5.核
第五話
※胸糞です。
翌朝 午前8時前
作戦室
「そろそろですね司令」
「そうだな、えーっとあと15分だな」
モニターには魔王城から60km程離れた高度3000mの場所からグローバルホークによって撮られている偵察映像とオハイオが潜ってる海上が映し出されていた。
「もう8時前なのになんか薄暗いな。曇ってるわけでもないのに」
「確かにおかしいですね。」
刹那、オハイオが映されてるモニターの端で爆音と共に巨大な水柱が二つ立った。
「な、何が起きた?」
「オハイオの原子炉が吹き飛んだのでは?」
「HAHAHA☆ 書記ちゃんはブラックジョークが好きだねぇ」
「司令官、オハイオから連絡です。『正体不明の巨大生物が本艦に近づいて来たため魚雷で対処した』とのことです。」
「正体不明?魔物か何かか?」
数分前
原子力潜水艦オハイオ
「まさか我々がWW2以降初の核攻撃をすることになるなんて…」
「命令なんだ仕方ないだろそんなこと言ってる暇あったらソナーを確認してろ」
「Yes, sir. ん..? What…?キャプテン、ソナーに感あり。アンノウン接近中。」
「アンノウンだと?」
「はい、登録されたことがない音です。生物だとは思いますが」
「生きているならキルできるな。torpedo ready!!!」
「Aye, sir!! 魚雷戦用意!!」
「1番2番発射用意」
「1番2番発射用意よしっ!!」
「Fire!!!」
「魚雷命中まで20秒。」
「15秒」
「10秒」
「5秒」
「魚雷、ヒットしました。ターゲット、悲鳴をあげて沈んでいきます。」
魚雷爆発の衝撃で艦が少し揺れる
「一体何だったんだ…?まぁ良い。全艦に告ぐ本艦は予定通り15分後の核攻撃を実施する。各員警戒態勢を維持せよ。おい、今のことを上に報告しろ。それと深度を120から210にしろ」
現在
作戦室
「そう言えば晴れたな」
「晴れましたね」
「司令官、オハイオからです。『本艦に被害無し。作戦続行可能』とのことです」
「おー良かった良かった。結局何だったんだろうな。海面には何も浮かんでこないし。」
「クラーケンだったのかもしれませんね司令」
「異世界だし案外あり得そうだなぁ。」
「そうだ書記ちゃん、今度クラーケン見つけたらクラーケン焼きなんてしてみる?」
「わぁ♪美味しそうですね♪」
「「 HAHAHAHA 」」
「「「「(緊張感無いなぁ)」」」
この世界の人が聞いたら狂人だと思われるでしょう。
攻撃10分前
再び原子力潜水艦オハイオにて
「そろそろだな」
「はい、発射命令はすでに受けています。」
「確認コードを出せ」
「Aye, sir」
「戦略ミサイル1~2番発射準備、深度を210から250にしろ」
「Yes, sir. 戦略ミサイル1~2番発射準備、深度210から250!」
「発射準備完了まで残り5分です」
「コード一致しています」
「指令書と認める」
「深度230を通過」
攻撃3分前
「こちら発射キーです」
「よし、副長良いな、同時にだ」
「Aye, sir」
「各員、異常無いな」
「「「「異常無し」」」
攻撃時刻
作戦室
作戦室は静まり返っていた。
「時間だ」
『SLBM Trident II 弾種“W88” 2発、発射。』
今更だが少し緊張してきた
「司令、緊張してるのですか?」
「あー少しな」
ドボォオオオオンッシュッゴォオオオオオッ!!!!!!
その時、海面をこじ開けるかの如くSLBMが勢いよく飛び出して彼方へと飛んでいった。
30分前
午前7:30頃 魔大陸 サモン地区 クラ村
「ララー?起きなさーい!」
「ん…んん…ぁ…朝…?」
外はまだ薄暗い。まだ寝てても良いじゃないかと思いつつララは起きた。
「あれ、暗いというか曇ってる?」
とりあえず着替えて一階に行くことにした。
「ぉはよーお母さん。あれ?お父さんは?」
「おはようララ。お父さんならもう駐屯所に行ったわよ。ほら、朝ごはんもうできてるわよー」
「またお魚ー?」
「文句言うんじゃないの。他の地区じゃお魚なんて中々食べれないのよ?」
サモン地区は周りに山とミネラル豊富な大きい湖があり魚がよく漁れる魔大陸の数少ない地域の一つなのだ。
海の魚は殆ど貴族に売られるので海の近くに住んでいても庶民は中々食べられない。
だからこの湖は私たちネコ科獣人族にとって必要不可欠なのだ。
「それ何回も聞いたよ。いただきまーす」
「はい、いただきます。お母さん今日はうまく焼けたと思うんだけどどうかしら?」
「え、凄い美味しいよどうしたのこれ!?」
「ふふ。実はね、いつも行ってるお店あるでしょ?そこの店主さんに半額にしてもらえたのよ〜」
「お母さんは美人だからねぇ〜」
私のお母さんはこの村1番の美人とよく言われているのだ。
30分後
「そういえば晴れたわね。良かったわ〜今日洗濯溜まってたから〜」
「ほんとだ晴れてるねー。あ、その皿洗うよ」
「あら、ありがとうね。ララも自分から手伝える年になったのね〜お母さん嬉しいわ♪」
「何言ってんの私もう15だよ?…ん?急に日当たりが強k」
カタッカタカタカタカタッ!!!
