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第25章 ― 祈りと拒絶、その狭間で ―

 翌朝。


 都市は、

 一見すると平穏を取り戻していた。


 通学路には子どもたちが戻り、

 店のシャッターも上がる。


 だが――

 人々の会話は、

 昨日の出来事から離れなかった。


「……ビーストが出るの、

 遅かったんじゃないか?」


「いや……

 出てくれただけでも……」


「でもさ……

 あれ、怖くなかった?」


 白銀の巨影は、

 “希望”と同時に、

 不安の象徴にもなっていた。


 ■ 影側の評価


 E.O.D本部。


 管制室のスクリーンに、

 例の黒い仮面が映し出される。


 ――第二都市試験、評価ヲ通達スル。


 室内が静まり返る。


 ――結果:部分成功。

 器ノ介入ニヨリ、

 崩壊規模ハ抑制サレタ。


 矢守が低く呟く。


「……“部分”だと……」


 ――但シ、

 精神遮断個体ノ発生ヲ確認。

 選択ニ伴ウ犠牲……

 許容範囲内ト判断スル。


 志乃が叫んだ。


「許容……!?

 人を……数で測るな……!」


 仮面は、

 何の反応も示さない。


 ――次段階試験ニ向ケ、

 観測ハ継続スル。


 通信は、

 一方的に切れた。


 ■ 世論の分断


 その日の午後。


 ニュース番組は、

 一斉に“ビースト”を取り上げた。


『守護か、脅威か――

 白銀の巨人の正体とは』


『E.O.Dはなぜ、

 即時投入を行わなかったのか』


 SNSには、

 称賛と批判が渦巻く。


 ――「ビーストがいなかったら、

 もっと被害が出てた」


 ――「結局、

 人が犠牲になってるじゃないか」


 ――「あれは守護神なんかじゃない。

 化け物だ」


 蓮は、

 休憩室の片隅で、

 画面を伏せた。


 志乃が、

 そっと声をかける。


「……見なくていい」


 蓮は、

 小さく首を振った。


「……見ないと……

 俺が何を背負ってるのか……

 わからなくなる」


 ■ 孤独


 夜。


 本部の屋上。


 蓮は一人、

 街の灯りを見下ろしていた。


 《……蓮……》


 フェンリルの声が、

 静かに響く。


「……俺……

 間違ってたのかな……」


 《……間違イ……

 ト言ウ言葉ハ……

 人ノモノダ……》


 蓮は苦笑する。


「でも……

 俺は人だよ」


 胸の奥が、

 じくりと痛む。


「守った人より……

 守れなかった一人のほうが……

 ずっと……重い……」


 《……ソレデモ……

 オ前ハ……

 立ツ……》


「……ああ」


 蓮は、

 空を見上げた。


 雲の向こうに、

 星は見えない。


 だが――

 確かにそこにあると、

 信じるしかなかった。


 ■ それでも


 翌日。


 E.O.D内で、

 新たな通達が出る。


 ――都市試験への対応は、

 原則として人員主導。

 ビースト出動は、

 司令部と本人の同意を必要とする。


 玲奈司令官は、

 蓮に言った。


「……厳しい立場になるわ」


 蓮は、

 静かに頷いた。


「……それでも……

 ここにいます」


 志乃が、

 その隣に立つ。


「……一人じゃない」


 蓮は、

 ほんの少しだけ笑った。


(祈る人も……

 拒む人も……

 どちらも……守りたい……)


 胸の奥で、

 白銀の鼓動が――

 小さく、だが確かに応えた。


 都市試験は、

 次の段階へ進む。


 それは、

 “数”ではなく――

 “選ばれる理由”を問う試験。


 蓮の孤独は、

 より深くなった。


 だが同時に――

 彼の覚悟は、

 より確かなものになっていた。


 ――第25章・終。

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