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魔法使いの杖転生

作者: リィズ・ブランディシュカ




 詩の間際、次は魔法使いになりたいと思った。


 生まれ変わったら、凄腕の魔法使いになりたいです、神様!


 なんて命が消えゆくまでに、神頼みした。


 けれどまさか、魔法使い「の杖」になるとは思いもしなかった。


 本命じゃないどころか、しかも物に転生するなんて。


 私の転生を決めたの、どこのどなたか存しませんが、どうしてこんなおかしなことをしたんですかねぇ。





 国を傾けるような危険な生物、邪竜エンドドラゴンの討伐を果たした女剣士。


 それが前世の私。


 でも、魔法の才能はからっきしで、ないものだからこそ憧れていた。


 何か方法があるなら、魔法使いになりたいと思っていた。


 それが、こんな歪んだ形でかなえられるとは……。


 邪竜から受けた時限発動的な死の呪いにかかり死亡し、気が付いたら第二の人生スタート。


 私は杖として生きていく事になってしまった。


 それでも、凄腕の魔法使いに使われていたならまだましだった。


 なのに、魔法の杖ショップで飾られる暇な人生?杖生だなんて。


 店も店で、人通りの少ない裏通りの、目立たない場所にあるからいけない。


 そもそも来店する人がいないし、店主はただ老後を暇つぶししながら生きていくだけのやる気のないあんちゃんだし。


 前途多難過ぎた。


 けれど、天は私を見放さなかったらしい。





 ある日、とてもすごいオーラをまとった魔法使いの男性がやってきた。


 あ、オーラと言うのは魔力とか生命力みたいなもの。


 それがでかくて大きいほど、才能がたっぷりある証明になるのよ。


「道に迷ったときは、どうなるかと思ったが、まさかこんなところに杖を売っている店があるとはな」


 でも、少し性格が傲慢で尊大。


「おい店主、いいものがあったら俺が買ってやるから、全部目の前にならべやがれ!」


 わたしが拾われてから数十年、よぼよぼになった老人店主のあんちゃんにあれこれ指図して、ふんぞり返ってる。


 まぎれもないすごい魔法使いだ。


 と、男がまとっているオーラが語り掛けてくる。


 けれど、こんな人とずっと一緒は嫌だな。


 なんて考えていたら、また来店者だ。


「こんにちは」


 今度はオーラが非常に弱い。


 礼儀正しい挨拶は好感が持てるが……。


「あの、一番安い杖でいいので私に売ってください」


 声の主は、かけだし魔法使いと言う感じの、貧相なローブととんがり帽子をかぶった女の子だ。


 オーラが弱いから、残念だけどあまり成長はしないだろうことはわかる。


 そんな女の子を見た、先客の男が文句を言った。


「なんだガキ、俺が先客だ。お前は出直してこい!」


 そして、お店の中をいったりきたりしてるよぼよぼ店主の背中を蹴りつけて、「お前がさっさとしないから、こんなガキの相手しなくちゃいけないんだろ。早くしろ」と怒鳴りつけた。


 女の子は、蹴りつけられた店主を労わって、「暴力はダメです」と男に向かって立ち向かう。


 その意気やよし。


 どうせ長い間待ってても、人なんてあんまりこないんだから、もう今日使い手を決めてしまおう。


 私は、オーラの強い男ーーではなく、女の子の手元に飛んでいった。


 彼の杖としてなら、きっとそこそこの名誉を手に入るだろうし、大くの功績を残せるだろう。


 けれど、彼の性格を考えれば、その活躍の影で踏みつけられたり、虐げられたりする者達も増えてしまいそうだ。


 そんな使い手なんて私はごめんだ。


 そういうわけで、私は女の子の手の中におさまることにしたのだ。


「な、杖がかってに! まさか意思のある武器だってんのか」


 男は驚いて、私を見る。


 この世界には自分で使い手を決める武器がある。


 魂が宿っていると言えるほどのものじゃないけれど、うっすらとした自我みたいなのは確かにあるらしい。


 そういった武器は大抵性能が良くて、使い勝手の良いことが多い。


 だから、男は自分が杖の主にふさわしいと思ったのだろう。


「俺によこせ! 弱そうなお前なんかより、俺の方が使いこなせる」


 しかし、私は彼の道具になるなどごめんだ。


 女の子の潜在能力を引き出して、魔法の発動をアシストする。


「力が湧いてくる……?」


 女の子は、つむじ風を起こして、男の人を吹っ飛ばした。


 男の人は店の壁にぶつかって、気絶。


 油断していたのもあって、ノーガードだったのだろう。


 うんともすんともいわない。


 それは、大魔法使いと言えるほどのものの威力ではないけど、女の子にとっては感激ものだったらしい。


「あなたが力を貸してくれたのね? ありがとう! 私の杖になってくれるの?」


 私は肯定するように杖の周りを光らせる。


 すると、女の子は笑顔になって、ぎゅっと私を抱きしめた。


「これからよろしくね。大事に使うからね」


 こうして私の杖生は、長い無の期間を経て、正式に始まったのだった。


 女の子のオーラを考えると、国を救ったり、邪竜を倒したりなんてできそうにないけど、それでもいい。


 きっとこの子なら、誰かを傷つけるような魔法の使い方なんてしないはずだから。



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