側近のお仕事
部屋の外にいたメイドに案内してもらい、アランとシスツィーアはレオリードの執務室へ向かう。
「兄上、ちょっといい?」
「珍しいな。どうしたんだ?ああ、シスツィーア嬢も一緒か」
「うん、ちょっと相談なんだけど」
「とりあえず入れ。オルレン、お茶を入れてくれるか?」
急に訪れたにも拘わらずレオリードはすぐにふたりを部屋へ招き入れ、アランとシスツィーアは並んでソファーに座る。
向かい側にレオリードが座り、三人の前にお茶を置いたオルレンは自分とキアルの分を持って、自分の机に行こうとしたが
「せっかくなら、一緒に聞いてくれる?」
「分かった。キアル、オルレンもこっちに座れ」
アランの希望に全員でテーブルを囲むことになった。
さすがに男三人が座るにはソファーが狭いから、オルレンはデスクから椅子だけ持ってきてそこに座る。
「あのね、ツィーアが正式に側近になったし、僕も公務を覚えたいんだ。兄上、教えてくれる?」
「それは構わないが・・・・」
「もちろん父上に許可は取ったよ。体調が分からないから、ひとまず兄上について教えて貰えって。もちろん、兄上が良いならだけどね」
「そうだな・・・・・」
体調がよくなってきたなら、公務をするのは王族の義務だ。今まで寝たきりだったから無理は禁物だが、少しでも覚えたいアランの気持ちは理解できる。
幸い今は夏季休暇中で、レオリードも学園がある時よりも教える時間がとれる。
「良いだろう。ひとまずは俺の夏季休暇中に、どんな公務があるか覚えてもらう。外に出て行う分は、しばらく様子を見て・・・・・そうだな、体調に変化がなければ、秋に予定している市街地の視察に同行させよう。それでどうだ?」
「分かった。ありがとう、兄上。それで、ツィーアにも教えてもらいたいんだけど・・・・」
「ああ。アランと一緒に教える。シスツィーア嬢もそれでいいだろうか?」
「はい。ご面倒をおかけしますが、よろしくお願い致します」
レオリードの言葉に、立ち上がり頭を下げるシスツィーア。
「君の指導係は、オルレン頼めるか?」
「ええ。構いません。よろしくお願い致します」
「お世話になります。オルレンさま。どうぞよろしくお願いいたします」
にこりと笑って快諾するオルレン。シスツィーアも見知った人が指導係になってくれて、ほっとして表情がほぐれる。
「さっそくだが、いつから始める?」
「えっと、僕はいつでも良いけど・・・」
レオリードとアラン、シスツィーアとオルレンに分かれて、それぞれ予定を合わせ始める。
レオリードに当分外出の予定はなく、学園へ行く日以外は時間の余裕がありそうだった。
アランも同じ王宮にいるから、明日から午前中だけレオリードに付いて公務を覚えることにする。
お昼からは、家庭教師とのお勉強時間だ。
「学園に通ってなくても、ちゃんと勉強しておかないとな。いざという時に判断できなくなる」
「分かった」
剣術や護身術など身体を動かす授業は無理でも、政治や経済、国内の貴族勢力や国際情勢など、より詳しく学ぶこととレオリードがアドバイスする。
アランも今まで免除されてきた部分を学び、これからは兄と同じように王族の義務を果たしたいと思っていたから、素直に頷く。
一方のシスツィーアとオルレンは
「すみません、オルレンさま。側近としての相応しい装いとは、どんなものでしょう?」
「そうですね。王宮にいる文官たちと似た装いなら大丈夫でしょう」
「制服とかは、ないんですね」
「ええ。王城の文官には制服がありますが、私たち側近で制服があるのは、騎士であるキアルだけですね」
王族と関わることなんて今までなかったから、初歩から教えてもらうことになった。
「シスツィーア嬢は、いつから始めましょうか?ご予定は?」
「えっと、服の準備ができるまで制服でも大丈夫でしょうか?」
「構いませんよ」
「でしたら、明日からでも」
「それだと、準備する時間がとれないでしょう。来週からではどうでしょうか?」
「ご配慮ありがとうございます。助かります」
シスツィーアは来週から教えてもらうことにする。
夏季休暇中は学園への登校日があるキアルに合わせて、週に一度は学園で学生会の仕事を行うが、ひとますそれは置いておき王宮での公務を優先することになった。
「学園の課題もある。そうだな、アランが家庭教師の授業がある午後からは、シスツィーア嬢も課題をすると良い」
「えっと、良いのでしょうか?」
「Aクラスは課題も多いですからね。公務も一度に覚えきれるものではありませんし、夏季休暇中にペースを掴みましょう」
レオリードとオルレンに言われ、無理のないペースで仕事を始められそうだった。
(良かった。これで成績も落とさずにすみそう)
側近になったから成績が落ちましたでは、目も当てられない。
ちゃんと学習時間も確保できそうで、ほっとする。
「じゃ、ツィーアは来週からね。まずは、出仕したら僕のとこに来て。それから兄上の執務室に来て教えてもらおう」
「分かったわ。じゃあ、また来週ね」
アランも異論はなく、シスツィーアは来週から本格的に仕事を始めることになった。
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