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はじまりの物語  作者: はあや
本編
294/431

馬車のなかで ②

「レオン!」

「レオリード殿下!」


レオリードたちが地下牢からエリックの執務室へと戻ると、キアルとオルレンが待ち構えていた。


「キアル?オルレン?なぜ?」

「陛下から「至急城に戻れ」って伝言。マーシャル公、あなたも一緒にとの仰せだ」



「私もですか?」


キアルから告げられ、エリックは軽く眉を顰める。


「陛下からのお呼び出し。断るわけには参りませんが、一応理由をお伺いしても?」

「アランのこと。なぁ、公爵はなんでこんな時期にまだ王都にいたんだ?」


キアルは王族としての役割があるから『建国記念の日』は城で過ごす。けれど、王弟であってもカーマイト公爵でもあるカイルドと嫡男(跡継ぎ)であるキアルの兄は、母と共にカーマイト領にて『建国記念の日』を過ごすため、数日前に王都を出発している。カーマイト領よりマーシャル領の方が王都に近いとはいえ、もう領地へ向かっていて当然の時期だ。


「アランディール殿下にご招待を受けましたので」


「やはり」と呟き、どこか面倒そうにしながらエリックが素っ気なく答えると、そんなエリックの態度を初めて見るキアルは目を見張って


「なぁ、なんかあったのか?」


すすーっとレオリードのそばへ寄って、ひそひそと声を潜めて尋ねる。


「この部屋もずいぶん散らかってるし、マリナ嬢は?」


執事がある程度片付けたあとにこの部屋に案内されたキアルとオルレンは、シスツィーアの髪が散らばっていた惨状を見ていない。物々しい雰囲気から何かあったと察せられても、実際に何があったかは分からず、不思議そうなキアルたちにレオリードとリオリースは顔を見合わせる。


「・・・・・・あとで話す。それより、どうしてキアルたちが?」

「そうだよ。父上に頼まれたの?」


シグルドの命を受けた使者が来ればいいはずなのに、いくらレオリードたちがここにいるとは言えキアルたちが来る必要はない。


キアルたちも、レオリードたちに急いで会う必要があったのだろうか?


「あー。アランの様子見てたら、居ても立っても居られなかったってのもあるけど、オレたちも急いで知らせたいことがあったんだよ」


ちらっとエリックへ視線を向けながら、歯切れの悪そうなキアル。


エリックに用があると言うよりか、エリックに知られたくない内容のようで


「マリナ・・・・・のこと、か?」

「違う」


念の為にレオリードが尋ねると、あっさりとキアルは首を振る。


「分かった。馬車で話そう。マーシャル公!すまないが」

「ええ。先に向かってください。私は執事に指示を与えてから向かいます」


エリックは自分に知られたくない話があるのだと察せられたのか、単純に味がないのか、気にする素振りすらなく頷くと執事を連れて執務室を出て行く。


残されたレオリードたちも、護衛の騎士たちと共に執務室を後にして


玄関前に停められたままの、キアルとオルレンの乗ってきた馬車にレオリードとリオリースも乗り込むと、すぐに馬車は出発する。


予め指示されていたのか馬車の速度はいつもより早く、リオリースは揺れて座席から落ちないようにとレオリードの服を掴むと


「ねぇ、アラン兄上に何かあったの?」

「アランに何かあったんだな?」


馬車がマーシャル家の門をくぐると、レオリードとリオリースは同時に口を開く。


「容体が急変したのか?」


キアルたちが使者としてマーシャル家に来たのも、シグルドが城に戻るよう命令したのもアランの容態が悪化したからに違いない。


そうとしか考えることができずに、じっとキアルを見つめるレオリードたち。


キアルは少しだけ視線を彷徨わせて、


「医師と総長が言うには、魔力が飽和状態らしい」

「飽和状態?」

「アランディール殿下の身体に、魔力がおさまりきれずにいる状態と言うことです」


リオリースが首を傾げると、オルレンが分かりやすいようにかみ砕いて説明する。


「魔力が?では」

「このままだと、危ないらしい」

「え!?」


キアルの言葉はリオリースにとって予想外で


「それって、命が危ないってこと!?」


リオリースの、レオリードの服を掴んでいた手にぎゅっと力が籠る。


レオリードも先ほどのアランの様子から最悪の事態を考えてはいたものの、はっきり口に出されると身体中が強張って


「幼いころと・・・・・同じだな」

「ああ」


レオリードとキアルの脳裏には、まだ幼いころの、魔力が多くて苦しんでいたアランの姿が浮かんで


(なぜ・・・・今ごろになって)


なぜそんなことになっているのか、レオリードは理解したくてもできなくて


「それで、アランの様子もだけど」


キアルの顔つきがいつもより真剣で、ここからが本題なのだとレオリードもキアルを見つめ返す。


「何があった?」


こくっとレオリードの喉がなる。


キアルとオルレンは一度顔を見合わせると


「さっき、オルレンと一緒にレザ司祭たちに会ってきたんだ」


神殿でのことを話し始めた。









最後までお読み下さり、ありがとうございます。

次話は明日9月26日投稿予定です。

お楽しみいただければ幸いです。

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