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はじまりの物語  作者: はあや
本編
277/431

地下牢へ

「なんで・・・・・?いやだよ・・・・・・」


リオリースが瞳を薄っすらと潤ませて、掠れた声で呟く。


シスツィーアが会いたくないと言った。


それは・・・・・・・


「それは、本当に・・・・・・ツィーアが言ったこと?」


アランが青ざめたまま、ソファーのひじ掛けに身体を預けるようにしてエリックをじっと見つめ


「・・・・・・・・正確には「王都にいたくない」ですが」

「随分・・・・・違うね・・・・・・けど、ツィーアが・・・・どう言おうと」

「アラン?」

「アラン兄上?」


アランの額には汗がにじんで、話すのもつらそうで息も絶え絶えで


慌ててレオリードがアランの側にいき、その身体を支えて


「っ!」


一瞬だけレオリードが顔を顰めるけれど、すぐにアランのはおかしいと判断して


「すぐに医師に診察を」

「だいじょ・・・ぶ。僕は、ツィーアに・・・・・案内、して」

「リオン!医師を」

「うん!」


すぐにリオリースが部屋を出て行き、レオリードはアランが少しでも楽な姿勢でいられるように、身体をソファーに寝かせようとするけれど、アランはそれを「いい」と押しのけようとして


けれど、身体全体に圧がかかったようで思うように動けずに、レオリードに身体を支えられたままの状態でなんとか椅子に座って、アランは倒れないように必死でひじ掛けを掴む。


「い・・・いから・・・・・それ・・・・」

「随分とお身体がきつそうだ。すぐにお休みになられた方が」

「いいから!あんな・・・・・い」

「アラン!」


話している間にも顔色はどんどんと青ざめ、次第にはぁはぁと肩で息をし始め、苦痛に顔を歪めて


「アラン!すぐにベッドへ!」

「い・・・・いから!」


レオリードを乱暴に跳ね除けてアランはソファーを支えに立ち上がり、エリックの胸ぐらにむかって手を伸ばすけれど、エリックは微動だにせず、アランを見上げ


「ご無理はなさらない方がいい。シスツィーア嬢とて」

「このっ!」


まるでアランのこの状態は想定の範囲内だとでも言うように、エリックは動じる様子すら見せず


それが挑発されているように思えて、アランはカッとなるけれど


ズルっ


一歩踏み出そうとして身体が足元から崩れ、レオリードが慌てて手を伸ばしてなんとか踏みとどまる。


「これが・・・あんたの・・・・・望み・・・・?」

「はて?何のことでしょう?」

「僕を・・・・・・」

「殿下を?」


ぐっとアランは唇を結んで


レオリードにしがみ付きながら、アランはエリックを睨みつける。


「・・・・・・誰に、命じられた?」

「何を、でしょう?」


困ったようすを見せながらも、エリックの目はどこか冷めていて


(茶番だ・・・・・・・)


元凶はエリックであると分かっているのに、アランには証拠がなくて、はっきりと言葉にはできない。


そして、エリックは尻尾を掴ませない。


(どうしたら・・・・・・)


さっきのエリックとの会話の途中で「ズンッ」と身体が重くなった時から、アランの身体には外からの圧が一気に増えて、レオリードにしがみつく手に力が入って


「・・・・・・・・ラン!アラン!」


だんだんとアランを呼ぶ声が遠くなって












「アラン!・・・・・・アラン!・・・アラン!」


レオリードの腕はアランに握りしめられて痛いほどなのに


アランは苦痛に顔を歪めて、半ば気を失いかけていた。


(いつだ!?いつからこんな!)


アランの様子がおかしかったことに気が付かなかった。


レオリードは悔やみながら必死で呼びかけるけれど、アランの返事はなくて





さっき、アランが倒れそうになりレオリードが支えたとき、アランのシャツは汗でぐっしょりと濡れていて


「っ!」


すぐ近くにあるアランの額や首筋には汗が噴き出ていて、レオリードは手の傷に滲みて思わず声をあげた。


(いつからだ?こんな・・・・・・・)


部屋に入ったとき、レオリードの前に出てきたアランを押しのけたときには気が付かなかった。けれど、シャツが汗で濡れていることから随分と我慢していたのだと察せられて、そのこともレオリードの罪悪感を募らせる。


それにアランとエリックの会話も、レオリードには分からないことだらけで・・・・・・・


「失礼致します!」


リオリースが呼んできた医師が慌ただしく部屋に入ってきて、レオリードはアランをベッドに寝かせ、邪魔にならないようにと、リオリースとともにエリックのところで待つけれど


「申し訳ありません。そろそろ領地へと行かねばならない時刻。このようなときですが、お暇を」


エリックが立ち上がり、暇乞いを告げるのをリオリースもレオリードも睨みつけるけれど、エリックは気にすることもなく


「シスツィーア嬢のことでしたら、確認したのちに使いをやりましょう。アランディール殿下の回復をお祈りしております」


にこりと微笑み、エリックは立ち去ろうとする。


けれど


「待て」

「如何なさいましたか?」


まるでレオリードに呼び止められるのを予想していたように、エリックはすぐに振り返って


「俺も行く」

「レオン兄上?」


レオリードも立ち上がり、エリックの隣へと並ぶ。


(あんな状態でも、シスツィーア嬢に会おうとしていた。彼女を連れて来る)


いまのアランを城から出すことはできない。それなら、レオリードに出来ることはシスツィーアを無事に保護し、アランの元へ連れてくること


「良いな?」

「では、シスツィーア嬢を」

「昨日言ったはずだ。シスツィーア嬢とアランは恋仲だと」

「ええ。ですが」

「シスツィーア嬢を保護しアランと会わせる。案内してもらおう」


レオリードたちが必死に探していることを知りながら、黙っていたエリックへの怒りが収まらないけれど


(彼女が、俺たちに会いたくないとしても)


シスツィーアがレオリードたちに会いたくないと、言っていたとしても


(彼女に、会う)


レオリードはエリックより背が高い。だから、エリックを怒りを含んだ瞳で見下ろす。


「レオリード殿下、シスツィーア嬢は」

「関係ない。シスツィーア嬢を保護するだけの理由はある」

「どのような?」

「・・・・・・・・貴公には関係ない。だが、理由は陛下もご存じだ」


レオリードが淡々と告げると、エリックは諦めたのかため息を一つ吐いて


「では、ご案内しましょう。ですがその前に」


レオリードの手へと視線をやって


「その手を治癒なさったあとに」


やれやれと言わんばかりに、呆れたように肩を竦めた。


最後までお読み下さり、ありがとうございます。

次話は8月22日投稿予定です。

お楽しみいただければ幸いです。

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