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こどおじ転生!  作者: とるね北村
1/1

30歳職歴なしのまま転生させられた

ーーーーー始まりーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「いらっしゃいませー!!」


ざっと1時間振りのお客様を僕は大きな声でお迎えした。

見てみると、深夜のコンビニでは珍しい若くて綺麗な女性だ。

女性は僕を一目見ると、少し驚いた顔を浮かべ、

足早に商品をカゴに入れ、僕のレジの前に立った。


「久しぶりね、ゆうき」


女性が僕に話しかけてきた。

心当たりは全くないが、地元で10年以上バイトしているこちらとしては、知らない知り合いの対処には慣れている。僕は自身を持って答えた。


「袋いりますか?」


女性は少し寂しそうな顔を浮かべた後、会計を終えコンビニを後にした。女性の背中は少し疲れているように見えた。

仕方がない。話を聞いた所でもっと自分を嫌いになるのは目に見えて分かる。僕だって、好き好んで見下されるルートには行かない。


30歳、高卒、職歴なし、自称作家


この経歴を見て、可哀想だと思うな!と言う方がおこがましい。

女性経験だって、小学生の頃告白されて一週間付き合った、たったの一回だけ、、、ってああーーーーー!!!

思い出した、あの綺麗な女性だ。確か結衣って名前だった。僕の優しい所が好きって言ってくれたっけ。


「あの頃は何にでもなれた気がしたな」


そう呟いた後、レジに目をやると、鍵が落ちていた。

きっと結衣の忘れ物だ。少し悩んだ。色々な気持ちが錯綜したが、仕事という大義名分を掲げて僕は結衣を追いかけた。

コンビニは直線の道路に面してたお陰で、

出てすぐに結衣らしき人物が奥の方に見えた。


「すいませぇぇーーーーん!!お客さん!忘れ物です!!!」

僕は叫びながら鍵を振った。

結衣は気づき、小走りで戻ってきた。


「優しいのは変わってないね」

結衣は気まづそうな顔をしている僕に気を遣ってくれている。

話す事は特に無い、けど僕はこの出会いが、売れない小説を書き続け、深夜にバイトをするだけの無気力な僕の日々に刺激をくれると思った。このフリーター特有の突発的な謎の行動力を信じ、勇気を出して話しを繋いだ。


大体時間にして15分くらいだろうか、誰も来ない店の前で思い出話にふけた。運動会の時の話やうざかった先生の話をした。

一通り思い出話をした後、なんとなく結衣の近況について聞いてみた。


「結衣は、最近は何してるの?」

少し結衣は苦い顔をした。


「私は、、そうね、、ちょっと人に付き纏われてて、、」


なるほど、結衣はかなり美人だもんな、ストーカーみたいな奴がいても、おかしくない。ここは自慢の自虐ネタで、少しでも結衣の気持ちを楽に出来ないだろうか。僕に出来る事はそのくらいだ。

そんな心を奮い立たせた僕から出てきた言葉は、

自分では想像も出来ないなものだった。


「熱っ、、、」

左下腹部が焼けるように熱い。


??「俺の結衣ちゃんに近づくなーー!!」

背後から男の叫び声が響く、


僕は熱くなった下腹部を触ると刃物の冷たい触感がする。

ああ、、そうゆうことか。


走馬灯が流れる。自分の30年を止まった時間の中で眺める。

そこには色々な角度から移された子供部屋でスマホを眺める僕が写っていた。


「薄っ、、」

驚きの余り声がでた。せめて小説かけよ。


責めて安らかに死のうと受け入れた直後、走馬灯の最後のページが目に入る。結衣と付き合えた天国のような一週間だ。

僕はこどおじながら思った。

このまま死ねるか。何も成せない人生だったが、

せめて、、僕の人生に色をくれた結衣の為に死んでやる。

決意を胸に、止まった時間が動きだした。


「うおりゃーー!!!」

僕は叫びながら、刃物が刺さったまま振り向き、後ろの男の喉元に噛みついた。


男は血飛沫をあげ、倒れる。

僕も男に覆い被さる形で倒れた。

致命傷を与えた。僕は薄れゆく意識の中で、最後の言葉を探した。


特に思いつかない。。薄い人生だったもんな。来世があるなら、

普通に大学卒業して、普通に社会人になって、普通の家庭を持ちたいもんだ。小説家に成ったのだって、漫画なんか書けないし、手軽に挑戦出来たからだしな。

ああ、、そんな薄い人生の僕にぴったりの言葉を見つけた、

この言葉を結衣に残そう。



「、、きんたい、、切っ、、とい、、て」


僕は死んだ。


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