちだよ。お前みたいなブスと付き合ってやったのは時間と金の無駄だったわ。ガキ2人も手なずけるようなクソビッチだったなんて。まじで早く別れるんだった」




舌打ちして陸翔くんに近づく森川を止める。



吐き気がおさまったので、飲みかけのビールを目の前で飲んでやった。



「私の勝ちだね。私の見た目を誹謗中傷して、想像上でのことで罵倒するしか言い返せないんだもん。他に言い返せることが見つからないんだよね?」


「はいはい(笑)いいよそれで(笑)」


「あと、アル中とアルコール依存症の定義を調べとけってお前の父親にも言っとけ(笑)」


「は?死ねブスが」


「はっ(笑)こないだ泣きながら実家帰ったんだって?(笑)早くパパとママに泣きながら報告してこいよ(笑)」


「・・・お前あんま調子に乗んなよ?」


「うっせーDVファザコン短小包茎男が(笑)お前が死ね(笑)」





「おい!!」と怒鳴って私に近づく陸翔くんを森川が「早く帰らないと警察呼ぶけど」と言って腕をつかんだ。



「離せおらァ!まじキチ〇イだろお前ら!」



壁を殴り、玄関の靴を一つ残らず蹴飛ばしてから、陸翔くんは帰って行った。




「ははは。帰り方だっさ(笑)満足したかな?(笑)」




私が笑うと、琥珀が私を見た。




「なつめ、あんな言い方したらダメだよ。殺されたらどうすんの」


「殺されても仕方ないって思っちゃった」


「せんせーぼろぼろじゃん」




森川が手を貸してくれたのでやっと立ち上がった。

琥珀が森川の手を払った。



「帰んな、森川」


「はい?俺来たばっかじゃん」


「なつめが気い遣うから」


「たしかにそうだけど」




いや、今はいてくれてバカ発揮してくれたほうが気が紛れる。

できれば帰ってほしくない。




「助けてもらっちゃたし、なんか作るからゆっくりしてって」


「いや、ご飯買ってきたから・・・せんせー座ってな」




森川が心配そうに見ているおかげで気持ちを立て直せる。




「でも出かける用事とかないの?引き止めて大丈夫だった?」


「いや?もともとここに来るつもりだったから」


「そうなの・・・?」


「志穂さんから聞いたっていったじゃん。あいつと別れさせるために俺ら今日会うことにしてた」


「そうだったんだ・・・」



森川が割れた皿を片付けてくれている。


琥珀が近寄ってきて、私を見て、頭を撫でて髪を整えてくれた。

やさしい手だ。涙が出そう。



「なつめ、遅くなってごめんね。もっと早くくればよかった」




その瞬間、キーホルダーのことを思い出した。



「私より・・・キーホルダー・・・」




私の視線を追い、琥珀が割れたキーホルダーに気が付いた。



「あいつにやられたんでしょ?こんなのよりなつめのほうが大事だから」


「もうこれは元に戻んないから」


「またお揃い買えばいい」


「うん」


「仕返しにあの皿割ったんでしょ?」


「うん(笑)」


「なつめは一人しかいないんだから自分のこと大事にして」


「やめてよ、泣いちゃう」


「俺も大事にする。明日からまた一緒にご飯食べれるね」


「琥珀~だいすき~」


「俺も」




琥珀が私をやさしく抱きしめてくれた。



森川が「せんせーやっぱりヤンキーだった?めっちゃ口悪いじゃん(笑)」

と笑って言うと、琥珀が



「これがなつめじゃん。もうスカートもはかなくていいね」




と言った。



「せんせーのスカートださかったもんね(笑)」


「うそでしょ?篠田にも言われたから買いなおしたのに~」


「え、なんで泣くの!?せんせー泣くとこおかしいって!」


「わーん」


「ねえ!あいつより俺のほうが悪いみたいじゃん!やめて!!」





アドレナリンが出ていたのか、気持ちが落ち着いたら体中が痛くなってきた。

意外とダメージを受けていたらしい。

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