兄と妹 ①
訓練日にキアルから話を聞いたアルツィード。
妹からも詳しい話を聞きたくて、どうにかシスツィーアに会えないかと考えていた。
アルデス家へはあまり行きたくない。
だが、夏季休暇中にシスツィーアに会うには、妹がここに来るかアルデス家へ向かうしかない。
(側近の話が本当なら、アルデス子爵は面白くないだろうな)
子爵は契約通り、学園を卒業するまでシスツィーアが大人しくしていれば良いと、そう思っているのはアルツィードにも分かっていた。
だから、厄介なことになって子爵夫妻が怒っているのではないかと、シスツィーアが怒られているのではないかと危惧していたのだが、もやもやと考えているうちに当の本人がやって来た。
「こんにちは、お兄さま。なにしかめっ面してるの?」
「ん?ああ、来たのか」
「ええ。部屋に用があってね」
中等科からアルデス家へ移ったが、ここにはまだシスツィーアの部屋が残っている。
「あまり荷物は持って行けそうにないから、置かせて欲しいな」
そう祖父へ頼んで、シスツィーアの私物はここに置いてあるのだ。と言っても、魔道具作りの道具とこつこつと溜めていたおこずかいだけだが、シスツィーアはルグラン商店からの帰り道、そのおこずかいを支払いの足しにしようと工房へ寄ったのだ。
「ちょうど良かった。ちょっと来い!」
妹の手を掴み、そのままシスツィーアの使っていた部屋へ入る。
ベッドと机と椅子しかない殺風景な部屋。
ベッドへシスツィーアを座らせ、自分のために椅子を引いてくると
「第二王子殿下の側近って、どういうことだ!?」
アルツィードは少し怒った顔で、妹を見つめた。
「・・・・なんで知ってるの?お兄さま」
「キアルさまが教えてくれた」
「ああ。そっか、騎士科・・・・同じクラスなの?」
「そりゃ、貴族の騎士科は1クラスだからな」
比較的平民も多い騎士科だが、貴族はアルツィードのように将来領主となる者もいるから、平民とカリキュラムが違うのだ。
その為、成績ではなく貴族と平民とでクラスが分かれている。
(・・・・また、怒られるかしら?)
任命書が届いて以来、何かにつけて子爵からお小言ばかり言われ、シスツィーアは正直うんざりしていた。
これ以上は怒られたくないなとため息をつきながら、側近になった経緯を簡単に話す。
もちろん『魔力性質』や『優愛』のことは話せないからそのあたりは隠して、シールスに話した内容よりもう少しだけ詳しく話す。
どうせ隠したところで、キアルから聞いたら元も子もないからだ。
「文官の見学会のあとに、ちょうどお散歩中の第二王子殿下と会って、びっくりして倒れてしまったのよ。そうしたら殿下が心配してくださって、後日お茶会に誘ってくれて。その時に側近になって欲しいと言われて、学生の間だけならとお受けしたの」
「王族見て倒れるとか・・・・・はぁ、まあいい。経緯は分かった。で、なんで断らなかった?」
「・・・・ここまで大ごとだとは思わなかったのよ」
「おまえなぁ・・・・」
ため息をつきながら話す妹に、呆れて物が言えないアルツィード。
いったん持ち帰って子爵に相談して決めたのならまだしも、その場で承諾したことにも頭を抱える。
(子爵に相談せずに承諾したなら、子爵が怒るのも無理ないな)
今回ばかりは子爵に同情するアルツィード。
いきなり王家から任命書が届いたのなら、驚きのあまり取り乱しただろう。
そもそも妹は王族の側近が、高位貴族しかいない事を知らなかったのだろうか。
下位貴族で側近になる者がいても、高位貴族と縁続きの者ばかり
例外的にいたとしても、実力重視の騎士くらいだろう。
「任命書と一緒に届いた書類を見て分かったわ。側近って、お金かかるのね」
「それたけが理由じゃないだろうが。それもあるだろうな。で、辞退はしないのか?」
「うーん。ちょっとそれは無理そう。できるだけやってみて考えるわ。」
困ったように笑うシスツィーア。
(何か隠してるか?)
そもそも王族の側近なんて、気軽に勧誘するものではないし、それは第二王子も分かっているはずだ。
誰かの何らかの思惑が働いていると感じるのは、アルツィードの考えすぎだろうか?
妹だって、いくらどこかずれているとは言え、ほいほい受けるとは思えないが・・・・
(いや・・・断れないな)
上位の者には逆らわない。それがあるから、断れなかった可能性は高い。
まあ、考えたところで本人が受けてしまった以上、どうしようもない。
本人がやる気ならできるだけ助けるか、とアルツィードも腹をくくる。
「困ったことがあったら、相談しろ」
「ええ。ありがとうお兄さま」
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