9.報復
第九話
翌朝
俺と書記ちゃんは基地から数キロ東の海岸沿いに来ていた。
「それで司令、ここに何を建てるんですか?」
「出撃する前に衛星を打ち上げるための施設を出しておこうと思ってね。」
「そういえば一昨日言ってましたね」
「あぁ、やっぱ出来るだけ早く打ち上げたいからね」
決定を押すと目の前に大きな発射台が何基も並んでいた。
「す、すごい数ですね。どこの施設ですかこれ」
「アメリカのケープカナベラル宇宙軍基地だよ」
「アメリカらしい光景ですね」
「冷戦時代にソ連と競い合ってたからね〜」
「航空宇宙基地」と名付けた後、GPS衛星、通信衛星、偵察衛星を4基ずつなるはやで発射するように指示して輸送ヘリで第二戦略港へ向かった。
第二戦略港 作戦室
「いやぁあっちで結構時間食っちゃったなぁ」
「私もあんなに時間がかかるとは思いませんでした」
「あ、司令官殿お待ちしておりましたぞ」
「すまんすまん。じゃあ最終の確認だけど各艦異常無いよね?」
「DDG各艦異常ありませんでした」
「補給艦2隻とも異常ありません」
「ミズーリ、異常ありません」
「ティルピッツ異常無し」
「武蔵、異常ありません」
脳内スクリーンに表示さてる大和の状態を確認する
「了解。うん大和も異常無さそうだな」
「あと航路だけど今日は天候が少し…」
「…てことで補給艦は途中で帰投してもらうことになってるから。質問ある者は?」
「「「…」」」
「ではこれにて解散!頼むよ皆んな!」
「「「了解!」」」
「「「Yes, sir!!!」」」
「司令官殿、何かあったらすぐ帰って来てくださいよ」
「常に無人機が上空を飛んでるから大丈夫だと思うよ?」
「司令、あの約束覚えてますか?」
「新婚旅行のこと?もちろん覚えてるよ。」
「帰って来たら行きましょうね司令」
「今すごい大きなフラグを立てられた気がするんだけど」
「とにかく無事に帰って来てください」
「あ、ありがとうね(なんかめっちゃ心配されてる?)」
出撃時刻
艦艇達が錨を上げて出港し始める。
俺は防空指揮所で出港していく艦達を眺めていた。
「隣のティルピッツも動き出したか。あ、こっちにもにもタグボート来た」
大和の巨体が動き始める
「うーん良い眺めだ。ん?」
岸壁や防波堤、艦の甲板に職員や隊員、整備士達が集まり見送りの声を送っている。
「こっちも返事するか」
返事の汽笛を鳴らす
ボォーーーーー…..
沖に出た艦隊は陣形を組み目的地を15ノットで目指した。
↑陣形図
1時間後
ランディア王国海軍 輸送船ローレン
輸送艦ローレンは魔王軍との戦いで最前線になっていたアディスタ島から隣のラグーナ島へ負傷した兵士達を送る途中、天候が急転し暴雨、4~6mの波、そして20mの風に晒され北の方へと徐々に流されていた。
↑輸送船ローレン航路図
「おい!ちゃんと帆を引け!船が流されてるぞ!!」
「このままじゃ船が持たないぞ!」
水飛沫が甲板に散り甲板にあったものは全て流された。
乗員達は自分にロープを巻き付け必死に帆を引っ張っていた。
「まずい、このままじゃ禁足地に…」
幸い、嵐は収まり始めた。
「おい、お前は負傷兵の様子を見て来い」
「はい!」
「なんか急に暑くなって来たな…」
「船長!」
「今度はなんだ!!」
「12時の方向に何かあります!!」
「あっちは禁足地じゃなかったか?」
見張からの連絡を受けた船長は単眼鏡で確認する。
「あれは…島か?影がいくつもあるが….」
「ここら辺に島は無いと聞いていましたが….」
「いや、動いてるぞあれ…船….なのか?」
「さらに接近して来ます!」
雨も止み暗かった空が晴れ始め、太陽が影を照らし姿を見せ始めた。
「…!面舵だ!面舵一杯!!」
「な、何ですかあれ…!」
「俺にわかるわけねぇだろ!!それより魔影器であれを撮れ!!」
