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第30章 ― 管理される守護者 ―

 通達は、

 一枚の正式文書として届いた。


 発信元――

 内閣危機対策局。


 件名は、

 無機質だった。


 《特異巨大化現象(通称:ビースト)

 管理・制御計画について》


 E.O.D本部、

 会議室。


 重い沈黙が、

 落ちていた。


 玲奈司令官が、

 ゆっくりと文書を置く。


「……要点を説明するわ」


 ■ 管理計画


 ホログラムに、

 図面が浮かぶ。


 ・顕現前の行動制限

 ・専用拘束フィールドの設置

 ・強制的な顕現抑制装置

 ・必要時の“停止措置”


 関守博士が、

 目を見開く。


「……“停止”とは……

 まさか……」


「……最悪の場合の、

 武力的無力化……」


 誰も、

 言葉を続けられなかった。


 矢守が、

 低く唸る。


「……要するに……

 首輪だ……」


 ■ 命令


 さらに、

 一文が読み上げられる。


 《当該現象の発生源である

 蓮・○○氏は、

 管理下への即時同意を求める》


 志乃が、

 声を荒げた。


「同意!?

 これ……

 脅迫じゃないですか!!」


 玲奈司令官は、

 視線を伏せる。


「……拒否した場合……

 E.O.Dは……

 彼を保護対象から……

 “管理対象”へ移行する」


 その意味は、

 明確だった。


 ――敵対認定。


 ■ 面会


 蓮は、

 別室に呼ばれていた。


 向かいの席には、

 政府特使。


 無表情な男。


「……あなたの力は、

 国家レベルの脅威です」


 淡々とした声。


「だからこそ、

 国家が管理する必要がある」


 蓮は、

 黙って聞いていた。


「従っていただければ、

 市民は守られる」


 一瞬の間。


「拒否すれば……

 あなたは……

 社会の敵になります」


 それは、

 命令だった。


 ■ フェンリルの反応


 《……鎖……》


 フェンリルの声が、

 低く震える。


 《……人ハ……

 結局……

 縛ル……》


 蓮は、

 心の中で答える。


(……知ってた)


 《……受ケ入レルノカ……》


「……まだ……

 決めてない」


 だが、

 フェンリルは、

 わかっていた。


 この“管理”は――

 理性を削るものだ。


 ■ 交錯する思い


 面会室を出ると、

 志乃が待っていた。


「……蓮……

 お願い……」


 言葉が、

 詰まる。


「……縛られてでも……

 生きて……」


 蓮は、

 ゆっくり首を振る。


「……それで……

 守れると思う?」


 志乃は、

 答えられなかった。


 ■ 決断の猶予


 玲奈司令官が、

 蓮に告げる。


「……返答期限は……

 48時間」


 蓮は、

 短く頷いた。


「……考えます」


 その背中を、

 誰も引き止めなかった。


 ■ 夜の対話


 屋上。


 風が、

 冷たい。


 《……蓮……》


 フェンリルの声は、

 怒りを含んでいた。


 《……俺ハ……

 管理サレル存在ジャナイ……》


「……俺もだ」


 《……拒メバ……

 戦ウコトニナル……》


「……そうだな」


 蓮は、

 夜空を見上げる。


「……でも……

 鎖を受け入れて……

 守るフリは……

 したくない」


 フェンリルは、

 しばらく沈黙した。


 やがて――

 低く、はっきりと告げる。


 《……ナラバ……

 オ前ト……

 共ニ立ツ……》


 白銀の鼓動が、

 静かに、しかし確かに鳴る。


 ■ 分岐点


 48時間後。


 蓮は、

 一枚の文書を手に、

 会議室に立つ。


 署名欄は、

 空白のまま。


 彼は、

 ペンを置いた。


「……俺は……

 管理される守護者には……

 ならない」


 玲奈司令官が、

 目を閉じる。


 政府特使が、

 冷たく言った。


「……では……

 あなたは……」


「……わかってます」


 蓮は、

 まっすぐ前を見た。


「それでも……

 立ちます」


 この瞬間。


 蓮は、

 “公式な守護者”ではなくなった。


 だが――

 “守る存在”であることは、

 やめなかった。


 白銀の影が、

 彼の足元で揺れる。


 物語は、

 対影 × 対人類権力

 という二重の戦いへ突入する。


 ――第30章・終。

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