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第22章 ― 制約の名、守るための選択 ―

 E.O.D本部・解析管制室。

 戦闘後の静寂が、

 かえって緊張を強めていた。


 巨大スクリーンには、

 先ほどの戦闘データが無数に表示されている。


 関守博士が、

 疲れた声で言った。


「……ビースト・フェンリルの顕現は成功。

 ただし――

 明確な“制約”が確認された」


 矢守が腕を組む。


「制約……?」


 関守博士は、

 蓮のバイタルデータを指し示した。


「顕現時間、最大三分十二秒。

 それ以上は、

 蓮くんの自我と肉体が耐えられない」


 室内がざわつく。


「さらに言えば……

 連続使用は不可。

 回復には、

 最低でも数時間を要する」


 志乃が思わず言った。


「そんな……

 それじゃ……」


「万能の守護者ではない、ということだ」


 玲奈司令官が静かに言った。


 蓮は黙って聞いていたが、

 やがて一歩前へ出た。


「……それでいいです」


 全員の視線が集まる。


「俺は……

 全部を一人で守ろうなんて、

 思ってません」


 蓮は、

 自分の手を見つめる。


「フェンリルと一緒に戦える時間が、

 限られているなら――

 その時間を、

 一番必要な場所で使う」


 矢守が小さく笑った。


「……相変わらず、

 覚悟だけは一流だな」


 ■ E.O.D 新方針


 玲奈司令官が、

 会議卓の中央に立つ。


「E.O.Dは、

 ビーストを“切り札”として扱わない」


 その言葉に、

 幹部たちがざわめく。


「災獣対応は、

 あくまで我々が主導する。

 ビーストは――

 “最後に立つ守り”」


 玲奈は蓮を見た。


「あなたは、

 兵器でも象徴でもない。

 戻ってくる場所を、

 必ず用意する」


 蓮は深く頭を下げた。


「……ありがとうございます」


 志乃は、

 その背中を見て、

 静かに息を吐いた。


(独りにしない……

 もう……)


 ■ 影からの布告


 その時――

 管制室の照明が、

 一瞬だけ暗転した。


「何だ!?」


 次の瞬間、

 スクリーンにノイズが走り、

 黒い仮面が映し出される。


 矢守が叫ぶ。


「通信割り込み!?

 どこからだ!!」


 低く、

 無機質な声が響いた。


 ――告知スル。

 境界干渉者・蓮。


 志乃が息を呑む。


「……アバターズ……」


 画面の奥で、

 影が揺らめく。


 ――不完全顕現……確認。

 第三ノ選択……継続中。


 蓮は一歩前へ出た。


「……用件は何だ」


 ――布告ダ。

 次ノ侵攻段階ヨリ……

 “都市単位”ノ試験ニ移行スル。


 室内が凍りつく。


「都市……単位……?」


 ――汝ガ守ル価値ガアルト

 信ジテイルモノヲ……

 段階的ニ……問ウ。


 志乃が叫んだ。


「そんな……

 人を……試験みたいに……!」


 影は、

 感情を持たぬ声で続ける。


 ――選別ハ……

 世界ノ常。

 汝ガ拒ムナラ……

 ソノ意思ヲ……示セ。


 画面がノイズに覆われ、

 通信は途切れた。


 ■ 覚悟


 重苦しい沈黙。


 玲奈司令官が、

 蓮を見つめる。


「……どうする、蓮くん」


 蓮は、

 少しだけ目を閉じた。


 頭に浮かぶのは――

 街の風景。

 人々の声。

 志乃の泣き顔。

 フェンリルの咆哮。


 やがて、

 静かに目を開く。


「……やります」


 短く、

 だが揺るぎない声。


「試験でも、選別でも……

 そんな理屈で、

 街を壊させない」


 拳を握る。


「フェンリルが囚われていても、

 俺が不完全でも――

 守るって決めた以上、立つ」


 志乃が、

 そっと蓮の隣に立った。


「……一人じゃないよ」


 矢守が頷く。


「E.O.Dもだ」


 玲奈司令官は、

 小さく微笑んだ。


「――決まりね。

 これよりE.O.Dは、

 影側“都市試験”に対抗する」


 蓮は、

 胸の奥で鳴る白銀の鼓動を感じながら、

 空を見上げた。


(フェンリル……

 まだ完全じゃなくていい。

 俺は……

 ここで、立ち続ける)


 遠くで、

 雷のような音が鳴った。


 それは、

 次の戦いの始まりを告げる――

 前兆だった。


 ――第22章・終。

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