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2年前まで同居してた高校生の担任になってしまった  作者: 冴花


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クズの定義

「え、彼氏できたんすか!?」



相澤くんがわかりやすくしょぼんとして森川がにやにやしながらポンと肩を叩いた。


「木戸が聞こえてないフリしてる(笑)おい木戸、聞こえてんだろ」



木戸くんは机に顔を伏せたまま


「これは夢だ、俺が彼氏のはずだ…」



と言っていて、つい笑ってしまった。




私たちのやりとりを一部の女子が見て、私をにらむように見るとひそひそと話し始めた。


最近、その子たちの態度が悪いことは気になっていた。



「先生、どんなやつっすか、俺に似てますか・・・」


「いやお前に似てるかどうか関係ないじゃん(笑)落ち着け(笑)」


「俺に似てますよね、なら俺で良くないっすか?先生~」




相澤くんは何を言ってるんだ(笑)



「ちゃんといいやつなら俺は許す」



森川、お前も何言ってんだ(笑)




今日はデートなので新しいスカートを買ってはいてきた。

それを見て森川が「あーあー、浮かれちゃって」と笑った。








職員室に行くと、数学担当の教師の青山先生が私を呼んだ。

女子と仲が良くて有名な教師だ。

うちのクラスの女子も一緒に話しているのをよく見る。




「担当クラスの生徒から相談があったんですよ。白雪先生が特定の男子生徒をひいきしているとか、タメ口で呼ばせてるくらい親密な関係だから疑ってしまうって。生徒と仲がいいこと自体はいいことですが、ちょっと線引きするようにしたほうがいいかもしれませんね。歳が近い分、そういう風に見てしまう人のほうが多いですから」




なるほどね。一部の女子のあの感じの原因なわけね。

たしかに、琥珀が家にいるせいなのか男子生徒と親しく話すことに抵抗がなさすぎたのかもしれない。



数学教師はちらっと足元を見て、


「最近スカート多いんですね」



と言っていなくなった。










その夜、陸翔くんに相談してみると、


「うーん。他の生徒とはあまり話さないのに男子とだけ話してるんだったらそう思われてもおかしくないかもしれないよね。しかも一応歳が近いから、そういう風に思う人もいるかもしれない」



と言われた。

やっぱりそういうことになっちゃうのか。

ビールを一気に飲み干した。




「俺は生徒から好かれてても嫌われててもなつめのこと好きだよ」




急に呼び捨てでちょっとびっくりした。




「ごめん、急に呼び捨てで。LINEでなつめって登録してるから・・・」


「いや、いいんだよ。呼び捨ては慣れてるし。琥珀なんか最初は『あんた』って呼んでて、急に呼び捨てだったんだから(笑)年下のくせにさ。今もたまに『あんた』って言ってくるし」



笑いながら言うと陸翔くんの顔つきが変わった。




「・・・俺やっぱりなつめちゃんて呼ぶわ」




琥珀の話はもうしないほうがいいのかもしれない。

ビールを一気に飲み干した。



「なつめちゃんて呼ばれたほうが私はうれしいな」



陸翔くんはグラスをかき回しながら



「・・・なつめって字はひらがな?」



と言った。




「んーん、漢字。束みたいな字を縦に並べたやつ」


「ならLINEの名前変更しなきゃな」


「別にひらがなでも漢字でも・・・」




「棗ちゃんね。おっけーおっけー」



機嫌治ったみたい。



「でも心配だな。棗ちゃんのこと」


「何で?」


「いや、酒って人を変えるじゃん。あ、たばこ吸っても大丈夫?」


「うん」




陸翔くんはたばこを取り出した。

前回吸ってなかったから知らなかった。

たばこ吸ってる人、周りにいないからなんか新鮮だ。

今日もおしゃれなバーのようなところだが、周りを見るとたばこを吸っている男女が何人かいた。



「俺の元カノ、アル中だったんだ」


「え、そうなんだ。アル中って、隠れて飲んだりとか?」


「いや。飲んだら気が大きくなるのか知らないけど、飲んだ時だけ逆らってくるしいつも喧嘩になってた。今日は飲まないって決めても結局飲んでたし」



陸翔くんは煙を吐いた。



「だから本当は飲んでほしくない。棗ちゃんにも」


「・・・それは・・・」


「うん、それは無理だから、せめて心配かけないようにしてほしい。やっぱり、他の男の前で酔っぱらったりするのはやめてほしいし」


「うん、それは気をつける」


「ごめん、まだ付き合ったばっかなのにこんなこと言って。トラウマなんだよね。5年とか付き合ってたけど、それが別れた理由でもあるというか」




そうだったんだ。

何年も付き合った経験がないから私にはわからないけど、長い分だけ嫌なところも見えたりする。お互いの許せることもあれば許せないこともあるから目をつぶらなきゃいけないし、それでも何回も同じことで衝突するもんだって志穂が言ってた。




「そろそろ出よっか」



たばこを吸ったまま陸翔くんが立ち上がり、財布を出した。



「あ、うん。あ、今日は私が」


「いや、払うから今日うちに泊まってってほしい」


「え」




まだ早くない?


いや、私が遅いのか・・・?


世の中では付き合ってないのにヤッてる人もいるから普通なのか?


