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6-13. 【閑話】名前
光とともに、ディートリヒに斬られた傷がみるみる治っていく。
自分を抱き締める、ひと回りほど小さな身体を、メフィストはじっと見つめた。
(この子は、ファウストではなく)
黒と紫のメフィストを表したドレスに身を包んだ姿。舞踏会のために綺麗に編み込んだ、茶色の髪。それは、チョコレートのように、甘く誘う色。
(――俺を選んだ)
どうせ、嫌われると。ずっと考えていた。
ファウストの転生者に会ってしまえば、前世の記憶が引き出されてしまうはずだと。
嫌悪されようと、恨み言を吐かれようと、この力を手に入れるために、逃さないよう契約で縛ったのだ。
生まれ変わりなんて、肉体が変わるだけで、他は同じようなものだと考えていたのに。
(この子は、マルガレーテじゃない)
霊と魂が同じでも、違う人間。
(グレーテルだ)




