4-12. 【閑話】双子の弟
時は、辻馬車に乗るよりも少し前に遡る。
一行が駅へ向かう道すがら、ルシフェルがふと、何気ない調子でメフィストに声をかけた。
「そういえば、最近、ミカエルに会ったか?」
グレーテルが誰だろう、と首を傾げる隣で、メフィストが首を横に振った。
「会ってないね」
「そうか。あいつめ、どこをふらふらしてるんだ……」
ルシフェルの眉間にシワが寄る。
これはまた、聞かなければ教えてもらえなさそうだと踏んだグレーテルが口を挟む。
「あの、ミカエルさんっていうのは……?」
「私の双子の弟だ」
「ルシフェルさんの?! じゃぁ、堕天使?」
「いや、あいつは天使だ」
「おぉ……」
グレーテルは目を輝かせる。
まだ見ぬ天使――優しく、穏やかで、包容力のある存在。そんな人物像を思い浮かべて、ほんのり頬が緩んだ。
「ルシフェルさんに似てますか?」
「顔は似ているな。ミカエルは金髪だが」
ルシフェルが淡々と答える。すると、その隣でメフィストが肩をすくめて言葉を挟んだ。
「眉間にシワは寄ってないけど、笑顔の割によく額に青筋が立ってる」
ん? とグレーテルは首を傾げる。ルシフェルが苦笑交じりに続けた。
「まぁ……短気な方ではあるな」
「短気っていうか、すぐキレる」
「言葉遣いは直せと、再三注意しているんだがな」
「言葉だけじゃなくて、態度も悪いよ。すぐに手や足が出るところ、どうにかならないの?」
「うむ。次に会ったら注意しておこう」
やり取りを聞きながら、グレーテルは眉をひそめる。しばし考えてから、念のために、確認した。
「あの…………天使の話だよね?」
ルシフェルとメフィストは同時に言う。
「あぁ」
「そうだよ」
訳がわからない。
グレーテルは、ますます混乱するのだった。




