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はじまりの物語  作者: はあや
本編
26/431

兄と妹 ①

訓練日にキアルから話を聞いたアルツィード。


妹からも詳しい話を聞きたくて、どうにかシスツィーアに会えないかと考えていた。


アルデス家へはあまり行きたくない。


だが、夏季休暇中にシスツィーアに会うには、妹がここに来るかアルデス家へ向かうしかない。


(側近の話が本当なら、アルデス子爵は面白くないだろうな)


子爵は契約通り、学園を卒業するまでシスツィーアが大人しくしていれば良いと、そう思っているのはアルツィードにも分かっていた。


だから、厄介なことになって子爵夫妻が怒っているのではないかと、シスツィーアが怒られているのではないかと危惧していたのだが、もやもやと考えているうちに当の本人がやって来た。


「こんにちは、お兄さま。なにしかめっ面してるの?」

「ん?ああ、来たのか」

「ええ。部屋に用があってね」


中等科からアルデス家へ移ったが、ここにはまだシスツィーアの部屋が残っている。


「あまり荷物は持って行けそうにないから、置かせて欲しいな」


そう祖父へ頼んで、シスツィーアの私物はここに置いてあるのだ。と言っても、魔道具作りの道具とこつこつと溜めていたおこずかいだけだが、シスツィーアはルグラン商店からの帰り道、そのおこずかいを支払いの足しにしようと工房へ寄ったのだ。


「ちょうど良かった。ちょっと来い!」


妹の手を掴み、そのままシスツィーアの使っていた部屋へ入る。


ベッドと机と椅子しかない殺風景な部屋。


ベッドへシスツィーアを座らせ、自分のために椅子を引いてくると


「第二王子殿下の側近って、どういうことだ!?」


アルツィードは少し怒った顔で、妹を見つめた。


「・・・・なんで知ってるの?お兄さま」

「キアルさまが教えてくれた」

「ああ。そっか、騎士科・・・・同じクラスなの?」

「そりゃ、貴族の騎士科は1クラスだからな」


比較的平民も多い騎士科だが、貴族はアルツィードのように将来領主となる者もいるから、平民とカリキュラムが違うのだ。


その為、成績ではなく貴族と平民とでクラスが分かれている。


(・・・・また、怒られるかしら?)


任命書が届いて以来、何かにつけて子爵からお小言ばかり言われ、シスツィーアは正直うんざりしていた。


これ以上は怒られたくないなとため息をつきながら、側近になった経緯を簡単に話す。


もちろん『魔力性質』や『優愛』のことは話せないからそのあたりは隠して、シールスに話した内容よりもう少しだけ詳しく話す。


どうせ隠したところで、キアルから聞いたら元も子もないからだ。


「文官の見学会のあとに、ちょうどお散歩中の第二王子殿下と会って、びっくりして倒れてしまったのよ。そうしたら殿下が心配してくださって、後日お茶会に誘ってくれて。その時に側近になって欲しいと言われて、学生の間だけならとお受けしたの」

「王族見て倒れるとか・・・・・はぁ、まあいい。経緯は分かった。で、なんで断らなかった?」

「・・・・ここまで大ごとだとは思わなかったのよ」

「おまえなぁ・・・・」


ため息をつきながら話す妹に、呆れて物が言えないアルツィード。


いったん持ち帰って子爵に相談して決めたのならまだしも、その場で承諾したことにも頭を抱える。


(子爵に相談せずに承諾したなら、子爵が怒るのも無理ないな)


今回ばかりは子爵に同情するアルツィード。


いきなり王家から任命書が届いたのなら、驚きのあまり取り乱しただろう。


そもそも妹は王族の側近が、高位貴族しかいない事を知らなかったのだろうか。


下位貴族で側近になる者がいても、高位貴族と縁続きの者ばかり


例外的にいたとしても、実力重視の騎士くらいだろう。


「任命書と一緒に届いた書類を見て分かったわ。側近って、お金かかるのね」

「それたけが理由じゃないだろうが。それもあるだろうな。で、辞退はしないのか?」

「うーん。ちょっとそれは無理そう。できるだけやってみて考えるわ。」


困ったように笑うシスツィーア。


(何か隠してるか?)


そもそも王族の側近なんて、気軽に勧誘するものではないし、それは第二王子も分かっているはずだ。


誰かの何らかの思惑が働いていると感じるのは、アルツィードの考えすぎだろうか?


妹だって、いくらどこかずれているとは言え、ほいほい受けるとは思えないが・・・・


(いや・・・断れないな)


上位の者には逆らわない。それがあるから、断れなかった可能性は高い。


まあ、考えたところで本人が受けてしまった以上、どうしようもない。


本人がやる気ならできるだけ助けるか、とアルツィードも腹をくくる。


「困ったことがあったら、相談しろ」

「ええ。ありがとうお兄さま」



最後までお読みいただき、ありがとうございます

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