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7-16. 【閑話】かわいいよね
あてがわれた一人部屋で、メフィストは肌寒さを覚えた。それが嫌で、ふらりと外へ散歩に出かける。
冬が着実に近づいてきていた。外の気温は当たり前のように、部屋の中よりも低い。けれども、人の往来を眺めると先程まで感じていた肌寒さが薄れたような気持ちになる。
露店が並ぶ通りを、目的なくふらふらと彷徨う。
ふと、柔らかなバターの匂いが漂ってきた。香りに誘われて、露店を覗いてみれば、そこには大ぶりなプレッツェルが並んでいる。
(グレーテルの好きなものだ)
思い返せば、コスモスの村でもプレッツェルを食べたがり、舞踏会でもプレッツェルを探していた。
(買って帰ったら、あの子は喜ぶだろうか?)
温かなミルクを添えて差し出せば、間違いなく、「メフィストも一緒に食べる?」と小首を傾げて、ふわりと笑って、誘ってくれるだろう。
想像して、ふっと口元に小さく笑みが浮かんだ。
大聖堂では、久しぶりに人間を甚振る良い機会に恵まれたのに。グレーテルの、驚いたような、怯えたような表情が目に入った瞬間に、急速に気持ちが萎えてしまった。
(まぁ……)
大ぶりなプレッツェルをひとつ、手に取る。
(照れたり、笑ったりしてる時のほうが、かわいいよね)