「は、はい!!」
謎の船団は陽光に照らされ輝き異様な威圧感を放っていた。
「まるで城だな…生きて帰れるのかこれ…」
「船長!魔影器持ってきました!」
乗員が魔影器で謎の船団を撮り始めた。
「上は信じるかねぇ」
「魔晶画は偽造困難ですから信じてくれると思いますが…」
「船長!船団中央の船に異変あり!何か動いてます!」
「何だあれは…」
「せ、船長…あれって大砲じゃ…」
船団中央の船を見ると3本の巨大な筒がこちらに向こうとしていた
「まずいまずいまずい!!お前ら帆を全部張れ!!退避するぞ!!」
「撃ってきました!!」
見張が言った瞬間、閃光と爆音と同時に船の後方で巨大な水柱が3本立った。
「あんなの当たったらいちころですよ!!」
「このまま突っ切るぞ!!」
輸送船ローレンは全速力でその場を離脱した。
「司令官、沈めなくて良かったんですか?御命令あればこのティルピッツが今からでも沈めますよ」
「いや、どの道いずれ表舞台に出るんだから良いさ。それに、多分あの船は報告にあったこの先の島の船だろ?噂が流れればあちら側から接触してこようとしてくるはずさ」
「なるほど、それで泳がせようってわけですね。」
「そうそう。まぁバケモンが出たらその時は頼むよ」
「是非お任せください」
「頼もしいね〜」
「あ、もう補給艦達には帰還してもらおうかな。作戦室、護衛の戦闘機を補給艦2隻につけてくれ」
「こちら作戦室。了解しました」
翌日 早朝
艦隊は夜明け前に攻撃地点に到着した。
「こちら旗艦大和、これより戦艦4隻による艦砲射撃を実施する。各レーダー保護のためDDGは後方に退避し警戒を継続せよ。」
「「「了解」」」
「各艦射撃用意。弾種、HE(榴弾)を装填」
作戦室から目標の位置が届けられる。
「ミズーリ、ready to fire!!」
「武蔵、砲撃準備完了」
「ティルピッツ、準備完了しました」
「よし、大和も準備完了」
「各艦攻撃始め!!」
ドドォオオオオオオオンッ!!!!
夜明けと同時に4隻が放った砲弾は沿岸部へ飛んでいった。
魔王軍 宿営地 司令部
人間の大陸に魔王軍が上陸して半年、人間達は敗北に敗北を重ね内陸へ後退。沿岸部には立派な魔王軍の陣地が築かれていた。
司令部内では指揮官のクレールが戦況報告を受けていた。
「現在順調に進行できています。数日前まで難航していた箇所も現在は攻略できています。」
「そうか、では後は王都を目指しつつ周辺の都市を今まで通りに落とせ」
「仰せの通りにクレール様。では将校達に伝えて参ります。」
「しかし、今日は寒いな。」
そんな中、陣地から少し離れた所を巡回中だった兵士達は突如北の地平線に現れた閃光に困惑していた。
「なぁ、今まであんなところで雷なんて起きなかったよな?」
「あぁ、俺も初めて見たぜ」
「一応報告しとくか?」
「いや、もう他の奴がもう報告してるだろ」
ヒュー…
「なんの音だ?」
ドドドォオオオオオオオンッ!!!!
「何だ!?」
「何が起きてんだ!!」
夜明けと共に突然彼らの宿営地が次々に爆発し始める。
目で砲弾を捉えることは困難な為、彼らには急に宿営地が次々と爆発しているように見える。
「と、とにかく逃げよう!」
「な、なんて!?」
爆音のせいで上手く聞き取れない。
「とにかく!逃げよう!!」
「逃げるってどこへ!?」
「前線の拠点にだよ!」
「なんで前線に行くんだよ!!」
「ここにいるよりマシだろ!!」
ドォオオオオオオオオンッ!!
数十メートル先で爆発が起き2人は吹き飛ばされた。
「うっ…くっそ…おい、大丈夫…か…」
そこには後頭部に何かの破片が突き刺さった彼が横たわっていた。
「おい嘘だろおいっ!!起きろって!!おいっ!!」
何度も揺さぶっても彼は起きない。
「子供が待ってるんだろ…起きろよ…」
ドォオオオオオオオオンッ!!