「じ、地震?」
「地震かしら?」
ドォオオオオオオオオンッ!!ゴォオオオオオオオオン….
「えっなに!?」
ガタガタガタガタガタガタガタガタッ
怖い。気がつけば私はお母さんに抱きついていた。
腹に響くようなけたたましい音と同時に家が10秒ぐらい揺れた。
揺れが収まると私とお母さんは外に出て周りを見た。
窓が割れた家、半壊した家など被害を受けた家は少なくなかったが全壊した家は無かった。
近所の人達は皆、何が起きたか分かってない様子だった。
最初に説明したようにクラ村は湖の前に山がある為大半の衝撃波と熱波は山に防がれたのだ。
「ララっ!大丈夫だった!?」
そう話しかけてきたのは親友のクレアだった。
「クレア!?うん大丈夫だよ!クレアも大丈夫そうで良かったぁ!」
私とクレアは抱き合った。
「ララのお母さんも無事で良かったです!」
「私は大丈夫よー。ニアは大丈夫だった?」
「私の母でしたら大丈夫ですよ!」
「それよりさっきのは何だったの?急に地面が揺れて凄い音したと思ったら家が揺れたり…」
「ねぇ!ララあれ見て!!」
「え?あれって?」
クレアが指差す方向には山の奥からキノコの形をした雲がどんどん大きくなっていた。
「なに…あれ…..」
「なにかしらねぇ。けどあの雲が元凶に間違いなさそうねぇ」
「お父さん大丈夫かな…」
「そうねぇ…」
「おいっ!!あっちって魔王様のお城がある方向じゃねーか!?」
ある村人がそう言った。
クラ村から北東35km先には魔王城と特別区がある。
↑ララ達がキノコ雲を見た地点
「そうだ、確かあっちは…」
「そんな…」
「魔王様大丈夫かしらねぇ」
「とにかく避難しましょう。何か嫌な予感がするわ」
「クレアちゃんもニアと避難した方が良いわよ」
「は、はい!」
「避難っってどこに避難するの?」
「お爺ちゃん家よ」
攻撃時刻 午前8時
サモン地区 魔王軍 サモン駐屯地
「おーグーレ、お前も剣の手入れか?」
「あぁ、そういうボンもか?」
ララの父グーレは同僚のボンと一緒に剣の手入れをしていた。
「さっきは曇ってたがなんとか晴れたな」
「だな、今日は駐屯所同士の合同演習があるから良かったぜ。それよりグーレ、お前の娘さん元気にしてるか?」
「相変わらず反抗期だよ」
その時、突如空に眩い閃光が走った。
「ぐっ…なんだ!?」
「な、何が起きやがった!!」
目を細くしながら閃光の方を見ると、そこには特別区上空に巨大な火の玉が二つ落ちていた。
「な、なんなんだありゃあ…」
「爆発…なのか…?」
「か、隠れた方が良いんじゃねぇか…?」
「そ、そうだな…あんな爆発…こっちにまで衝撃が来るかもしれん」
「おーい皆んなーっ!!急いで地下に隠れろぉおおおおおお!!!」
周りの兵達も何が起きてるか分かっていなかったがとにかく隠れた方が良いことはすぐに理解した。しかし今まで見たことがない規模の爆発故に、あまりの衝撃に動けず逃げ遅れた者、町に避難を促しに行こうとする者、司令所に命令を受けに行く者、駐屯所の指揮能力は既に麻痺していた。
グーレ達は急いで駐屯所の地下に避難した。
「おい人少なくねぇか?」
「皆んなパニックになってたからな…」
カタカタカタカタッ
「な、なんだ?」
ドォオオオオオオオオンッ!!ゴォオオオオオオオオン!!!!!