いや、泊まるからってヤるとは限らないじゃん。




陸翔くんは私の腕を軽く引っ張り、私が座っていた椅子を元に戻した。



「同居人のこと気にしてるんでしょ?中学生なんだし大丈夫だよ。てか俺が彼氏なのに、一緒に住んでる人を優先されるの、ちょっとやだな」




ハンガーにかけていたコートを優しくかけてくれた。




「ちょっと過保護すぎ。てか優しすぎるんだよ」




そうなのかな。


私が過保護なんじゃないよ。

琥珀が私に尽くしてくれ過ぎてるんだよ。



「棗ちゃんが家に帰ってこなかったら同居人もきっと遊びに行ったり泊まりに行ったりするんじゃない?」



私がいないほうが琥珀も遊びに行けるしご飯も作らなくていいもんね。


いない日を作ったほうがいいのかな。

私がまっすぐ帰ってきてるせいで気を遣わせているのかもしれない。

なんでそんなことも考えなかったんだろう。



「・・・考えてみる」


「よし。まずはうちで飲み直そ」




陸翔くんは会計を済ませると私の手をつかみ、手を繋いだ。



「・・・ごちそうさま」


「うん。おいしかったね」


「コンビニ寄るよね?それは私に払わせて」




お酒とつまみを買って陸翔くんの家に行った。

袋から物を出そうとすると、腕を引っ張られて抱き寄せられた。



「わっ、びっくりした」


「・・・」



キスされて服を脱がされそうになった。

びっくりして抵抗すると、



「同居人に服を脱がされるのは許せるのに、彼氏の俺がダメな理由がわからない」




と言われ、服を脱がされた。


酔ってるせいなのか緊張はしていない。



でも、やっぱり早くない?

いや、でも私ハタチ越えてんだよな。

世の中の人は10代で初体験を終わらせた人もいるわけだから・・・


私が遅いのか?



こういうときに経験をしておいたほうがいい?

志穂は高校の彼氏の時に処女卒業したと言ってた。



でも好きな人とするべきなんじゃ。

いや、嫌いじゃないから付き合ったんじゃん。

てか、もうちゃんと好きなのでは。

キスされても嫌じゃない。



男の人って、相手が処女だと喜ぶって言ってたな。

ほんとかな。




「・・・私、実は経験がなくて・・・・」


「えっ、まじ」



陸翔くんはしばらく私を見つめた後、やさしく抱きしめた。



「やばい、嬉しい俺。浮かれそう。高校の時なんて、まさか付き合えるとも思ってなかったから」



そっか、高校の時から好きでいてくれたんだ。

嬉しすぎる。

同じクラスだったら付き合ってたのかな。


笑顔かわいい。きゅん。


これが好きってことなのかもしれない。

私も浮かれてる。


いや、陸翔くんだから許せるのかもしれない。

むしろずっと好きでいてくれた人とするなら、これはもう初体験としてはいいことなのでは?




「俺が最初で最後の男になるから。大事にする」




それが私の初体験になった。

どうしたらいいのかもわからず、正直気持ちよさもわからなかった。

他の人が言うほど痛いわけでもなかった。


ただ、最中の記憶と、ずっと「かわいい」と言ってくれたことは何度も思い出した。






後日、志穂と篠田が来た時に付き合ったことを報告した。


「えっまじ!?ヤッたの!?」


「普通付き合ったの?が先じゃない?」


「まじか〜初対面でヤるタイプか、肉食だな〜」



それはいい意味なのか?



「いや〜棗よかったね〜!」


「そいつがいいやつならね。俺知らんし」



横にいる篠田が言って、微妙な表情でビールを飲んでいる。



「あいつ高校だったか専門だったか付き合ってたけど元カノと長かったらしいよ。てか、まさかずっと棗のこと好きだったなんてね~!てかそれなら初対面でもないのか。どうだった?うまかった?」


「はじめてだし、うまいとかヘタとかわかんないよ」


「いっぱいヤるしかないね!!」



篠田が志穂の頭を軽く叩き、志穂が笑った。


棗が冷蔵庫からビールを取り出して、はしゃいでる志穂に渡した。同時に私を見て、




「なつめってクズだったんだね」



と言った。



「はい?」



ビールを受け取った志穂が、私と琥珀を交互に見た。


なんだそれ。クズってなに?

なんで?ヤッたから?




「じゃあヤッた人はみんなクズなんですかね?」


「好きでもない相手とヤッちゃだめじゃん。普通に」


「じゃあ琥珀はまだ誰ともやったことないの?」


「ないけど」


「へえ。てか好きでもない人と付き合ってたやつに言われたくないけどね」


「それは話が違う」


「は?結局一緒じゃん。てかなんで琥珀にそんなこと言われなきゃいけないの。関係ないじゃん」


「関係ないんだ」


「ない」


「俺からしたらそいつは他人だけど」


「いや彼氏だから」


「・・・」




琥珀は私の前にビールを置いた。

同時に志穂が小さな声で「喧嘩しないで」と言った。




クズって、どこからがクズなんだろう。



ほぼ初対面の人と付き合うことだろうか。

ほぼ初対面の人に体を許すことだろうか。

好きでもない人と付き合うことだろうか。




親に他人の子供のように扱われてきた。

そんな親のことをクズだと思っていた。

父親も母親もクズだと思っていた。



そんなやつらと同じくくりにされたことが許せなかった。



私は誰も傷つけてない。相手は喜んでくれている。

何も間違ってないのに。


それなのに、琥珀からクズと言われたのがどうして嫌だったんだろう。






次の日、琥珀は家に帰ってこなかった。



それをきっかけに、どっちかが家にいない日ができていった。



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