彼は爆発に巻き込まれ意識を失った。
魔王軍 司令部から10kmの前線基地
ドォオオオン…
「一体何が起きてんだ…」
爆発音は前線基地にまで響いていた。
「た、大変です!!沿岸の司令部が壊滅しました!!」
「何!?クレール指揮官はどうした!!」
「消息不明です!!」
「この間から一体なんだってんだ…」
「人間達に攻撃されたとしか思えん…」
「しかしどうやって?」
「飛龍を飛ばすか?」
「他に手は無いな。よし伝令!飛龍に沿岸部と周辺を偵察させろ!」
「はっ!」
「まさか司令部を直接叩くとは人間達も思い切ったな」
「だが人間達に一切前触れ無く司令部を叩くなんてことできるか?」
「実は例の大爆発は新たな勢力がこの大戦に参戦したという噂が上では流れてるらしいぞ」
「新たな勢力だと?」
「あぁ、噂だがな」
「とにかく、こうなったら一旦兵を引かせるか…?」
「いや、それは人間達に何かあったと思われるだろう」
「とにかく上層部から命令が来るまで現状維持しかないだろ」
砲撃は1時間続き砲身からは煙が立っていた。
「司令部と思われる拠点及び周辺の陣地や艦船の殲滅を確認しました」
「司令官、内陸の方も攻撃しますか?」
「うーんそうしたいけど今回はこれで終わり。皆んな帰るよー」
「了解しました」
「ここまで一方的とは…初めてだよ…」
瓦礫にもたれている指揮官のクレールは左腕を失い、さらに彼の魔力を持ってしても回復が遅れる程の重傷を腹部に負っていた。
「何も気配が無いが、もしまだいるならせめて姿を見せてくれても良いだろうに…ん?」
クレールが虚空に呟くと、地平線の向こうに何かが動いてるのが見えた。
「ふっ。そこか。随分と大きな相手じゃないか…」
20分後 旗艦 大和
「あー良き天気。心安らかn」
「こちら作戦室。司令官、グローバルホークから報告です。現在そちらへ何者かが向かっています。」
「敵か?」
「例の沿岸部から向かって来たので恐らくそうかと」
「報告ありがと。念のため全ての航空機をすぐに稼働できるようにしといてくれ」
「了解しました」
「司令攻撃しますか?」
「お、書記ちゃん久しぶり。いや、相手がどう出るか知りたい」
「さてさて、どんな敵が来るのかな」
「うん。何で生身で飛んでるのかな。あ、異世界だからか」
「ん?あれは…なっ…」
ドオオオオオオンッ
「ティルピッツ被弾!!」
突如閃光がティルピッツの艦中央に被弾した。
「ティルピッツ!大丈夫か!」
「こちらティルピッツ。幸い艦中央の装甲部に被弾したので被害ありません。しかし負傷者が数名出たとのことです」
「あれが現代艦に当たったらマズイかもな」
飛んできた男はティルピッツと大和の間で止まった。
「君たちかね?我々の拠点を攻撃したのは」
「急に攻撃してくる人に答える筋合いは無いっ!」
「司令、史上最大のブーメラン刺さってますよ」
「君たちが我が拠点を攻撃したのはわかってる。あの一方的な攻撃からして例の大爆発も君たちがやったのだろう?」
「やっばいすごいバレてるんだけど。て、あんた誰よ重症みたいだけど」
「我が名はクレール。君たちが攻撃した拠点の指揮官だ」
「私はこの艦隊の司令官だ。それと言いがかりはやめて頂きたい。俺たちは観光でここに来ただけであってだな」
「司令官、無理があろうかと」
「だってあんなバケモンと戦いたくないし!!」
「まだ白を切る気か。まぁ良いどうせ私はもう持たん。なら、せめて残り力で一矢報いれれば勲章ものだろう」
「なぁ書記ちゃん聞いた?あの人一矢報いるとか言ってるんだけど」
「滑稽ですねティルピッツに傷一つ付けれない奴が一矢報いようなど夢のまた夢ですよ」
「だよねー腕ちぎれて気がおかしくなっちゃったのかな?」
「あのー、そんな状態でどう一矢報いるのかな?」
「この船に傷をつけることはできなくとも、君に傷を負わせることはできるだろう。まぁ、今の私では君にも傷を負わせることは難しいかもしれんがね」
クレールの右手が光だす。
「あ、やば」
「司令っ!各艦攻撃開始!!」
「間に合いません!」
「せめて君だけでも…」
光の槍が和宏のいる左舷艦橋側面甲板に向かって投げられる。
大和の左舷艦橋側が爆煙に包まれと同時にクレールは力尽き海面へと落ちていった。
「司令!大丈夫ですか!?」
「大丈夫だよ書記ちゃん」
「司令、お怪我ありませんか?」
「あぁ、これが守ってくれたよ」
和宏の前にはポケットディメンションで出された16”/45 40.6cm Mark6三連装砲塔の正面装甲の部分が出されていた。
「いやぁ今のはやばかった。ってあいつどこいったんだ?」
「クレールと名乗る男でしたら海に落ちて現在大和後方を漂流中です」
「まぁあの状態じゃもう助からなそうだしほっとくか」
「いえ、司令の命を危険に晒した男です。何としてでも助け出し死刑に処します」
「そ、そうか。じゃあミズーリで緊急の治療をしてから輸送ヘリで送ろうか」(書記ちゃん声めっちゃ低くなってたな…)」
「わかりました。では司令の帰投をお待ちしています。」
「うん、俺も早く書記ちゃんに会いたいから全速力で帰るわ」
クレールはミズーリに救助され緊急治療を受けた後、輸送機で基地へ送られた。
更新遅れましたm(_ _)m