ガタガタガタガタガタッ!!!!!!
「ど、どうなってんだ!?」
「嫌だ嫌だ嫌だ死にたくない死にたくない…!」
「おいおい嘘だろ…ここまで揺れるか?」
「なんて威力だ…」
鼓膜を破るような勢いの爆音と激しい揺れに地下は完全にパニックに陥っていた。
外からは一瞬悲鳴が聞こえた気がする。
ガタガタガタ…ガタ…….ガタ….
「お、収まった…のか?」
「そうらしいな….外に出てみよう」
「だ、大丈夫なのか?」
「行くしかないだろ。てあれ、扉が開かない…」
「よし、手伝うぞグーレ」
「お、俺も手伝います」
「俺も…」
「俺も手伝います!」
「おう、皆んな頼む」
瓦礫で埋もれた扉を何とか開けたグーレ達には地獄の光景が待っていた。
外はやけに暑く、火事や半壊、全壊した建物、ガラス片が突き刺さったり黒く焦げた遺体。それらの殆どは爆発とは反対の方向へと吹き飛ばされていて辺りには異臭が漂っていた。
そして爆発した方には巨大なキノコ雲が空を覆っていた。
その光景に思わず吐く者やただ呆然としてる者も少なくなかった。
「…」
「そ、そんな….」
「駐屯地が….」
「お、おい….それより特別区…魔王様は大丈夫なのか!?」
「うっ…ゴボッオエッカハッ」
「あの爆発じゃ流石に魔王様も….」
「ぐ、グーレ…これ…どうすれば良いんだ….?」
「とりあえず生きてる者がいないか探すぞ。いなければ…遺体を運ぼう」
「あ、あぁそうだな。よしお前らぁあ!!負傷者を探すぞぉお!!」
「(一体何が起きたんだ…)」
グーレは瓦礫をどかしながらあの爆発のことを考えていた。
「おいっ!!生存者がいたぞ!!!」
「大丈夫か!!」
「う…うぅっ…あ…肋…多分、逝きました…あぁっ…」
「頑張れ!!もう少しだからな!!おいっ!!担架持ってこいっ!!」
「た、担架なんてありませんっ!!」
「馬鹿野郎っ!!無けりゃ作れっ!!」
「は、はいっ!!」
この攻撃でサモン駐屯地は完全に壊滅した。
死傷者は合計1672名。負傷者はたったの3名でいずれも重症だった。
そしてそんな彼らを嘲笑うが如く核の灰は徐々に魔大陸北沿岸部に近づいていた。
時は遡りSLBM発射時の作戦室
『SLBM発射。目標まで残り60秒。本艦は現海域から離脱します』
「やっぱり135kmだとすぐだな」
「もう少し遠くから撃てば大気圏外を通るのでもっと速くできますよ」
「じゃあ次からそうしようか」
「あら司令、次があるんですか?」
「もしもの話だよ。そんなばんばん撃たないさ」
『目標まで残り30秒』
「これで魔王討伐できれば良いが」
「やはりもう少し情報収集しとくべきでしたね」
「確かになぁ」
『残り20秒』
「…」
『10秒』
「…」
『5』
『4』
『3』
『2』
『1』
核弾頭が高度3.5kmで起爆した時、眩い光と共に島の上に2つの火球ができた。
それはまるで本当に太陽が2つ落ちたように見えた。
「美しい」
「確かに綺麗ですね」
「何でだろうな。恐ろしいはずなのに、自分があそこにいたらそんなこと言ってられないのに、美しく見えてしまうのは。」
「司令、美しいと思うならそれで良いのではないですか?人間は矛盾するものです。たとえそれがどんな時でも」
「確かに、そうなのかもな」
ピロンッ
【多数の魔族と魔王を討伐しました】
「お、魔王倒せてるじゃんやったぜ」
「おめでとうございます♪司令♪」
【Lvが256に上昇しました】
「Lv256!?めっちゃ上がってる!?」
「司令、今夜は宴会にしましょう♪」
「それはオハイオが帰ってきたらな」
2発の核の雲は互いに混ざり合いながら、そして黒色の何かを周りに撒き散らしながら大きくなっていった。
爆心地は真っ黒になり瓦礫さえ残っていなかった。
この日、魔王城と城下町、魔大陸北沿岸部合わせて40000人以上が爆発、衝撃波、熱波による火災、放射性降下物(核の灰)による急性放射性症によって犠牲になった。そして後に60万の魔族が核の灰により犠牲になった。
今回は少し長くしました。
只今、次話制作中です。